鬼滅の刃は、キャラクターの設定が非常に細かくて深く、ファンの考察もさまざま。
その中において、「さすがにこれは矛盾しているのでは」と言われているもののひとつが胡蝶姉妹の年齢設定で、胡蝶カナエが亡くなったときの胡蝶しのぶの年齢が、他のストーリーとの辻褄が合わないというもの。
今回はこの矛盾を徹底的に検証してみました。
なお、検証結果は、これまで疑わずに見てきた設定を覆すものになってしまいましたが、「そういう考え方もある」といった程度に楽しんでいただけると嬉しいです。
胡蝶しのぶの年齢について
胡蝶しのぶの作中での設定年齢は18歳、柱の中では、14歳の時透無一郎に次ぐ若さです。
この年齢そのものに不自然な点はないのですが、多くのファンが矛盾を感じたのは、原作のこのカット。
胡蝶しのぶの姉で元花柱だった胡蝶カナエは、17歳のときに上弦の弐・童磨と戦って命を落としています。
そのとき、妹のしのぶは14歳だったことが、このカットからわかりますね。
現在の胡蝶しのぶは18歳、つまり、姉のカナエがなくなったのは今から4年前。
ここに矛盾があると言われているのです。
年齢の矛盾はどこで生じているのか?
胡蝶カナエの亡くなった時期が4年前だとすると、生じてしまう矛盾、それは冨岡義勇と不死川実弥が柱になったタイミングです。
冨岡義勇が柱になったのは約2年前
柱になったばかりの頃に竈門兄妹と出会い、2人を恩師の元へと向かわせた。
公式ファンブック『鬼殺隊見聞録』
竈門炭治郎は、禰豆子が鬼にされた直後に冨岡義勇に出会い、その後2年の修行期間を経て最終選別を突破。
物語は、この「炭治郎が最終選別を突破して鬼殺隊士になってから」を軸に展開していきます。
そうなりますと、設定年齢21歳の冨岡義勇が炭治郎に出会ったのは19歳のとき。
一方、設定年齢が18歳の胡蝶しのぶは、2年前は16歳だったことになります。
不死川実弥が柱になったとき胡蝶カナエは生きていた
不死川実弥の設定年齢は、冨岡義勇と同じ21歳ですが、実弥が柱になって初めて呼ばれた柱合会議の場にすでに義勇がいることから、柱になったのは義勇が先だったことがわかります。
そして注目すべきは、この段階でまだ胡蝶カナエが生きていること。
冨岡義勇は柱になったばかりの頃に炭治郎と出会っていて、それが今から約2年前。
現在18歳の胡蝶しのぶは2年前だと16歳、でもカナエが亡くなったときの年齢は14歳。
しのぶが14歳のときに亡くなっていたはずの姉が、その2年後と思われるこの時点で生きている。
ファンの間でも「現在18歳のしのぶが、カナエが亡くなったときに14歳だったという設定はミス」とする考えが多いように見受けられます。
ところが、原作の描写と当時の時代背景を見ていくと、ミスではなかったと考えられる結論に達しました。
年齢の基準は最終決戦の無限城
鬼滅の刃に登場する主要キャラクターの年齢は、公式ファンブック『鬼殺隊見聞録』に記載されています。
まずはその年齢を一覧で見てみましょう。
主要キャラクターの設定年齢
キャラクター名 | 年齢 |
---|---|
竈門炭治郎 | 15歳 |
竈門禰豆子 | 14歳 |
我妻善逸 | 16歳 |
嘴平伊之助 | 15歳 |
栗花落カナヲ | 16歳 |
不死川玄弥 | 16歳 |
冨岡義勇 | 21歳 |
煉獄杏寿郎 | 20歳 |
宇髄天元 | 23歳 |
時透無一郎 | 14歳 |
胡蝶しのぶ | 18歳 |
甘露寺蜜璃 | 19歳 |
伊黒小芭内 | 21歳 |
不死川実弥 | 21歳 |
悲鳴嶼行冥 | 27歳 |
ここでは、キャラクターの設定年齢を「無限城での最終決戦時点」と考えました。
その理由は、階級が最終決戦時のものだからです。
ただし、煉獄杏寿郎だけは亡くなったときの年齢でしょう。
設定年齢の基準が「無限城」である根拠
柱の階級表記
柱については、ファンブック内の階級欄に「○柱」と書かれていて、冨岡義勇は「水柱」、甘露寺蜜璃は「恋柱」となっています。
ところが、ここに「元○柱」と「元」という字がついている柱が2人いました。
煉獄杏寿郎と宇髄天元です。
煉獄杏寿郎は無限列車での戦いで命を落としており、無限城の戦いの時点ではすでに亡き人となっていました。
宇髄天元は遊郭で上弦の陸を倒して生き残ったものの、体の損傷が激しく、そのまま鬼殺隊を引退。
最終決戦では、新しく鬼殺隊当主となった輝利哉さまの護衛に徹し、鬼たちとの戦いには直接参加していません。
つまり、彼らの階級表記が「元炎柱」「元音柱」となっているのは、少なくとも遊郭編が終わってからの基準であることを示しているのです。
炭治郎たちの階級
公式ファンブックに記載されている階級は、竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助の3人が上から三番目の「丙(ひのえ)」、栗花落カナヲと不死川玄弥の2人がそのひとつ下の「丁(ひのと)」です。
炭治郎・善逸・伊之助の那田蜘蛛山の時点での階級は、いちばん下の「癸(みずのと)」。
