不死川実弥&玄弥の熱い兄弟愛に泣ける!二人の過去と最後、そして兄弟それぞれの想いを解説

不死川実弥(しなずがわ さねみ)

『鬼滅の刃』では家族愛に対する描写が多く見られ、その中でも核となっているのは、主人公・竈門炭治郎の、鬼に殺された家族や鬼になってしまった妹・禰豆子への想いです。

そして今回取り上げる「不死川実弥&玄弥兄弟」も、鬼に家族を殺されていて、生き残ったのは兄弟二人だけ。

しかしそれは、炭治郎&禰豆子の兄妹と同じく「守るべき大切な人がいる」ということでもありました。

たったひとりの兄を、弟を守るため、二人はどんな想いで戦ったのでしょうか。

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不死川実弥(しなずがわさねみ)と玄弥(げんや)の過去

不死川兄弟は、両親と2人の弟、3人の妹がいる9人家族。

そしてその大家族の大黒柱は、父親ではなく母親でした。

母親を敬愛していた兄弟

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

母親はとにかく働き者で、玄弥は「お袋が寝ているところを見たことがなかった」と言っています。

母からすると、子供たちを育てるために「休んでいる暇などなかった」という状況だったことは想像に難くありませんが、特に上の二人(実弥と玄弥)はそんな母親を敬愛し、一緒に家族を支えていたのです。

実弥
実弥

父親?あいつはずうたいがデカいだけの「ろくでなし」だった。他人からも恨まれて、刺されて死んだのは自業自得だ。

家族が『鬼』に殺された

母親と子供たちで仲良く暮らしていた不死川家でしたが、ある晩、悲劇が起こります。

長男の実弥が帰りの遅い母を心配して捜しに出ていたときに、下の子たちが鬼に襲われてしまったのです。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

その鬼を追って飛び込んで来たのが実弥でした。

そして玄弥は下の子たちがもう助からないことを知りながら、それでもなんとかしたいと医者を呼びに外へ駆け出します。

しかし、そこで悪夢のような光景を目にしてしまったのでした。

『鬼になった母親』を殺した兄・実弥

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

血まみれになった兄の前に倒れていたのは、最愛の母

なんと家族を襲った鬼は『鬼になった母親』だったのです。

実弥はそれを母親とは知らず、戦った末に殺したのですが、陽が昇って明るくなったとき、それが『鬼になった母親』だったと気付き、愕然とします。

弟・玄弥の後悔

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

なぜ兄が母を切りつけたのか、玄弥はわけがわからないまま、兄を罵倒してしまいます。

しかし、後になって思い出したのは、襲われたときに気づいていた鬼の正体でした。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

いくら弟や妹が殺されて混乱していたとはいえ、自分を助けるために最愛の母を殺めてしまった兄へ追い打ちをかけてしまったことを、ずっと謝りたいと思い続けていたのです。

鬼殺隊士となった兄弟

兄・不死川実弥は鬼殺隊の『柱』となる

鬼のせいで家族を失い、鬼のせいで母を殺してしまった実弥は、鬼への憎悪を募らせていきました。

初めは「稀血(まれち)」を武器に、日輪刀なしで鬼を狩っていた

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第19巻

実弥は、鬼になった母親が自分の血を見たとたんに動きが鈍くなったのを思い出し、「自分の血は鬼にとって特別なんだ」ということに気づきます

そして「わざと自分の体を傷付けて血を流し、鬼の動きが鈍ったところを捕らえて縛り上げ、太陽の光に当てて焼き殺す」、こんな自殺行為ともいえる自己流のやり方で鬼を狩るようになったのでした。

なお、実弥の「特別な血=稀血(まれち)」については、こちらの記事で詳しく解説しています。

正しく導いてくれた先輩剣士・粂野匡近(くめのまさちか)

しかしあるとき、同じ鬼を追っていた鬼殺隊士の粂野匡近という少年と出会ったことで、それまで自暴自棄だった実弥の人生は大きく変わります。

実弥は匡近から『育手(そだて)』を紹介され、そこで基礎から鍛えられて、やがて鬼殺隊へ入隊。

その後もお互いに実績を積み、二人で十二鬼月と戦うまでになりましたが・・・

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第19巻

匡近の想いが、自身の想いと重なる

『下弦の壱』を倒して柱となった実弥は、初めて柱合会議の場に呼ばれます。

そしてそこでお館様と対面し、匡近の遺書を手渡されました。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第19巻

