「俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば、後輩の盾となるのは当然だ。柱ならば、誰であっても同じことをする。若い芽は摘ませない」
コミック第8巻
無限列車編で、煉獄さんが炭治郎に言ったセリフです。
そしてその後のストーリーを見ていきますと、煉獄さんの言ったとおりのシーンがたくさん描かれていることがわかります。
そこで今回は、その「柱が後輩の盾となったシーン」を、順番に紹介していきたいと思います。
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「柱が後輩の盾になる」とは?
煉獄さんは、無限列車編で「盾になる」という状況を2つ作っていました。
①体(命)を張る
文字通り、己の体を張って後輩たちをかばい、守ることです。
②後輩をバックアップする
「柱」は、後輩たちを守るだけではなく、彼らの成長を促す役目も担っています。
後輩たちでも戦える状況・相手であれば、経験を積ませるために柱自身はバックアップに回ることもあります。
そしてそれは後輩たちを強くすることにつながり、結果的に彼らを守ることにもなるのです。
柱たちが「盾」となった実際のシーン
では、柱たちは実際にどのように後輩たちの盾となっていたのか、順に見ていきましょう。
炎柱・煉獄杏寿郎『下弦の壱・魘夢(えんむ)戦』
無限列車編での魘夢戦で、煉獄さんは炭治郎と伊之助の二人に鬼の頸を狙わせ、自分は乗客を守ることに徹していました。
二人に「十二鬼月の頸を斬る」という大きな経験を積ませるために、自分はバックアップに回ったのです。
煉獄さんは、魘夢と直接顔を合わせていませんので、今戦っている鬼が『下弦の壱』ということは知らなかったと思います。それでも、強くて巧妙な血鬼術を扱う鬼であることから、「十二鬼月であることは間違いない」と確信していたと思います。
実はいちばん責任重大な役割だった煉獄さん
炭治郎は、「一人で守るのは2両が限界だ」と言っていました。
しかし、煉獄さんは5両も守ってくれていたのです。
そのバックアップがなければ、たくさんの乗客が魘夢に喰われていたでしょうし、力を増した魘夢に対し、炭治郎と伊之助が頸を斬ることもできなかったかも知れません。
魘夢が最後にこう言っていることからも、実際に頸を斬ってとどめを刺したのは炭治郎と伊之助でしたが、自分の計画に対するいちばんの妨げとなったのは、やはり「柱」だったと感じていたのでしょうね。
炎柱・煉獄杏寿郎『上弦の参・猗窩座(あかざ)戦』
ここでの煉獄さんは、一人で猗窩座に立ち向かい、文字通り後輩の「盾」になっています。
おそらくですが、炭治郎が怪我をしていなくても、この戦いには参加させていなかったのではないでしょうか。
その理由は、ここで伊之助が感じているとおりです。
この場で猗窩座の相手ができたのは煉獄さんだけ
煉獄さんは猗窩座の強さをすぐに感じ取り、その相手ができるのは柱である自分だけだと認識します。
最悪、相打ちに持ち込んででも猗窩座を止めなければ、後輩たちは間違いなく殺されてしまうと。
このときの煉獄さんは、上弦の鬼と戦うということがどれだけ過酷で、どれだけの覚悟が必要なのかを、後ろで見ている後輩たちにその身をもって示してくれました。
そして最後まで戦い抜き、後輩も乗客も全員守り抜いたのです。
音柱・宇髄天元『上弦の陸・妓夫太郎(ぎゅうたろう)&堕姫(だき)戦』
宇髄の場合は、実際に戦いが始まる前に、後輩たちに「ここを出ろ」と言っています。
鬼がいることを確信して遊郭に連れてきたものの、その巧妙な身の隠し方から、潜んでいる鬼が上弦ではないかと思い至り、もし本当にそうであれば、炭治郎たちでは歯が立たないと判断したからです。
勝てないとわかっている相手に後輩をぶつけることはできない
強くなるためには、強い相手と戦うことも必要です。
しかしあまりに実力が違いすぎる場合は別で、これからまだまだ成長していく「若い芽」を摘ませるわけにはいかないと、宇髄も煉獄さんと同じように思ったのでしょう。
