劇場版『鬼滅の刃』無限列車編、ブルーレイやDVDを購入し、本編の音声だけでなく「オーディオコメンタリー」を楽しんでいるファンも多いのではないでしょうか。
ところでこのディスク、再生するとまず「日本語音声ガイド」についての説明が流れますが、そのまま「日本語音声ガイド付き」で本編をご覧になったことはありますか?
実はこの音声ガイド、本編をより楽しめる工夫でいっぱいなのです。
今回は、その劇場版「無限列車編」の日本語音声ガイドについて、ご紹介いたします。
劇場版『鬼滅の刃』無限列車編の「日本語音声ガイド」について
劇場上映で使われていたバリアフリーのガイド
『無限列車編』は、劇場での上映において「視覚障害者用音声ガイド」と「聴覚障害者用日本語字幕」に対応していました。
そしてブルーレイ&DVDに収録されている「日本語音声ガイド」は、このときの「視覚障害者用音声ガイド」になります。
音声ガイドの声は声優・ナレーターの田丸裕臣さん
ディスクを再生すると最初に流れる音声ガイドの声の主は、声優でありナレーターもされている田丸裕臣(たまる・ひろおみ)さんです。
そして本編のガイドも、田丸さんの声で静かに始まります。
キャラクターのセリフだけではわかりづらい背景や動きなどを解説してくれていて、中には「え?その場面はそういうことだったの?」という気付きを与えてくれる場面も。
では、具体的な内容の一部を順番にご紹介します。
冒頭から眠りにつくまで
本編の音声ガイドは、小説のような美しい言葉の描写から始まります。
小説のような背景解説
冒頭のお館様のシーン
高くそびえる木々が風に揺れる 墓地を歩くお館様 (中略) 整然と並ぶ墓石に 木漏れ日が降り注ぐ
実写かと見まごう綺麗な風景が印象的なお館様のシーン、改めて言葉で表現されると、日本語の美しさにハッとします。
無限列車が止まっているホーム
蒸気機関車にライトがともる プラットホーム 和装や洋装の人々が見送る 蒸気を噴き出す汽車 正面に「無限」と書かれたプレート
本編を何度もご覧になっている方であれば、そのシーンがよみがえるのではないでしょうか。
なお、このすぐ後、列車に興奮した伊之助が鼻息を荒くする場面がありますが、蒸気を噴き出す音と混同しないようにという配慮もあるのか、そこでは「伊之助が鼻息」という解説も入れてくれています。
タイトルロゴ
炭治郎が客車の扉を開けて、煉獄さんの最初の「うまい!」に驚いた直後の外のシーンです。
速度を上げる無限列車 8両の客車からもれる窓明かりが高速で流れていく 前方に山並み 欠けた月が浮かんでいる 「劇場版 鬼滅の刃 無限列車編」
いよいよ本格的に本編が始まる、という雰囲気を醸し出しています。
ユーモラスなキャラ説明
主要キャラクターについては、その特徴も初めに解説してくれます。
かまぼこ隊
善逸が手すりに飛びつく 金髪の善逸 引っ張り上げられる
客車に入る炭治郎 黒い詰め襟の隊服 緑と黒の市松模様の羽織
窓から引き離される伊之助 上半身裸に猪のかぶり物
煉獄杏寿郎
ボックス席にオレンジ色の頭が見える 牛鍋弁当の蓋を開ける手元 一歩近づく炭治郎 その頭を見つめる 顔を上げる煉獄
うまい!!
