蟲柱・胡蝶しのぶは、実姉・カナエの仇である上弦の弐・童磨を自らに仕込んだ藤の花の毒と栗花落カナヲと嘴平伊之助らとの共闘により、討伐しました。
死後の世界において、しのぶが童磨の頸を持ち、二人が会話するシーンにおいて、童磨がしのぶに恋をしたのではと問いかける場面があります。
今回は、上弦の弐・童磨と蟲柱・胡蝶しのぶの関係から、童磨がしのぶに恋をした理由について、考察していきたいと思います。
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上弦の弐・童磨と蟲柱・胡蝶しのぶの関係
二人の因縁
頭から血をかぶったような鬼だった
にこにこと屈託なく笑う 穏やかに優しく喋る
その鬼の使う武器は 鋭い 対の扇
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第16巻 第141話
しのぶは、無限城の戦いで、女性の死体をボリボリと異様な音を立て食べる童磨と遭遇しました。
助けを求める女性に優しく声をかけるしのぶの腕の中にいる女性を童磨は切り刻み、さらには殺した事により救ってあげたなどと言い始めます。
カナエの仇の鬼の異常さを目の当たりにし、激しい怒りを露わにするしのぶ。
父と母を鬼に襲われ、カナエと共に鬼殺隊を志願するも、残された家族のカナエまでも奪われたしのぶの童磨に対する怒りや憎しみは想像を絶するほどだと思います。
無神経に、何があったのかなどと話しかける童磨に、しのぶは激しい怒りをぶつけました。
自分の羽織に見覚えがないかとしのぶが尋ねると、童磨は悪びれもせずスラスラとカナエのことを話し始めます。
笑顔を浮かべながら自身の犯した凄惨な過去を話す童磨に、いつもは柔らかな笑みを浮かべて鬼に語り掛けるしのぶも、思い切り怒りと憎しみを露わにしました。
生まれつき心の壊れていたサイコパス・童磨
あーやっぱり駄目だ 何も感じない
死ぬことが怖くもないし 負けたことが悔しくもない
ずうっとこうだったなぁ俺は
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第19巻 第163話
しのぶの毒が効いてきた童磨は、伊之助とカナヲの共闘により、頸を斬られると死を覚悟します。
童磨は人間だった頃から、無感情でした。
両親の異常な愛憎の末の死を目の当たりにした時ですら、両親を失った悲しみよりも血の匂いや部屋が汚れることへの嫌悪を感じるような状態だったことを語り始めます。
人間の感情というものは俺にとって 他人事(よそごと)の夢幻(ゆめまぼろし)だったなあ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第19巻 第163話
人間だった時も鬼となってからも、いつも自分はどこか人と違う時空の中で生きてきた童磨。
自分の本当の気持ちと周囲の感覚には違和感があり、かといってそのことを素直に伝えることもできず、周りに合わせて凌いでいました。
また、白橡(しろつるばみ)色の髪や虹色の虹彩と、極めて特殊な外見を持っていたこともあり、童磨はさらに異質な所へと導かれてしまいます。
現代で言う”サイコパス”を地で行く童磨の言動ですが、周りの大人たちに悟られることもなく、挙句の果てに“万世極楽教の教祖”にまで崇められてしまったことが何よりの悲劇です。
サイコパスとは
サイコパスとは「感情の一部が欠如している」という点において特筆される精神病質者のこと。
自分以外の人間に対する「愛情」「思いやり」などの感情が著しく欠けており、そのためにきわめて自己中心的に振る舞う傾向にある。
サイコパスの意味や定義 わかりやすく解説 Weblio辞書
薬学の知識を持った剣士・しのぶ
負傷した隊士を自身の屋敷で治療
薬学の知識を持ちあわせる蟲柱は、負傷した隊士の治療も担う。
鬼殺隊に欠かせない存在である。
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 公式ファンブック 鬼殺隊見聞録
薬学に精通し、負傷した隊士のケガの治療などにも従事していたしのぶ。
そして、童磨に殺された姉のカナエもまた、蝶屋敷で隊士の治療に従事しており、しのぶが蝶屋敷の主人となったのは、カナエが17歳で童磨に殺され亡くなった後、しのぶが14歳の時でした。
殺した人を喰べることで救済しているなどと本気で話す童磨の様子に、しのぶは、”正気とは思えない””吐き気がする”と伝えています。
また、カナヲの口から、死の間際にカナエが童磨のことを気の毒だと言っていたことも語られており、姉妹は童磨が精神に異常をきたしていることを認知していた可能性は高いように思います。
薬学に精通していたしのぶなら、もしかするとこの時代においても精神の病等にも詳しかったかもしれませんが、童磨の同情の余地のない異常さが際立ち、吐き気を覚えるほどでした。
童磨がしのぶに恋をした理由
しのぶの童磨への対応
体が塵となり崩れ去った後、死後の世界で、しのぶが童磨の頸を右手のひらに乗せ、話をする二人の様子が描かれています。
このシーンの一番の違和感は、姉の仇であり、凄惨な人殺しでサイコパスである童磨を、何故、しのぶは自分の手の中に置いているのかという点です。
軽蔑し忌み嫌っている相手に対しては、顔を触ることは愚か、頸を掌に乗せて喋るなど、普通では考えられません。
しかし、薬学に精通し、医学に関しての知識があったしのぶは、童磨もまた、正常な感覚を育てる幼少期にとても偏った環境に置かれ、精神を蝕まれてしまったことを理解していたからではないかと考えられないでしょうか。
治療者として、相手が仇であったとしても、精神を病んでいる相手を手当てすると言う気持ちを捨てきれずにいたと考えると何となく理解ができるように思います。
しかし、その思いの一方では、因縁の相手である童磨が死んだことを確認せずにはいられないほどの執念を持っていたしのぶ。
その頸を手の中に置くことで逃げも隠れもできず、確実に童磨の死を間近で確認しようという意思とも取れます。
そして、童磨にとっては自分を討伐する為とはいえ、しのぶは、童磨の正体を知りながら真剣に向き合った唯一の人間でもあります。
童磨の好みとは?