それでも、善逸が行方不明な状況で遊郭を出るわけにはいかなかった。俺と伊之助はそこにとどまることを選んだんだ。
後輩に経験を積ませながら、盾にもなった
上弦の陸は、妹の堕姫と兄の妓夫太郎、二人でひとつで、両方の頸を斬らなければ倒せない相手でした。
やや弱い方の「妹・堕姫」とは善逸と伊之助が戦い、強い方(本体)の「兄・妓夫太郎」に対しては自分が前に出る形で炭治郎と共に戦っていました。
そしてこの直後、炭治郎は妓夫太郎の頸を斬り、一方で伊之助と善逸が堕姫の頸を斬り、上弦の陸を倒したのです。
恋柱・甘露寺蜜璃『上弦の肆・半天狗戦』
蜜璃は、炭治郎・禰豆子・不死川玄弥の3人よりも少し遅れて上弦の肆・半天狗戦に参戦しています。
そして、彼らを守るべく技を放つのですが、実はそのとき狙った鬼が上弦の肆の本体ではない(=頸を斬っても死なない)ことを途中で知らされ、一瞬戸惑った隙に、鬼の技をまともに喰らってしまいました。
そのとき肉体はなんとか持ちこたえたものの、意識が飛んでしまいます。
まず後輩たちが自分の「盾」になってくれた
自分を守るために後輩たちが「盾」となり、その瞬間に意識を取り戻した蜜璃。
煉獄さんの言葉を借りれば「柱として不甲斐なし」な状況で、改めてそこから後輩たちを守るために本領を発揮します。
自分が分身を足止めさせ、後輩に本体を追わせた
分身とは言え、目の前の鬼は強敵でした。
しかし、ここで何人もの剣士を注ぎ込んでしまっては、肝心の本体の頸が狙えません。
そこで蜜璃は後輩たちに本体の頸を斬らせるために、自分がバックアップに回ることを決意したのです。
すでに上弦の鬼との対戦経験があった炭治郎と禰豆子の力を信じていたのかも知れませんね。
蟲柱・胡蝶しのぶ『上弦の弐・童磨戦』
しのぶは、姉の胡蝶カナエを童磨に殺されていました。
そして姉の仇を打つために考えた作戦が、自分の体を毒で侵し、その体ごと鬼に取り込ませて毒を注ぐ、というものでした。
カナヲにはそれをさせなかった
しのぶの作戦を聞いた栗花落カナヲは、自分も同じ方法(自分の体を毒で侵す)で戦うと申し出ます。
しかし、しのぶはすでに1年以上前からその準備をしており、カナヲには間に合わないと言い聞かせます。
ただ、もし時間があったとしても、しのぶがカナヲに同じことをさせたとは思えません。
鬼と戦う前に自分が毒で弱ってしまう危険性も十分にあったからです。
カナヲには別の役目を与えた
しのぶは、自分が鬼に取り込まれてしまったら、カナヲが一人で童磨と戦うことになる可能性が高いことをわかっていました。
しかし、たとえそうなったとしても、自分が毒で鬼を弱らせることができたら勝機はあると考えていたのだと思います。
結果的に、童磨戦では途中から伊之助が参戦してくれたことで、カナヲと二人で頸を斬ることに成功しました。
しのぶはとどめを刺す役目を後輩に託して自らが犠牲となり、同時に最大限のバックアップをしたことになりますね。
霞柱・時透無一郎『上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)戦』
無一郎は、無限城でいちばん最初に上弦の壱・黒死牟と遭遇しました。
しかし他の剣士たちが到着する前に左腕を切断されてしまいます。
その後は仲間のバックアップに回ることを決意
片腕となった無一郎は、両手が使える剣士たちのために動こうと決意。
しかし、まだ柱ではない玄弥には、両手があっても黒死牟の動きを封じることは難しいと考え、自らがその役目を担ったのです。
悲鳴嶼さんと不死川さんも一緒に戦っていたけど、黒死牟はその二人が柱の中で上位と気付いていて、そこに神経を注いでいた。だから、いちばん警戒が薄く、離れたところからでも攻撃ができる玄弥に頼んだんだ。
自らが「盾」となり、後輩の攻撃の背中を押した
玄弥にはっきりと言葉で伝えたことも、無一郎は柱として立派な態度だったと思います。