勢いで空き箱がいくつも吹き上がる
驚いて見ている乗客 見ないふりをする人もいる
目がギョロッと大きい煉獄 隊服にマント
炎のようなオレンジ色の髪は肩にかかる長さ
山積みの空き箱 片付けの乗務員があたふた
確かにこの場面は誰のセリフもありませんでしたね、煉獄さんの「うまい!」を除いては。
でも煉獄さんがお弁当をたくさん食べていたことを表わす重要なシーンですので、ここの解説は必要だったのでしょう。
夢の中へ
夢に落ちるまで
「東京夢限」と書かれた切符 「むげん」の「む」が「夢」
伊之助が切符を突き出す 床で泣いている善逸も切符を渡す
車掌に切符を渡すシーンでは、伊之助と善逸のキャラクターの違いもさりげなく解説しています。
列車内での戦い(の夢)
2体の鬼と次々に戦うシーン、煉獄さんの様子を詳しく教えてくれます。
1体目:顔が二つある鬼
刀を隊服のベルトに差す 抜刀する たいまつが次々に灯り 夜の海で一直線になる 勢いで扉に突っ込む煉獄 前の車両に着地
座席に座っているときは日輪刀を傍らに置いていましたので、戦いが始まるときに一度ベルトに刺し、そこから抜刀しているんですね。
また、原作では同じ車両内に着地していますが、アニメーションでは煉獄さんの勢いを表現するためか「扉に突っ込んで前の車両に着地」という演出になっています。
2体目:手足が長い鬼
煉獄が一瞬で伊之助を連れ去り避難
迫り来る鬼 男を抱える煉獄 涼しい顔で跳ぶ
確かに「必死で助けている」という顔ではないですね。
魘夢とキャラクターの夢の中
魘夢登場
目玉がついた手首が落ちてくる 手の甲に口 指に「夢」と書かれている
ここは見えていても「何だあれ?」なシーンで、音声ガイドでも淡々とした解説が入っています。
また、この手首が魘夢の体に戻るときはこんな説明でした。
屋根の上 燕尾服の立ち姿 口のついた手首が戻って来て左手にくっつく
キャラクターの夢の中
竈門炭治郎の夢
降りしきる雪 積もった雪の上
視線を上げると山の中の景色が見える
炭治郎が白い息を吐きながら歩く
耳に花札のような耳飾り
いつもの出で立ちだが木箱を背負っていない
竹籠を背負った炭治郎 額のあざが昔の火傷の跡に変わっている 二人を抱き締める
ここも、炭治郎の姿がいつもと違うことを丁寧に説明してくれています。
我妻善逸の夢
禰豆子を背中に乗せる 稲妻を帯び走り出す
軽快に崖を飛び降りる
善逸の目がハート
桃畑を善逸と禰豆子の二人が走っているところを軽やかに解説。
「善逸の目がハート」のところは、少し明るい感じの嬉しそうなトーンになっています。
嘴平伊之助の夢
探検隊!探検隊!俺たち洞窟探検隊!
洞窟 伊之助についていく禰豆子 竹の口かせ ウサギの耳
ここでは見た目の解説は禰豆子だけで、ポン治郎とチュウ逸は名前だけの紹介でした。
セリフとその名前から「タヌキっぽい」「ネズミっぽい」というのがわかるからでしょうか。
煉獄杏寿郎の夢
緑の葉から木漏れ日が落ちる 縁側から日が差し込む座敷 布団に寝そべって本を読む煉獄の父 正座した煉獄 目を開ける
煉獄が自分によく似た弟を見つめる 幼い煉獄たちに剣の指導をする父 優しく笑う
ここは、煉獄さんが家族と会話をする重要なシーンですので、解説も静かに丁寧に入れられていました。
禰豆子登場
客車 座席に置かれた木箱
扉が開き、背が幼児ほどの禰豆子が転がり出てくる
炭治郎の鍛え抜かれた手を持ち上げ 自分の頭をなでなで
炭治郎は起きない
頭突きする 禰豆子の額から血が流れる 大きな瞳から大粒の涙 禰豆子の額からピンクの炎 炭治郎が炎に包まれ、鬼殺隊の姿に変わる
鬼の禰豆子は言葉を発しませんので、ここでは禰豆子の動きに対する解説が続きます。
しかし、決して言葉を詰め込んでいるわけではなく、最小限の描写説明にとどめていました。
無意識領域
遠くに善逸 手に植木ばさみ
背後の至近距離に善逸
頬がこけたホラー顔
「頬がこけたホラー顔」、この解説によって、善逸の喋り方がなぜあんなに怖かったのか理解してもらえたのではないでしょうか。
どこまでも続く湖 青空と雲が映り込む水面を青年が歩く
光る小人たちと青年
小人に手を引かれて水面を歩く
空を飛んでいる小人もいる
炭治郎の無意識領域が綺麗で穏やかだったことは、この青年のセリフからもわかりますが、青年が小人たちと一緒に歩いていたことを解説に加えることで、このあと青年が誰に話しかけているのかもわかるようにしてあるのですね。
それぞれの戦い
下弦の壱・魘夢戦
炭治郎
頸から肉の塊が出現 肥大して上へ伸びていく
先端に魘夢の頭
炭治郎が頸を斬ったあとも魘夢は喋っていますので、何が起こっているのか解説が必要な場面ですね。
善逸と禰豆子
走る善逸 扉が破れる 窓から漏れる強烈な光 高速で前方へ移動 禰豆子のもとへ到達する善逸 肉片が飛び散る 開放された禰豆子 目を閉じている善逸 見えない早さであちこちに跳んで斬る
