『鬼滅の刃』に登場する人気キャラクター・嘴平伊之助の特徴といえば、頭に猪の皮をかぶっていて、上半身は裸。
それだけでも十分に「変わったヤツ」ですが、更に刀を2本持っていて、しかもその刀の刃は2本とも「のこぎり」のようにガタガタ。
「我流」なのは呼吸だけではない伊之助の、独特な刀について詳しく見ていきたいと思います。
嘴平伊之助(はしびらいのすけ)の刀の特徴
伊之助の使う刀の特徴は2つ、「二刀流であること」と「刃がガタガタなこと」です。
特徴①:二刀流
『二刀流』の意味
「二刀流」とは
両手(右手と左手)にそれぞれ刀もしくは剣を持って、攻守をおこなう技術の総称。二刀剣法とも呼ばれる。また、左右両方の手それぞれが武器を扱うことから、二つの異なる手段をもって事にあたること、あるいは同時に二つのことを行うことを意味するようにもなった。
Wikipedia
伊之助は「二刀流」の真の意味に当てはまりますね。
なぜ刀を2本使う戦闘スタイルをとっているのか?
伊之助は赤ん坊の頃に親と離ればなれになり、その後、猪に育てられた過去を持っています。
そのため、生活スタイルは人間よりも野生動物にならったものだったと考えられますが、人間の伊之助は、他の動物たちに比べてはるかに多くのことができる便利な体を持っています。
普通に育ってきた人間であれば「手が両方塞がっているのはちょっと不便」と感じるところ、伊之助は「手が両方とも使えるなら使った方がいい」という考えだったのかも知れません。
その結果、「刀は1本よりも2本の方が強い=攻撃力が上がる」と単純に思い至り、それが『二刀流』という戦闘スタイルに行き着いたのではないでしょうか。
『二刀流』と言えば・・・
ちなみに、現在の日本で「二刀流」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、メジャーリーガーの大谷翔平選手だと思います。
その大谷選手、2020年11月のインタビューで「『鬼滅の刃』は、ほぼ読みました」と言っています。
「ほぼ」というのは、その時点ではまだコミック最終巻が発売されていなかったからなので、もう今は読破しているかも知れませんね。
ちなみに、好きなキャラクターは「特にいない」そうです。
特徴②:刃が「のこぎり」のようにガタガタ
明らかに異質な『刃』
炭治郎は、この猪頭の男が日輪刀を持っていることに驚いていましたが、この画を初めてみた人がまず気になったのは、刃のガタガタ具合ではないでしょうか。
スパッ!とシャープな切れ味が特徴の日本刀が、ここまでガタガタになっているところはあまり見かけませんよね。
でもこの「イノシシお化け」の見た目とは合っているような気がする
この『刃』は「刃こぼれ」がひどくなった結果なのか?
これは遊郭での『上弦の陸・堕姫(だき)』のセリフです。
確かに炭治郎の日輪刀は、先の方が「刃こぼれ」していますね。
通常「刃こぼれ」と聞くと、このような状態、つまり一部が少し欠けたような状態をイメージするのではないでしょうか。
しかし、伊之助の日輪刀の刃の「欠け具合」はもっと大きく、しかも結構規則的に欠けています。
どうしたらこんな刃になるのか?
伊之助は、那田蜘蛛山で父蜘蛛と戦っているときに刀が折れてしまっています。
この場面は、刀鍛冶の鉄穴森(かなもり)さんが、新しく打ってくれた刀を蝶屋敷に持ってきてくれたところです。
鬼殺隊士が持つ日輪刀は、別名「色変わりの刀」と言われていて、持ち主によって色が変わるのが特徴です。
伊之助の刀は「藍鼠色(あいねずいろ)」に変わり、鉄穴森さんも「ああ綺麗ですね。渋い色だ。刀らしい良い色だ」と感慨深げに見ていたのですが、伊之助がこの後に取った行動は、
伊之助は自分でわざとガタガタの刃にしていたのでした。
この場面、おそらくほとんどの人が、鉄穴森さんに同情したのではないでしょうか。
心を込めて丹念に打って磨いだ刀をあんな風にされたのです、ブチ切れるのも無理はありません。
この刃は戦いに有効なのか?
この刃について、武術の専門家はこう言っています。
伊之助はノコギリのような刃を持つ刀を使うんですが、これは実在する武器なんでしょうか?
武術の専門家・横山氏:これは、厳密に言うとすべての日本刀が実はこういう形なんです。日本刀って刃先を拡大するとノコギリ状なんですよ。「寝刃をあわせる」というんですけど、昔から切り合いを前に、わざと荒い砥石で刀に傷をいれたり、砂の山に刃を突っ込んだりするんです。そうして刃先に小さなギザギザを作って刀を斬りやすくするんですね。
引用元:『鬼滅の刃』日輪刀について武術の専門家に聞いたら最強武器が意外すぎた
だから、伊之助はそのギザギザが大きい刀を好んでいるということだと思います。
なんと、実はちゃんとした根拠があったんですね。
もちろん、伊之助がそれを誰かから教わったとは考えにくいので、自分の感覚でやっていたことなのでしょう。
伊之助がこの刀を好んで使っている理由は?