命を賭けて鬼と戦っている鬼殺隊士たちは皆、あらかじめ遺書を書いていて、その遺書は鬼殺隊本部に預けられています。

そして匡近の遺書に書かれていた「大切な人への想い」、それは実弥にとっての玄弥への想いと同じでした。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第19巻

「鬼」である以上、禰豆子も例外ではない

不死川実弥は、初登場シーンで炭治郎と禰豆子への憎悪を露わにしていました。

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

どんな事情があろうと、誰がなんと言おうと、鬼は絶対に生かしておいてはならない、それが実弥の信念であり、鬼殺隊士としても正しい考えでした。

ただ、憎悪の矛先がヒロインの禰豆子だったため、この鬼殺隊本部だけのシーンを見ると、「不死川はなんてわからずやで乱暴なヤツなんだ」と思ってしまいます。

しかし「鬼になった母親が弟や妹を殺し、その母親を自分が殺めた」という実弥の壮絶な過去を知ってしまうと、むしろ「不死川がわからずやなのではなく、他の者が甘いのではないか」とさえ感じます。

弟・不死川玄弥も『上弦の鬼』と戦うまでに成長

竈門炭治郎と鬼殺隊同期

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

玄弥は、炭治郎や善逸たちと同じ年に最終選別を受け、見事に突破して鬼殺隊士となっています。

ただ、合格者の今後について説明を受けているとき、玄弥はずっとイライラしながら、やたら刀のことばかり気にしていました。

「刀だよ刀!今すぐ刀をよこせ!鬼殺隊の刀!色変わりの刀!」

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
炭治郎
炭治郎

なぜあんなにイライラしていたのか、このときはわからなかったんだけど、後から思えば、玄弥はとにかく一刻も早く日輪刀を手にして、鬼を狩りに行きたかったんだろうな、お兄さんに会うために。

蝶屋敷で再会した玄弥と炭治郎

©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

炭治郎は無限列車の任務に赴く直前、蝶屋敷で玄弥と再会しました。

しかし、このときは言葉を交わすことなく、玄弥がぶつかってきただけで終わっています。

玄弥
玄弥

最終選別の後、俺の腕を折ったヤツだったからな。

ところで、選別のときは炭治郎とあまり変わらない体格だった玄弥ですが、このときはかなり大きくなっています。

その理由は、玄弥の特異体質が可能にした「鬼喰い」(その名のとおり「鬼を食べること」)によるものでした。

刀鍛冶の里での上弦の肆・半天狗戦

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第12巻

玄弥と炭治郎が次に顔を合わせることになったのは、刀鍛冶の里でした。

会ったばかりの場面では、まだ玄弥のイラつきが収まっておらず、炭治郎の気さく過ぎる態度(馴れ馴れしいとも言う)も更にイライラを募らせる一因になっていたようです。

玄弥は早く『柱』になりたかった
©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

玄弥が炭治郎にイライラしていたのは、自分より先に上弦の鬼(遊郭での上弦の陸)を倒していたことに対する嫉妬もあったようです。

一方、炭治郎は『柱』になることや階級にこだわりはなく、目的はただひとつ「禰豆子を人間に戻すこと」、そこがブレることは決してありませんでした。

そして玄弥が早く『柱』になりたかった理由もただひとつ、「兄に会って謝るため」

「自分も『柱』になれば、兄貴もきっと認めてくれる。柱合会議で兄貴に会って直接謝ることができる」、玄弥はそう思っていたのです。

下の階級の隊士が柱に直接会う機会は滅多になく、炭治郎たちのように何度も柱と共に任務に就くのは稀なことだったようです。「彼らがメインキャラだから」と言ってしまえばそれまでですが・・・

一度は死を覚悟した玄弥

炭治郎は、「柱になりたい」と願う玄弥に上弦の肆の本体を追わせ、玄弥に頸を斬らせようとしました

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

この上弦の肆・半天狗の「本体」は、野ねずみ程度の大きさで、頸の太さは指一本程度。

にもかかわらず、玄弥の日輪刀は折れてしまいます。

そしてこの本体に苦戦して気を取られている隙に、後ろから上弦の肆の「分身」に自分の頸を狙われ、その瞬間、玄弥は走馬灯を見ます。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻
©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