実際に玄弥の撃った銃の弾が当たったのは黒死牟だけでしたが、もし無一郎からの言葉がなければ、玄弥はそもそも撃つことができなかったでしょうから、これも無一郎の覚悟の結果と言えますね。
蛇柱・伊黒小芭内『鬼舞辻無惨戦』
伊黒は、ストーリー上は鬼舞辻無惨戦が最初で最後の活躍の場となりました。
そのため、無惨戦では他の柱たちに比べ、伊黒の活躍場面が多く見られます。
炭治郎をかばって両目を失明
もし炭治郎がこの鬼舞辻からの攻撃をまともに喰らっていたら、おそらく致命傷になっていたと思われます。
しかしとっさに伊黒が盾となって守ってくれました。
ただ、炭治郎を守ることを第一に考えて動いた結果、自身の目は傷つき、失明してしまいます。
俺は元々片目が弱視で、他の剣士に比べて視力への依存度は低かった。俺には蛇の鏑丸がついていてくれるから問題ない。
終盤は全身で炭治郎の盾となる
鬼舞辻無惨は斬られても瞬時に再生するという反則級の体を持っていましたが、珠世としのぶが共同開発した薬によってだんだん肉体が弱体化し、再生速度も遅くなっていきました。
そして終盤、風柱・不死川実弥からの攻撃で頭から真っ二つに斬られたときは、その顔面がパックリ割れています。
しかし、その切断面から牙のようなものが生えるという、これまた反則な状態になり、そのときすぐ目の前にいた炭治郎が挟まれそうになります。
そこに、また炭治郎の盾となるべく間に入ってくれたのが伊黒でした。
さすがにこれが伊黒の最期かとも思えたのですが、実際はその後もまだ攻撃をする場面があり、肉体の力を超えた「柱の精神力の強さ」を見せてくれています。
岩柱・悲鳴嶼行冥と水柱・冨岡義勇『鬼舞辻無惨戦』
伊之助の言うとおり、このセリフの少し前に、左足を切断された悲鳴嶼さんと、右腕を切断された義勇の姿がありました。
後輩たちを守るために、自分たちの体を犠牲にしたということですね。
尚、柱がかばいきれず、鬼舞辻の攻撃をまともに喰らってしまった剣士たちは瞬殺されています。
炭治郎に片腕を与えた義勇
炭治郎は、伊黒にかばってもらった後に無惨から攻撃を受け、左手を失っていました。
しかし、右手だけしかなくて力が足りない炭治郎に義勇の左手が加わり、二人の手で刃を赫(あか)く染めて無惨にダメージを与えています。
肉の鎧で巨大化した無惨を止めた悲鳴嶼さん
無惨は、自身の体が陽光で消滅するのを少しでも遅らせるため、肉の鎧を作って巨大化。
そして逃げようとしたところを、片足を失った悲鳴嶼さんが隠(かくし)たちと一緒に止めようとしています。
更に義勇、実弥、伊黒と次々に柱たちが技を放ち、最後は(肉の鎧に取り込まれながらも)炭治郎が握っていた赫刀がとどめとなり、その場から逃れられなかった無惨は消滅したのでした。
戦いの後も、自分より後輩を想っていた悲鳴嶼さんと義勇
片足を失っていた悲鳴嶼さんは、すでに自分が助からないことを悟っていて、隠たちに自分の治療をやめるように言っています。
このセリフが言えるのも、やはり最後まで柱として仲間を、後輩を守りたいとの強い想いを持っていたからなのでしょうね。
義勇はまだ自分で歩ける力が残っていましたが、重傷には変わりなく、早く治療しなければ悪化する恐れもありました。
それでも、自分の目の前で無惨の肉の鎧の中へ取り込まれてしまっていた炭治郎を心配し、その姿を探しています。
炭治郎を鬼殺隊へと導いたのは義勇ですので、その責任も感じていたのでしょうね。
まとめ
無限列車編で、煉獄さんが「柱ならば誰でも同じことをする」と言ったときは、まだ他の柱たちが後輩と関わってきた場面が少なかったため、正直、あまりピンときませんでした。
しかしストーリーが進むにつれ、柱たちは単に鬼を倒すだけではなく、後輩たちを守るため、そして育てるために、いろいろなことを考えなくてはならない立場でもあるということがわかってきます。
このお館様の言葉には、実際のセリフ以上の深みがあったことを、柱たち自らが証明してくれたのでした。
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