「鬼滅の刃」において、主人公の炭治郎には善逸や伊之助、水柱・富岡義勇には錆兎と、親友とも言える同志の存在があります。
強面で好戦的な風柱・不死川実弥にも、かつて心を許し合える同志であり、同じ風の呼吸を使う鬼殺隊の先輩、粂野匡近(くめのまさちか)がおりました。
今回は、匡近と実弥の関係性や、匡近の実弥に対する願いなどについて解説していきたいと思います。
匡近と不死川実弥との出会い
実弥は、鬼になった母を殺めてしまった後、鬼殺隊や日輪刀の存在も知らず、独自のやり方で無我夢中で鬼を討伐していました。
同じ鬼を追っていて出会ったのが鬼殺隊士の粂野匡近でした。
自分より一つか二つ年上であろうその少年は、黒い詰襟の軍服のようなものを着ていた。
左目の下に古傷が二つ、かなり深く刻まれている。
実弥「……頸を斬ると、鬼は死ぬのか」
匡近「そんなことも知らずに鬼狩りしてたのか。よく、ここまで命があったな」
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 「鬼滅の刃」風の道しるべ 第1話
無茶苦茶なやり方で鬼狩りをしている奴がいるという噂が回っており、匡近はそれが実弥であることを察し、語り掛けていました。
どうして無謀な真似をしているのか問う匡近に、”醜い鬼どもは俺が皆殺しにしてやる”と鬼に対する激しい憎悪を剥き出しにする実弥。
匡近
「俺がお前に”育手”を紹介する。
鬼を皆殺しにしたかったら、強くなれ」
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 「鬼滅の刃」風の道しるべ 第1話
実弥を鬼殺隊士、そして風の呼吸の剣士に導いたのは匡近でした。
匡近と不死川実弥の普段の様子
実弥が鬼殺隊に入隊した後は、何かと実弥の世話を焼く匡近の姿が、小説版「鬼滅の刃」風の道しるべに記されています。
細かな内容は是非小説版にて、お楽しみ頂けたらと思いますが、抜粋してご紹介します。
やれ傷を作るな、そういう捨て身の戦い方をするな、飯は食ったか、皆と仲良くやっているか、風呂はちゃんと入っているか、人を睨みつけるような顔をするんじゃないなどと、何かにつけて自分のまわりをうろちょろするあのお節介な男が、心の底から鬱陶しかった。
「兄弟子だかなんだか知らねぇけど、うぜェんだよ」
実弥がいまいましげに舌打ちすると、カナエが実弥の両手をそっと握りしめた。
「そんなにツンツンしないで仲良くしましょう。ね?」
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 「鬼滅の刃」風の道しるべ 第1話
まるで世話女房のように、実弥の身辺を気に掛ける匡近の様子に辟易気味の実弥ですが、その裏には実弥が優しすぎるから、匡近は心配なんだと諭す胡蝶カナエ。
不死川家では長男の実弥が、匡近から受ける完全な弟対応が新鮮です!
