柱合裁判の後、蟲柱・胡蝶しのぶの発案で、竈門炭治郎と禰豆子は蝶屋敷で療養することになりました。
機能回復訓練に励む炭治郎が屋根の上で瞑想をしていると、不意にしのぶが現れます。
このシーンはただの会話だけではなく、しのぶにとって、とても重要な意味を持っていると言われています。
今回は、炭治郎としのぶの屋根の上での会話シーンを通して、しのぶの抱える背景や本音の部分までを考察していきたいと思います。
炭治郎と胡蝶しのぶの屋根の上での会話シーン
登場シーン
屋根の上での会話シーンは以下の各媒体にて登場します。
媒体 | 登場話 |
コミック | 第6巻 第50話 機能回復訓練・後編 |
アニメ | 第24話 『機能回復訓練』 |
炭治郎が屋敷の屋根の上で瞑想をし、呼吸に集中しようとしていると、「もしもし、もしもし、もしもし」と、どこからともなく声が聞こえてくるところから始まります。
ハイッ!?と驚きながら炭治郎が目を開けると、目と鼻の先にしのぶの顔があり、そのパーソナルスペースの密着した距離感に炭治郎もつい頬を赤らめていました。
しのぶ:頑張っていますね お友達二人はどこかへ行ってしまったのに
一人で寂しくないですか?
炭治郎:いえ!できるようになったらやり方を教えてあげられるので!
しのぶ:君は心が綺麗ですね
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第6巻 第50話
当時、しのぶ18歳、炭治郎14歳としのぶが4歳お姉さんであると共に、二人の間には、柱という圧倒的な立場の違いがあります。
しかし、しのぶの接近距離の近さから、炭治郎に対して特別な思いを抱いていることが伺えます。
どんな思いを抱いているか、後の会話にて、徐々にしのぶの思いが明かされていきます。
しのぶの本音
炭治郎が、「どうして俺たちをここへ連れて来てくれたんですか?」としのぶに問うと、禰豆子が公認となったこと、炭治郎の怪我が酷かったことを話すと共に次のように答えます。
しのぶ:それから……君には私の夢を託そうと思って
炭治郎:夢?
しのぶ:鬼と仲良くする夢です きっと君ならできますから
すると、鼻が良く、匂いを嗅いだだけで人の感情を察知してしまう炭治郎から、しのぶの笑顔の奥の怒りについて指摘されます。
しのぶは、笑顔と穏やかな口調で常に本心を隠していたにも関わらず、炭治郎に核心をつかれ、ハッと驚愕の表情を見せました。
姉・カナエの夢である「鬼と仲良くすること」を炭治郎に託すという、自分にとっての大切な話を炭治郎に心を開いて話しているのが伝わってきますね。
そう…そうですね私は いつも怒っているかもしれない
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第6巻 第50話
しのぶは、心の奥に抱える怒りについて、炭治郎に本音を話し始めます。
- 最愛の姉を惨殺されてから、自分の中に怒りが蓄積され続けていること。
- 体の一番深い部分にどうしようもない嫌悪感があること。
- しのぶの姉カナエが、炭治郎と同じように優しい人間で、自分が死ぬ間際まで鬼に同情していたこと。
- 鬼を許せない気持ちを抱える反面、哀れな鬼を斬らずにすむ方法を姉の意思を継いで考え続けようと努めていること。
- 姉が好きだと言ってくれた笑顔を絶やすことなく、振る舞おうとし続けていること。
アニメ版では、いつもの抑揚のある口調とは違い、淡々と自分の本音をとても素直に語っていました。
笑顔の陰で、亡くなった姉カナエの思いと、相反する自分自身の思いとの葛藤に苦しむ様子も赤裸々に語られました。
炭治郎に託す思い
だけど少し…疲れまして
鬼は嘘ばかり言う 自分の保身のため
理性も無くし 剥き出しの本能のまま人を殺す
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第6巻 第50話
両親を鬼に殺され、その時救ってくれた悲鳴嶼行冥の導きで、柱にまで上り詰めた姉・カナエ。
大切な唯一の肉親である姉カナエをも鬼に殺され、そして、自分の継子たちの命まで奪われたしのぶの胸中は想像を絶する苦しみでしょう。
しかし、炭治郎と禰豆子に希望の光を見出したしのぶは、炭治郎に”禰豆子を守り抜いて”と願い、思いを託します。
