鬼殺隊最年長で最強と言われる剣士、岩柱・悲鳴嶼行冥。
実は、行冥は、蟲柱・胡蝶しのぶとその姉で元花柱・胡蝶カナエと深い縁があります。
それ故、行冥はしのぶに対して、特別な思いを持って接していました。
今回は、3人にはどんな縁があり、それはどのようなことだったのかについて、解説していきたいと思います。
悲鳴嶼行冥と胡蝶姉妹の関係
3人の悲しい出会い
しのぶがまだ幼い頃、しのぶとカナエの家が鬼に襲撃され、両親を目の前で惨殺されてしまいます。
間一髪のところで、当時すでに鬼殺隊だった行冥が現れ、鬼を討伐、姉妹を救いました。
幼少だった胡蝶姉妹にとって、目の前に現れた鬼に為す術もなく両親を奪われ、失意の中、自分たちの命をも狙われている状況での行冥の登場にどれだけ救われたかわかりません。
失意の中にも関わらず、自分たちと同じ思いをさせないと誓う胡蝶姉妹のけなげで一途な思いに胸が詰まりますね。
再会
「今日はお願いがあってきました」
「鬼狩りの方法を教えて欲しいの。私と姉さんに」
姉の言葉を遮るようにしのぶが言う。
「鬼の頸を斬る方法を教えて」
その硬い声に、悲鳴嶼の心の目は、姉妹の決定的な違いを感じ取った。
姉のカナエの中に、深い悲しみと悲痛な決意があるのに対し、しのぶの中には燃えるような怒りが、憎悪があった。
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 [鬼滅の刃]片羽の蝶
両親が鬼に惨殺されてから半月後、行冥の元を胡蝶姉妹が訪ねてきます。
鬼狩りになりたいと懇願する二人に、最初は”この子らの未来を奪ってはならない”と頑なに家に帰れと告げていた行冥。
結局、追い返すこともできず、いびつな共同生活が始まると、自分が胡蝶姉妹に対し、情に絆されてしまっていることを自覚します。
そして、家の裏にある巨大な岩を動かすことができれば”育手”を紹介すると姉妹に約束するのでした。
過去の辛い経験から子供との交流を避けていた行冥は、カナエとしのぶと接するうちに、気持ちに変化が現れている様子も伝わってきます。
鬼殺隊入隊のきっかけ
梃子の原理を使い、見事巨大岩を移動させた胡蝶姉妹は、約束通り”育手”を紹介してもらうことになりました。
その頃には、行冥も、姉妹のことを、下の名前である”カナエ・しのぶ”と呼び、それをしのぶはくすぐったそうに、カナエは穏やかに微笑み受け止めていました。
悲しい出会いから始まった3人ですが、この頃には、心を通わせ合い、それぞれが互いに心の支えになっている不思議な関係性を感じますね。
行冥と柱になったカナエの様子
柱となって初めての柱合会議に参加した不死川実弥の様子を描いたシーンに、柱として肩を並べている行冥とカナエの姿がありました。
お館様に対する実弥の無礼な発言を優しく諭すカナエ。
巻末ページの「後でガミガミ怒られる図」でも、カナエ・行冥・宇髄天元に囲まれ、怒られる実弥の姿が描かれ、柱の先輩として苦言を呈する二人の様子が…。
稀血故の、実弥の自傷の手当をするカナエの様子が、小説版第3弾の風の道しるべにも記されていますが、カナエは、実の母を鬼にされ、家族を失っている実弥の境遇を理解し、何かと気にかけていたのではないでしょうか。
カナエの死
カナエは死の間際、しのぶに鬼殺隊を辞めるように伝えています。
姉として、自分のいなくなった後に残していかなければならないしのぶの身を案じ、普通の幸せを手に入れて欲しいと嘆願するカナエの悲痛な思いがひしひしと伝わってきます。
姉の仇との遭遇
頭から血をかぶったような鬼だった
にこにこと屈託なく笑う 穏やかに優しく喋る
その鬼の使う武器は 鋭い 対の扇
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第16巻 第141話
姉に致命傷を与えた鬼の特徴…その条件に匹敵する鬼、上弦の弐・童磨に、しのぶは無限城で遭遇します。
何の感情もなく淡々と、カナエの話を始める童磨の無神経さに激しい憎しみがこみあげてくるしのぶ。