禰豆子ちゃんは俺が守る。守る・・・ンガッ
着地の姿勢で眠っている善逸
よだれと鼻提灯
禰豆子、目が点
煉獄さんと伊之助
伊之助を助けた煉獄
まず炭治郎に指示を出した煉獄さんが、次に伊之助のところへ行った場面です(伊之助の回想)
ここは炭治郎に対してと同じく「指示を出しにいった」だけかと思ったのですが、解説では「伊之助を助けた煉獄」と言っていますので、伊之助は助けられていたのですね。
炭治郎と伊之助
運転室を挟んで向かい合う二人 炭治郎が駆け出す
目の前に肉が出現 目玉を剥く
あちこちに目玉 「夢」と刻まれている
白目を剥く炭治郎
夢の中 頸を斬る
運転室に飛び降り、無数の目玉に見られる炭治郎
夢の中で自分の頸を何度斬っても、目を開けた瞬間また術にかかる炭治郎の様子を解説しています。
上弦の参・猗窩座戦
猗窩座登場
煉獄さんと炭治郎とのやりとりのあと、突如現れた猗窩座の登場シーンです。
大きな揺れ 土煙の中に光る目
煉獄が刀に手をかけ振り返る
離れたところに人影
鍛え上げられた体に藍色の線の紋様が入った猗窩座
濃いピンクの短髪
猗窩座が自分で名乗る前に、解説ではここで先に名前が明かされています。
おそらく、後で「俺は猗窩座」と名乗る鬼がこのとき現れた男だと明確にするためなのでしょう。
ガラッと変わる劇伴もそうですが、「鍛え上げられた体に」から始まる猗窩座の説明から、これまでの相手よりもはるかに強い鬼なのだろうという想像ができますね。
煉獄と猗窩座の死闘
「俺は炎柱・煉獄杏寿郎『玖ノ型・煉獄』!!」
煉獄の足が地面を割り炎が吹き出る 闘気をまとって一気に前へ出る 竜の形を成した炎 猗窩座が衝撃波を繰り出す 激突し爆煙
刀が猗窩座の拳から入り 腕を真っ二つ 刀を引き抜く煉獄 頸に向かって振り下ろす 当たる直前軌道を変えられ 肩から胸へ 刀を押し込む煉獄 貫通した刀身から炎 刀を返す 斬り上げる 天へ巻き上がる火柱
クライマックスに向けての戦闘場面は、ガイドの声のトーンもストーリーに合わせて盛り上がっていきます。
母・瑠火と幼い杏寿郎
母が手を差し出す 母を見つめる煉獄
膝を滑らせ前へ出る
母が抱き締める 涙が頬を伝う
煉獄の目が潤む
母に自分の責務を説かれたあと手を差し出され、少し戸惑いながらも母の方へ寄る煉獄さんの様子です。
「膝を滑らせ前へ出る」、幼い頃からしつけられた美しい所作を表現していますね。
逃げていく猗窩座
(伊之助が)両刀を突き出して猗窩座に迫る 猗窩座、自ら腕を引きちぎって地面を蹴る 伊之助が吹き飛ばされる 高く舞い上がった猗窩座、両腕がない 煉獄の折れた刀が頸に食い込んでいる
後方に着地 山の向こうに太陽
猗窩座の両腕が戻る
ジャンプして森の方へ逃げていく
追いかける炭治郎
刀の切っ先を森へ向ける 口から火
炭治郎の刀が背中を貫く
そのまま走る猗窩座
猗窩座が逃げて行く様子を詳しく解説しています。
穏やかな最期
満ち足りた笑みを浮かべる煉獄 首が傾き目を閉じる
直接的な表現を使わずとも、これだけで十分にその光景が浮かぶのではないでしょうか。
残された者たち
刀を振り回しながら走る伊之助 炭治郎、引きずられながら泣きじゃくる 伊之助、かぶり物から大粒の涙 うつ伏せで泣いている善逸 伊之助が炭治郎をポコポコ殴る
鎹烏が羽ばたき飛んでいく
目に涙を浮かべている 彼方へ飛び去る
茶屋で聞く甘露寺蜜璃 思わず口を押さえる
竹林を歩く時透無一郎 カラスの知らせにも表情が変わらない
屋敷から出てくる冨岡義勇 カラスが飛んできて肩に止まる
そうか
エンドロール
本編が終了しても、音声ガイドは続きます。
ただし、LiSAさんの歌を邪魔しないよう配慮がされていて、歌詞がない部分で最初のイラストの紹介が入ります。
凜々しく微笑む煉獄の姿が浮かび上がる
そのあと『炎』の2番が流れる中で「竈門炭治郎・花江夏樹」から「猗窩座・石田彰」までキャストが読み上げられ、その後、またイラストの説明があります。
煉獄と千寿郎に笑顔で剣術を教える父 煉獄を抱き締める母 肩に鎹烏を乗せた煉獄 煉獄の折れた日輪刀 炎をかたどった鍔(つば)
音声ガイドを終了します
まとめ
無限列車編は、劇場でも自宅でも何度も見てはいたものの、音声ガイド付きで改めて鑑賞してみると、それまで意識していなかった細かい描写にいくつか気づかされました。
そして、やはり言葉がとても美しい。
吾峠呼世晴先生の作り上げた原作の世界観に沿った日本語音声ガイド、ブルーレイ/DVDをお持ちの方は、ぜひじっくり聴いてみてください。
きっと新たな気づきがあり、作品をより深く理解できるのではないかと思います。
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