玄弥だけが知る「過去の優しい兄の顔」と、自分を突き放す「今の厳しい兄の顔」でした。

玄弥
玄弥

兄貴に謝れないままここで死ぬと本気で思った。でも炭治郎が助けてくれて、命拾いしたんだ。

最後は里に集まった剣士たちによる総力戦

半天狗は斬れば斬るほど強さを増すとても厄介な鬼で、炭治郎、玄弥、そして禰豆子の3人は大苦戦を強いられます。

そこに現れたのが恋柱・甘露寺蜜璃と、先に同じ刀鍛冶の里で上弦の伍・玉壺(ぎょっこ)を倒していた霞柱・時透無一郎でした。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第13巻

蜜璃は半天狗の強力な分身のひとつと戦って足止めをし、炭治郎や玄弥たちを本体に向かわせました。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第14巻

そして無一郎は、戦闘中に刀を失った炭治郎に新たな刀を与え、半天狗にとどめを刺させています。

炭治郎
炭治郎

時透くんを止めに入っている怖い顔の男の人は、俺の刀を打ってくれている鋼鐵塚(はがねづか)さんです。本当はとってもイケメンらしいですよ。

兄弟が再会したのは「柱稽古」

実弥と玄弥が再会するのは、『刀鍛冶の里』での戦いの後に行われる『柱稽古』の場面です。

柱稽古とは、鬼殺隊員たちが柱の家を順に巡って稽古をつけてもらう特別な訓練のこと。

つまり、隊員たちが『柱』に直接会える機会ができたわけですね。

善逸
善逸

別に楽しみでもなんでもないぞ。実際は地獄だからな。

弟・玄弥を突き放すだけの兄・実弥

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第15巻

弟の話など全く聞こうとせず、はなから突き放すだけの兄・実弥。

玄弥はなぜそこまで兄が自分を拒絶するのか理解できません。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第15巻

頑張ってここまでやってきた弟を労うどころか、けなしまくりです。

とはいえ「見たところお前は」って、やっぱりちゃんと見てるんですよね、玄弥のことを。

兄がここで発した唯一の本音

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第15巻

「心底どうでもいい」、このセリフは兄・実弥の本音でした。

これは決して「玄弥のことがどうでもいい」という意味ではありません。

玄弥が「謝りたかった」と思っていたことに対し「そんなことは心底どうでもいい=俺はお前に言われたことなど全く気にしていない、謝る必要などないという意味だったのです。

義勇
義勇

不死川、お前も言葉が足りないようだな。

初めて一緒に戦った『上弦の壱・黒死牟戦』

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第19巻

玄弥は実弥よりも先に黒死牟のところに到着していました。

しかし、黒死牟は霞柱・時透無一郎でさえ歯が立たないほどの相手で、玄弥はほんのわずかな隙に両腕を切り落とされ、更には胴を割られてしまいます。

そこに現れたのが兄の実弥でした。

兄・実弥の弟への本当の想い

実弥はようやくここで、ずっと心の中に隠してきた本音を玄弥に語り始めます。

何のために俺が、母親を殺してまでお前を守ったと思ってやがる。テメェはどっかで所帯持って、家族増やして爺になるまで生きてりゃあ良かったんだよ。お袋にしてやれなかった分も、弟や妹にしてやれなかった分も、お前がお前の女房や子供を幸せにすりゃあ良かっただろうが。

コミック第19巻
©吾峠呼世晴/集英社 コミック第19巻

弟を危険な目に遭わせたくなかった

必死で頑張っている玄弥に「鬼殺隊を辞めろ」と言っていたのは、弟を認めていないからではなく、大事な弟に死んで欲しくなかったからだったのです。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第19巻

これまでのどの場面よりも怒りを爆発させている実弥は、鬼殺隊の柱というより、玄弥の兄としての顔になっていますね。

「鬼喰い」ができる玄弥は、体を再生して戦いに復帰

胴を割られてしまったら、普通の人間ならば絶命してしまいます。

しかし「鬼喰い」という特殊な能力を持っていた玄弥は、鬼の能力のひとつである「肉体の再生」が可能でした。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第20巻