毒の刃で応戦するも、毒を吸収する童磨。
童磨に左の肺を斬られ、失血と息ができない苦しさ、そして自身の無力さに打ちのめされ涙を流すしのぶの前に、カナエの姿が見え始めます。
倒すと決めたなら倒しなさい 勝つと決めたなら勝ちなさい
どんな犠牲を払っても勝つ 私ともカナヲとも約束したんでしょう
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第16巻 第142話
カナエの励ましに、自分を奮い立たせたしのぶは、鎖骨も肺も肋も斬られている状態で、気力だけで立ち上がりました。
そして、”地獄に堕ちろ”と一言残すと、自ら、童磨に自分の身体を吸収させるのでした。
しのぶは、致死量のおよそ700倍の藤の花の毒が回っている状態の自身の身体を鬼に食わせることにより、鬼を弱らせ、その間にカナヲに頸を斬るように指示を出していました。
柱稽古前の柱合会議
柱合会議を終えた後、行冥に近寄るしのぶの姿がありました。
柱稽古には参加せず、火急にやるべきことがあるというしのぶに、行冥は”毒か?”と問うと肯くしのぶ。
カナエが死に、しのぶは変わった。
倒すべき鬼にすら情けをかけ続けた、やさしすぎる姉の仕草、口調、立ち居振る舞い、性格ーすべてを模し、それこそ血を吐くような修練の末に、柱まで上りつめた。
かつてのしのぶを知る者であれば、誰もが今の彼女の姿に驚きを隠せないだろう。
(お前は……そうしなければ、生きれなかったのか)
それほどまでに、辛かったのか。
それほどまでに、苦しかったのか。
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 鬼滅の刃 片羽の蝶
行冥は、この姉妹が鬼狩りの方法を問いたあの日の自分の決断が本当に正しかったのか、わからずにいました。
”それでは”と背を向けたしのぶに対し、言いようのない不安を感じた行冥は、二度と会えないような気がして、思わず”しのぶ”と声をかけます。
そして、しのぶに生き急ぐなと言おうとして、その言葉を飲み込みました。
姉の仇を討つ、それだけを胸に生きているしのぶにそれを止めろとは言えず…。
いつも明るいトーンで優しく話していたしのぶが、実は姉のそれを模していた、模すことで辛い現実をやっと受け止めることができていた事実に愕然としますが、行冥がそれを知っていて見守っていた事実にもまた驚きました。
まとめ
今回は、悲鳴嶼行冥、胡蝶カナエ・しのぶ姉妹との間にはどんな縁があり、それはどのようなことだったのかについて、解説してきましたがいかがでしたでしょうか。
まとめると
- 両親を惨殺されてしまった時、行冥が現れ、姉妹を助けた
- 巨大岩を移動させた胡蝶姉妹は、”育手”を紹介してもらい、鬼殺隊に入隊
- しのぶは、姉の仇の童磨に毒が回った自分を食わせることにより討伐成功に導いた
- 柱稽古前の柱合会議で、行冥はしのぶと二度と会えない予感を感じていた
- 優しく穏やかなしのぶは、実は姉を模しており、事実を知る行冥は見守っていた
両親を惨殺された時のしのぶはかなり幼くて、カナエと共に誓ったことを心の支えにして頑張ってきたのに、姉のカナエまで鬼に奪われ、姉を模すことで心痛から必死に耐えていた事実が辛すぎますね。
姉を演じることで心を保とうとする一方で、本来の自分自身を殺している辛さも感じていただろうと思うと、その胸中は物凄い葛藤を抱えていたのではないかと思います。
行冥と胡蝶姉妹が一時期、疑似家族のように生活を共にしていたこともある関係であることも、意外でしたが、コミックやアニメには描かれていないお話が見られるのも、小説版の楽しみでもありますので、ぜひ手に取ってみていただければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
引き続き鬼滅の刃をお楽しみください。
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