しのぶが、姉の意思を継ごうと孤独な戦いを続ける中、鬼になった妹を人間に戻そうと模索する炭治郎の姿に共感したしのぶ。
”君が頑張ってくれていると思うと私は安心する 気持ちが楽になる”は、姉と同じ願いを炭治郎に託したいと切に願ったからこその発言であり、一連の会話のシーンの真髄となる思いでしょう。
人を襲わない鬼である禰豆子の存在が、姉カナエの夢である、「鬼と仲良くする」ということを現実に導いてくれる希望への一筋の光として、しのぶの心を明るく照らす存在となっていたのだと思います。
屋根の上で炭治郎としのぶが会話するシーンは、コミックでは6ページほど、アニメでは3分50秒ほどの短いシーンですが、感情を表に出すことの少ないしのぶの本音がぎゅっと凝縮されたとても印象的なシーンです。
炭治郎と胡蝶しのぶの屋根の上での会話シーン・しのぶのアンサー
童磨戦において、童磨の頸への毒の打ち込みをした際、しのぶは炭治郎との屋根の上でのやり取りを思い出し、しのぶの本当の気持ちがしのぶ自身の言葉で語られます。
大切な人を次々と鬼に奪われ、鬼を許すことはできないというしのぶの本心であり、本音ですね。
炭治郎と胡蝶しのぶの屋根の上での会話シーン・アニメ版秘話
TVアニメ鬼滅の刃公式キャラクターズブック参ノ巻の『鬼滅の刃』キャストQ&A集の中で、胡蝶しのぶ役・早見沙織さんへの質問にこのように答えられています。
Q4:TVシリーズ全二十六話の中で、強く印象に残っているエピソードについて教えてください。
ご自分のキャラクターのシーンでも、他のキャラクタ―のシーンでも構いません。
A4:炭治郎くんと屋根の上で語り合うシーン(第二十四話)。
しのぶさんの呼吸と心にするすると吞まれていく感覚があり、強く印象に残っています。
台本のト書きに、「そう、ゆっくりと、いつも演じているようなニコニコじゃなくて、しっとりとした口調で話し始めた」という文章があり、思わず線を引いてしまいました。
TVアニメ鬼滅の刃公式キャラクターズブック参ノ巻 P.58
やはり、炭治郎との屋根の上での会話シーンは、いつものしのぶのキャラとは一線を画す演技を求められていたのですね!
まとめ
今回は、炭治郎としのぶの屋根の上のシーンを通して、しのぶの抱える背景や本音の部分までを考察してきましたがいかがでしたでしょうか。
【登場シーン】
媒体 | 登場話 |
コミック | 第6巻 第50話 機能回復訓練・後編 |
TVアニメ | 第24話 『機能回復訓練』 |
【しのぶの本音】
- 最愛の姉を惨殺されてから、自分の中に怒りが蓄積され続けていること。
- 体の一番深い部分にどうしようもない嫌悪感があること。
- しのぶの姉カナエが、炭治郎と同じように優しい人間で、自分が死ぬ間際まで鬼に同情していたこと。
- 鬼を許せない気持ちを抱える反面、哀れな鬼を斬らずにすむ方法を姉の意思を継いで考え続けようと努めていること。
- 姉が好きだと言ってくれた笑顔を絶やすことなく、振る舞おうとし続けていること、そしてそれに疲れ始めていること。
【炭治郎に託す思い】
- 人を襲わない鬼である禰豆子の存在が、姉カナエの夢である、「鬼と仲良くする」ということを現実に導いてくれる希望への一筋の光として、しのぶの心を明るく照らす存在となっていた。
- 屋根の上での会話シーンは、感情を表に出すことの少ないしのぶの本音がぎゅっと凝縮されたとても印象的なシーン。
【しのぶのアンサー】
- 大切な人を次々と鬼に奪われ、鬼を許すことはできないというのが、しのぶの本心であり、本音。
【アニメ版秘話】
- 屋根の上での会話シーンは、いつものしのぶのキャラとは一線を画す演技も求められていた
普段は笑顔でどこか心ここにあらずな様子で辛辣な毒舌発言をしたり、本音を話していない、本音を出さない印象の強い胡蝶しのぶ。
しかし、炭治郎の真剣に機能回復訓練に向き合う姿勢や炭治郎の優しさに触れるうちに、炭治郎に対して、自分の思いを託すまでに至ります。
炭治郎との屋根のシーンは、しのぶの本音、本心が引き出された、とても貴重なシーンでした。
本当に、「鬼滅の刃」は、細部までとても奥が深いですね!
引き続きお楽しみ下さい。
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