その後、無限列車で下弦の壱を倒し、遊郭に潜入したときは下から四番目の「庚(かのえ)」に上がっていました。
炭治郎たちの階級がいつ「丙」に上がったのかは定かではありませんが、同期の5人がそろってかなり上の階級に昇進していることからも、遊郭より後であることは間違いありません。
また、公式ファンブック『鬼殺隊見聞録』が発売されたのは2019年7月。
同じ月に、最終決戦が始まる場面が描かれている原作コミックの16巻も発売になっていますので、やはりファンブックに記載されている情報は「無限城での戦いが始まった時点」と考えて良いと思います。
ただし、炭治郎の身長&体重の基準は最終選別時のもの
ファンブックに記載されている年齢を「最終選別の時点」とする考えもあるでしょう。
なぜなら、炭治郎の身長と体重は、物語が始まったときと最終選別時、両方が書かれているものの、作中のほとんどでは最終選別時を基準として描かれていることが明らかだからです。
そのため、炭治郎や他のキャラの年齢も、炭治郎たちの最終選別時のものと認識しているファンが多いのではないかと思います。
もちろん、それが正解なのかも知れません。
ただ、少なくとも階級だけは、最終選別のときのものではないですよね。
なお、不死川玄弥と栗花落カナヲの身長と体重は選別時のものではなく、そこから変わった状態が基準となっています。(ややこしいですが)
胡蝶しのぶの年齢推移と鬼滅の刃「年表」
季節がわかる描写2つ
鬼滅の刃では、具体的な季節の描写がほとんどありません。
しかし、物語の最初と最後に、極めて重要なヒントがありました。
始まりは年末、終わりは桜の季節
「正月になったらみんなに腹いっぱい食べさせてやりたいし、少しでも炭を売ってくるよ」
コミック第1巻
炭治郎のこのセリフから、この雪山の場面はおそらく12月。
つまり、禰豆子が鬼にされ、冨岡義勇に出会い、鱗滝左近次のところへ向かったのも12月だったと考えられます。
そしてこちらは、最終決戦の三か月後に桜が満開になっている場面です。
現代であれば、東京の桜が満開になるのは3月末頃ですが、この時代であればおそらく4月。
ということは、無限城での最終決戦は1月だった可能性が高いですね。
では、この物語の最初と最後を踏まえ、その間にあったストーリーを順に追い、同時に胡蝶しのぶの年齢を当てはめてみます。
随分遠回りしましたが、今回は私の年齢についての考察ですからね。
しのぶの年齢と物語の年表
物語の年表を作るために、炭治郎が参加した最終選別での手鬼のセリフを参考にして、具体的な年を推測しました。
その年が大正3年です。
「忘れもしない、47年前、アイツがまだ鬼狩りをしていた頃だ。江戸時代・・・慶応の頃だった」
コミック第1巻
大正3年は西暦1914年で、その47年前は1867年、ぎりぎり江戸時代です。
なお、慶応最後の年である1868年は途中から明治元年となっていました。
手鬼が鱗滝さんに捕らえられたときは雪が降っていましたので、季節は冬。
そして1868年の冬はすでに明治になっていたことから、手鬼の言っている「慶応の頃」は1867年であると思われます。
年表としのぶの年齢
これを踏まえて作成した年表に、胡蝶しのぶの年齢を当てはめたものが以下になります。
(あくまで「想定」であることをご了承ください)
こう見てみると、胡蝶しのぶは14歳のときに姉のカナエを亡くし、作中の設定年齢18歳で無限城での決戦を迎えたことに矛盾がないように見えます。
でもちょっと待ってください。
胡蝶しのぶの誕生日は2月24日、無限城での決戦が1月だとすると、そのときまだ17歳、残念。
とお思いでしょうか?
いいえ、実は、ここも辻褄が合っているのです。
数え年
大正という時代を考えますと、合点のいく答えが出ます、それが「数え年」。
数え年とは、1月1日に1つ年をとるという考え方で、昭和の戦前までは、むしろこの数え方が一般的でした。
つまり、しのぶが18歳になるのは大正5年の1月1日で、最終決戦の時点ではすでに18歳だったというのが、この時代の考え方なのです。
また、他のキャラクターの設定年齢も、誕生日とは関係のない「数え年」で統一されていたと考えると、わかりやすいですね。
まとめ
今回は「胡蝶しのぶの年齢設定に矛盾はなかった」という視点で考察をしてみました。
ただそうなりますと、炭治郎が鬼殺隊士として戦ってきたほとんどの期間が現在でいう13歳~14歳となり、これまで15歳と思って見てきたのに、なんだか変な感じがしてしまいます。
また、この考え方だと宇髄天元が遊郭で戦ったのは22歳、時透無一郎が刀鍛冶の里で戦ったのは13歳になってしまいますね。
やはり、ファンブックに書かれている設定年齢が一律「最終決戦の無限城のとき」で、しかも「数え年だった」という考えは少し強引だったかもしれません。
そのせいで、今度は他のシーンについて矛盾が生じてしまう可能性もあります。
ただ、胡蝶姉妹にだけ焦点を当ててみると、決して「年齢設定はミス」とは言い切れないと証明できた気がして、考察した甲斐のあるテーマとなりました。
関連記事