喜怒哀楽を感じることのない童磨には、以前、殺さずに手元に置いておこうと思った女性がいました。
それは、嘴平伊之助の母・琴葉です。
琴葉は、童磨の正体を知らずに向き合っていましたが、正体を知ると童磨の元から伊之助を連れて逃げ出した為、童磨に殺されています。
童磨は、琴葉のことを綺麗な子と言い、”心の綺麗な人が傍にいると心地いいだろう”と言っています。
このことから、童磨は容姿が美しく、心の綺麗な女性を好むことがわかります。
童磨が初めて覚えた感情
童磨が、しのぶの体に回っていた毒の威力を褒めると、しのぶは自分ではなく鬼の珠世が作った毒だと話しました。
本当なら自分が作った毒で葬りたかったと話すしのぶですが、仲間を信じ、さらには必ず、仲間たちによって、鬼の始祖・鬼舞辻無惨を討伐できると言います。
それを聞いた童磨は、胸に、今まで感じたことのない感情を覚えました。
この時、しのぶの仲間を純粋に信じ、未来を信じる心に童磨は胸を打たれた可能性は高いと思われます。
そして、本当の思いをなかなか表に出さないしのぶが、童磨にはなぜか思っていることを話しているようにも思います。
今までは万世極楽教の信者たちに自分の利害に関する事ばかりを一方的に打ち明けられることが常だった童磨。
しのぶが、利害など考えずに、自分に純粋な胸の内を明かしてくれたことに感銘を受け、その心の美しさに感動し、童磨の感情に変化が起きたのではないかと考えられます。
しかしその後、童磨は自己中心的な考えをつらつらと並べ立てた為、しのぶに一掃されてしまいましたが…。
最期に人としての感情を取り戻したように思われましたが、実姉・カナエや大勢の女性達を殺し、喰べてきたという重い罪を犯しておきながら、しのぶを一緒に地獄へ行かないかなどと誘う神経は相変わらずでした。
まとめ
今回は、上弦の弐・童磨と蟲柱・胡蝶しのぶの関係から、童磨がしのぶに恋をした理由について、考察してきましたがいかがでしたでしょうか。
まとめると
- 父と母を鬼に襲われ、残された家族のカナエまでも童磨に奪われたしのぶの童磨に対する怒りや憎しみは想像を絶するほどだった
- 幼少期から”サイコパス”だった童磨ですが、周りの大人たちに悟られることもなく、“万世極楽教の教祖”にまで崇められてしまったことが何よりの悲劇だった
- カナエ・しのぶ姉妹は童磨が精神に異常をきたしていることを認知しており、正常な感覚を育てる幼少期に偏った環境に置かれ、精神を蝕まれてしまったことを理解していた可能性が高い
- 童磨がしのぶに恋をした理由は、しのぶが童磨の正体を知りながら真剣に向き合った唯一の人間で、自分の好みである、容姿が美しく、心の綺麗な女性だったから
無感情だった童磨が、心の綺麗な人が好きで、心の綺麗な人といると心地が良いと感じていたことには正直驚きました。
琴葉がいた時も、鬼である以上、童磨には栄養価の高い女性ばかりを喰べることが必要であり、結果、正体を知った琴葉に逃げられ、手をかけています。
童磨のしたことはとても許されることではありません。
しかし、童磨が人間で子供だった頃、物心がついた頃にそばにいた大人(両親を含めた)の童磨への関わり方が、後々童磨の人格に大きな影響を与えたことは事実でしょう。
どんな人の心も悪という、鬼になりうる部分というのは持ち合わせていると思います。
私たち人間には、悪に支配されてしまうのか、自分を律して正しい道を進むのかは、自分次第です。
心に鬼を呼び寄せないようにしたいものですね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
引き続き鬼滅の刃をお楽しみください。
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