無一郎に頼んで黒死牟の髪を食べさせてもらうと、玄弥の両腕と胴は元通りにつながり、より強い肉体になったようです。

同時に鬼化も進行し、鬼舞辻無惨の声まで聞こえるようになっていました。

弟・玄弥の兄への想い

上弦の壱・黒死牟は、実弥と岩柱・悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)の二人の戦いぶりを見て、この二人が柱の中でも実力上位者であることを確信します。

しかしその実力上位の二人で挑んでも、黒死牟の方が優位であることは明らかでした。

つまり、すでに片腕を失っていた無一郎と、実力で劣る玄弥も加わらなければ、勝てない状況だったのです。

いちばん弱い自分ができること

このとき玄弥は、戦いの役に立てない自分の弱さに腹が立っていました。

しかし、炭治郎に言われたことを思い出します。

「いちばん弱い人間が、いちばん可能性を持ってるんだよ。(中略)敵からの警戒の壁がうすいから、その弱い人が予想外の動きで壁を打ち破れたら、一気に風向きが変わる。勝利への活路が開く

コミック第20巻

そして玄弥は鬼化の進んだ自身の特性を生かし、血鬼術で黒死牟の動きを封じました。

しかし、黒死牟は体を固定された状態からでも技を放ち、無一郎は胴を両断され、玄弥は頭部を割られてしまいます。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第20巻

無一郎と玄弥の二人は、そんな状態でありながらも最後の力を振り絞って黒死牟を倒すことに貢献しますが、やはり致命傷には変わりなく、命を落とすことになります。

最後に兄に伝えたこと

体の鬼化が進んだ(=戦闘力が増した)おかげで黒死牟戦の勝利に貢献できた玄弥でしたが、皮肉にも、そのせいで死が近づくと鬼と同じように体の崩壊が始まってしまいます

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第21巻

実弥の絶叫の中、玄弥は兄に伝えたかったことを最後に口にします。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第21巻

「誰より辛い思いをたくさんしてきた兄ちゃんには、幸せになってほしい、死なないで欲しい」

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第21巻

ずっと兄から拒絶されて言えなかったことを、玄弥はようやく伝えられたのでした。

そしてこの直後、玄弥の体は完全に消滅してしまったのです。

戦いのその後

死にかけて夢を見た実弥

上弦の壱・黒死牟を倒した後、実弥は鬼舞辻無惨との最後の戦いに挑みます。

そして皆の力で無惨を倒しましたが、実弥は意識を失い、家族が出てくる走馬灯を見ます。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第23巻

母親と玄弥に対する愛情がとても伝わってくるシーンですが、それをある人物に邪魔をされます。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第23巻

あちらの世界にいた父親が、息子を死なせないために突き放したのです。

そしてこの後、実弥は意識を取り戻したのでした。

禰豆子との再会

最後まで生き残った実弥は、決戦後しばらくして訪れた蝶屋敷で、かつて本気で殺そうとしていた禰豆子にばったり会い、バツ悪そうな顔を見せています。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第23巻

しかし、禰豆子は実弥のことを恨んでなどいませんでした。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第23巻

禰豆子の無邪気な笑顔を見て、弟・玄弥のことを思い出す実弥。

鬼を殲滅して平和な世にはなりましたが、いちばん守りたかった弟を死なせてしまった悲しみが消えることはありません。

©吾峠呼世晴/集英社 コミック第23巻

それでも、禰豆子が人間に戻って元気に生きてくれていることは「本当に良かった」と心から思っているのだと思います。

まとめ

弟・玄弥は、一度兄に助けてもらっていましたので「今度は自分が守る」と強く思っていて、その気持ちはとてもよくわかります。

しかし、兄・実弥にとっては「どんなときでも弟を守るのは当たり前」で、弟に守ってもらうことなど全く考えていなかったでしょう。

それなのに、自分の命より大事だった弟は、自分の目の前で消滅

兄と弟、どちらの愛情が強いか比べるのは全く無意味ですが、それでもやはり親子と同じように「年齢の序列」を無視して下の子が先に亡くなってしまうのは、年上の者としては「より辛い」のではないかと思います。

個人的には、この不死川兄弟のところが、この物語の中でいちばん悲しく感じたエピソードでした。

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