切れ味の悪さは関係ない
鬼舞辻無惨も言っているとおり、この刀の切れ味が悪いのは確かなようです。
しかし、そんなことは伊之助もわかっているはず。
それでもこの刀を使っているということは、伊之助にとって「刀の切れ味が悪い」ということは、マイナスでもなんでもないと考えられます。
伊之助の戦闘スタイルに合っている
伊之助の使う呼吸は、我流の『獣の呼吸』。
「シャープに」「スマートに」とは対極にあるイメージですよね。
つまり、切れ味の良さよりも「戦っている相手に大きなダメージを与えられる」ということの方が重要で、この刃こそ、伊之助にとっては最強の武器なのでしょう。
実際に「のこぎり」のようにして使うこともできる
『上弦の陸・堕姫』の頸は、帯状にグネグネ伸びる厄介なものでした。
しかし、伊之助はこのガタガタの刃の刀を2本使い、のこぎりのようにして切ることができたのです。
『獣の呼吸』の斬られ心地は?
公式ファンブック「鬼殺隊見聞録・弐」で、隠(かくし)の後藤さんが、各呼吸の斬られ心地を地獄に行った鬼たちにインタビューしています。
では、伊之助の『獣の呼吸』で斬られた鬼たちはなんと言っているのでしょう?
・・・・・・
そんな場面、ねぇぞ
なんと、後藤さんがインタビューしたのは、現役の柱たちが使う呼吸と、『花の呼吸』、『日の呼吸』についてのみでした。
つまり、伊之助の『獣の呼吸』と善逸の『雷の呼吸』の斬られ心地はわからないのです。。(柱たちに比べて、斬ってきた対象者が少なかったせいでしょうか・・・)
個性的な刀を使う鬼殺隊士は、伊之助だけではない
実は鬼殺隊、特に9人の『柱』においては、「一般的にイメージされる日本刀」を使うのは4人しかおらず、あとの5人は伊之助に勝るとも劣らない『個性的な刀』を扱っています。
一般的にイメージされる刀を使う『柱』4人
水柱・冨岡義勇
風柱・不死川実弥
炎柱・煉獄杏寿郎
霞柱・時透無一郎
個性的な刀(武器)を使う『柱』5人
音柱・宇髄天元
宇髄も「二刀流」で、しかも一部大きく刀が欠けていますね。
もちろんこれも「わざとこの形にしている」のだと思われます。
蟲柱・胡蝶しのぶ
しのぶは力が弱くて鬼の頸を切れないのですが、代わりにこの刀の「突き」で毒を打ち込んで攻撃します。
刀を収める鞘(さや)の中で毒を調合しているのですが、その仕組みは、しのぶ本人と刀鍛冶の鉄珍様しか知りません。
尚、胡蝶しのぶの刀についてはこちらの記事で詳しく解説されています。
蛇柱・伊黒小芭内
伊黒の刀の刃も真っ直ぐではないので、切られた断面は波打ち、痛みが大きくなるそうです(隠の後藤さんによるインタビューより)。
恋柱・甘露寺蜜璃
体の柔らかい蜜璃の動きに沿うよう、新体操のリボンのような刀を使っています。
尚、甘露寺蜜璃の刀についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
岩柱・悲鳴嶼行冥
悲鳴嶼さんが使うのは日本刀ではなく「斧」と「鉄球」です。
これらで頸を斬られた鬼は、日輪刀で斬られたときと同じように死んでいますので、この斧も鉄球も、日輪刀と同じ玉鋼(たまはがね)からできていると思われます。
日輪刀の基となる『玉鋼(たまはがね)』とは?
最後に、日輪刀の基となる玉鋼について解説いたします。
どれを選ぶかで完成品にどれほどの差が出るのかは定かではありませんが、「最上質の鋼」とされる「玉鋼」は実は人工的に作られたもので、その過程によって含まれる炭素の量などによって等級も異なります。
炭素の含有量が多く、破砕した際の断面が均一なものほど等級が高く、逆に炭素の含有量が少なく、不純物の混入度が高い鋼は「玉鋼」とは認められません。
最終選別の合格者に自分で玉鋼を選ばせることは、品質の優越による不公平をなくすため(品質の劣ったものを選んでもそれは自己責任)なのでしょうね。
参考:「日本刀」を生み出す最上の和鋼『玉鋼』。我が国が誇る製鉄法唯一の現場をみる| 島根県奥出雲「日刀保たたら」
まとめ
伊之助は「呼吸」だけではなく、刀のタイプも自分自身で考え、自分にいちばん合ったスタイルのものを見つけています。
めちゃくちゃなようでいて、実は本人が思っている以上に鋭い感覚の持ち主で、且つ頭も良い子なのでしょう。
両手に独特な刀を持って走り回る伊之助の姿は、登場当初こそ不気味でしたが、見慣れると愛嬌があります。
その独特な姿での活躍を、これからも期待したいと思います。
尚、伊之助の独特な刀の威力が発揮される『獣の呼吸』は、こちらで詳しく紹介されていますので、是非ご覧ください。
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