匡近の不死川実弥への願い
匡近との、たわいのない会話の中でも、”楽しむための人生なんざねェ”と、鬼になった母を自分の手で殺めた十字架を背負い頑なに自分を律する実弥。
この身を生かしているのは、鬼への尽きぬ憎しみー怨讐(えんしゅう)だ。
それでも、まだ夢があるとしたら、それはたった一人残った弟にほかならない。
玄弥が好きな女と結ばれ、たくさんの子を成し、笑顔で暮らす。
その幸せを守るためならば、自分はなんだってする。
弟の幸せを脅かす鬼を一体でも多く屠り去る。
たとえこの身が首だけになろうと、その首で鬼の喉笛に食らいついてやる。
それ以外のことは必要ない。
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 「鬼滅の刃」風の道しるべ 第1話
父親が人に恨まれ刺されて亡くなり、これからは、二人で家族を守ろうと玄弥と誓った矢先に、鬼になった母を殺めた実弥。
生き残ったたった一人の肉親である玄弥には、普通の穏やかな人生をと切に願う実弥の優しさに胸が詰まります。
ぶっきらぼうで不器用な実弥を思いやる匡近は、”わかってるさ”とつぶやき、”お前の受けた傷はそれ程深いんだな”と優しく寄り添いました。
「俺はお前に自分の人生を諦めてほしくないんだよ」
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 「鬼滅の刃」風の道しるべ 第1話
匡近が実弥に執拗にかまっていたのも、人のことだけじゃなく、自分のことも大切にしてほしいという願いが故であり、実弥に自分の人生も諦めずに大切にして欲しいという願いからの行動だったのでしょう。
匡近と不死川実弥の最後の共同任務
二人とも階級が甲となったある日、子供ばかりがいなくなる屋敷への任務を任された二人。
下弦の壱・姑獲鳥(うぶめ)の幻術に惑わされつつも、匡近の判断で術が破れ、実弥と匡近の共闘により、あと一歩というところまで姑獲鳥を追い詰めます。
すると、少女が姑獲鳥を庇って、匡近が放つ風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹(せいらんふうじゅ)の前に立ちふさがりました。
少女の命を最優先に守った匡近は、姑獲鳥の片腕が自分の腹を貫く致命傷を負ってしまいます。
その後、すぐに実弥は姑獲鳥の頸を刎ね、鬼の討伐に成功しますが、匡近は手の施しようのない状態に…。
鬼を庇った少女を避けた匡近の優しさ、そしてその優しさ故に命を落とすことになる不条理に、実弥の鬼への憎しみはさらに高まります。
匡近の不死川実弥の知らない過去
匡近の死後、実弥は、匡近の弟が目前で鬼に殺されていた事実を知ります。
安穏と生きてきた能天気な男だと思っていた匡近の鬼への深い憎悪。
大切な家族を鬼に奪われた、実弥と同じ十字架を背負う亡き友・匡近だからこそ、弟のように思う実弥の気持ちに寄り添って、さらには未来の自分を信じてほしいと願ったのでしょう。
匡近の遺書
大切な人が笑顔で 天寿を全うするその日まで幸せに暮らせるよう
決して命が理不尽に脅かされることがないよう願う
例えその時自分が生きてその人の傍らにいられなくとも
生きていて欲しい 生き抜いて欲しい
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第19巻 第168話
匡近と二人で下弦の壱・姑獲鳥を討伐したことで柱になり参加した、初めての柱合会議で、お館様に食って掛かる実弥の姿がありました。
お館様は自分の不甲斐なさを実弥に詫び、そして匡近の遺書を実弥に渡しました。
その内容は、まさに実弥がたった一人生き残った弟・玄弥に対する思いと重なるもので、弟を目の前で殺された匡近と、家族を鬼になった母に殺され、その母を殺め、たった一人残った弟に罵られた実弥。
立場は違えど弟に対する思いを実弥に重ね、身辺や今後のことを案じていた匡近の思いも理解ができます。
匡近にとって、実弥の存在で救われていたでしょうし、実弥にとっても匡近の笑顔に救われてここまでやってこれたのに、運命の無情さに打ちのめされてしまいますが、”生きていて欲しい 生き抜いて欲しい”の言葉にハッとし思いを重ねていますね。
まとめ
今回は、匡近と実弥の関係性や、匡近の実弥に対する思いなどについて解説しました。
簡単にまとめると
- 同じ鬼を追っていて粂野匡近と実弥は出会った
- 実弥を風の呼吸の剣士に導いたのも匡近だった
- 匡近の実弥に対する過剰な心配は、自分の人生も諦めずに大切にして欲しいという願いからだった
- 立場や状況は違えど、匡近は弟に対する思いを実弥に、実弥は玄弥にと、家族を思う気持ちは同じだった
匡近にとって実弥は希望の光であり、実弥にとって匡近の笑顔や言動は救いであり、お互いにかけがいのない存在でした。
匡近の思いは実弥の胸の中でいつまでも忘れることなく繋がれていくことでしょう。
コミックのシーンだけではわからない内容にも触れる小説版「鬼滅の刃」。
ぜひそちらもお楽しみください。
それでは最後まで御覧いただきありがとうございました。
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