【鬼滅の刃】霞柱・時透無一郎といえば、最年少で、たった2カ月で柱まで上りつめた天才剣士です。
鬼殺隊の入隊前の記憶を失っていましたが、物語の途中、上弦の伍・玉壺(ぎょっこ)との戦いや主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)との交流の中で霞が晴れるように記憶が蘇り、本来の自分を取り戻します。
今回は、記憶を取り戻してからの無一郎が、どのように戦い、そして、どのような最期を迎えたのかを解説します。
無一郎の最後:プロローグ
竈門炭治郎が水柱・富岡義勇(とみおかぎゆう)を訪ねた晩、鬼殺隊の本部・彦屋敷邸に鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)が現れます。。
お館様である、彦屋敷耀哉(ひこやしきかがや)は、無惨と彦屋敷一族が同じ血筋であることを伝えます。
無惨が鬼となったせいで、一族は呪われ、子供は皆病弱で子孫は絶えかけたことなどをひとしきり話しますが、無惨には全く響きません。
そして、お館様は、”君が死ねば全ての鬼が滅ぶんだろう?”と無惨と鬼たちの関係の核心に迫ります。
その同時刻、鎹鴉(かすがいがらす)の招集で、柱たちは皆、彦屋敷邸に向かい急いでいました。
皆が屋敷に着く目前で、彦屋敷邸が大爆発を起こします。
全ては耀哉と行冥、そして珠世の作戦でしたが、無惨は頸を飛ばしても死にません。
柱たちが到着すると、行冥は目の前にいる者が宿敵の無惨だと皆に伝えます。
ここから、戦いは鬼の根城である無限城へと舞台を移します。
静かにしていた鬼たちの始祖・鬼舞辻無惨が鬼殺隊本部の彦屋敷邸を訪れ、物語が急速に動き始めました。
逸る気持ちで駆けつけていた無一郎も、他の柱の面々も、目の前で爆発が起き、相当なショックを受けている中での宿敵・鬼舞辻無惨との対面です。
無一郎の最後:お館様との別れ
炭治郎は義勇、蛇柱・伊黒小芭内(いぐろおばない)は恋柱・甘露寺蜜璃(かんろじみつり)、行冥は無一郎と共に行動します。
無一郎は行冥にお館様の安否を確認します。
そして、自ら囮(おとり)となり先に天国へと旅立たれたことを知ると、父のようにいつも気にかけていてくれたお館様も、自分の双子の兄・有一郎(ゆういちろう)も無惨に奪われ、闘志を燃やします。
両親を亡くし、兄も鬼に襲われ、記憶を失くすほどのショックを受けていた無一郎。
失意の中、父のようにいつも見守り励ましてくれたお館様が自分を犠牲にし無惨への執念を見せたものの、無惨を倒すことができず、本当に悔しい気持ちでいっぱいの様子です。
無一郎の最後:上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)との闘い
行冥と行動を共にしていた無一郎でしたが、上弦の肆(し)・鳴女(なきめ)の血鬼術で違う部屋に飛ばされてしまいます。
そこにいたのは、上弦の壱・黒死牟でした。
黒死牟は、無一郎を見ると懐かしい気配だと言い出します。
一方、無一郎は生まれて初めての怖気(おぞけ)を感じ、体が戦闘を拒否しているのを感じます。
どんな相手にもひるむことなく戦ってきた無一郎の初めての感覚。
ブルブルと震える様子は、第六感で何かを感じ取っていたのかもしれません。
そして、黒死牟は、自分の人間の時の名が”継国巌勝(つぎくにみちかつ)で、無一郎は自分の子孫だと語り出します。
無一郎は、自分が黒死牟の子孫だと聞き、以前に彦屋敷耀哉のお内儀のあまねに聞いていた、”始まりの呼吸の剣士”が黒死牟なのかと動揺しますが、呼吸を整え、霞の呼吸・弐ノ型八重霞を出します。
その後、無一郎は痣を出現させ、漆ノ型・朧(おぼろ)を繰り出しますが、黒死牟の月の呼吸・壱ノ型・闇月・宵の宮の攻撃により、左手を切断されてしまいます。
自分の子孫だとわかっているのに、攻撃し負傷させるなんて、今更ですが本当に狂った考えです。
同じ血が流れている者同士が敬い合うのではなく、傷つけ合うなんて、悲しすぎますね。
黒死牟は、無一郎の闘志を褒めながらも、刀を返し、無一郎の体を柱に串刺しにします。
さらには、「あのお方にお前を鬼として使って戴こう」とまで言い出します。
柱の陰で攻撃の機会を伺っていた、不死川玄弥(しなずがわげんや)に気づいた黒死牟は、玄弥の銃口を持つ左腕、さらに右腕を切断、そして胴体までも切断してしまいます。
玄弥は剣士としての才能がないと追い詰め、鬼を食べてしまいます。
そのことで特異体質になったので、切断されても生きていますが絶体絶命の状態です。
黒死牟は、鬼とはいえ元鬼殺隊なのに、本当にむごいことをし、許せない気持ちになります。
人間腐るとどこまでも下劣なことをする人がいますが、その時点で鬼と同等ですね。
無一郎の最後:風柱・不死川実弥(さねみ)
そこへ、すかさず、ある人物が技を繰り出しながら現れます。
玄弥の兄で風柱の不死川実弥です。
何の為に俺がァ 母親を殺してまでお前を守ったと思ってやがる
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第19巻
ぶっきらぼうで、不器用な実弥らしい、照れ隠しの暴言の中に深い思いやりの気持ちが込められています。
以前、玄弥のことを弟じゃないと言ったのも、鬼殺隊に入って欲しくなかったから、心配で仕方がなかった思いの裏返しだったのですね。
本当に優しいお兄ちゃんです。
実弥:テメェはどっかで所帯を持って家族を増やして爺になるまで生きてりゃあ良かったんだよ
お袋にしてやれなかった分もお前が お前の女房や子供を幸せにすりゃあ良かっただろうが
そこには絶対俺が鬼なんか来させねぇから…
玄弥:ごめん兄ちゃん…ごめん……
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第19巻
ここから、激しい攻防が繰り広げられ、実弥も黒死牟の技に必死に食らいつきます。
けれど、黒死牟も対抗し、月の呼吸・陸ノ型・常夜孤月・無間(ろくのかた・とこよこげつ・むけん)で実弥の体を斬り裂き、血が大量に流れ出します。
黒死牟ももはやこれまでと思った瞬間、実弥は「猫に木天蓼(またたび) 鬼には稀血(まれち)」と言って力一杯、技を繰り出します。
稀血に酩酊しながらも、黒死牟も実弥の動きには驚きを隠せずにいました。
そんな激しい戦いの最中、実弥は昔のことを思い出していました。
鬼殺隊になった時の親友・粂野匡近(くめのまさちか)と二人で下弦の壱を倒すも、匡近は亡くなり、実弥は柱となります。
さらには柱になって初めての柱合会議では眺めているだけのお館様に不満を持ち、盾突く場面も。
けれど、お館様から匡近の遺書を渡され、その内容に涙します。
そして、親友の匡近のことも把握し、彼の遺書を用意していたこと、内容もしっかり把握していたことに感銘を受けます。
実弥は、お館様が実弥に謝罪をし優しい眼差しを向けた時、母親を思い出し、言葉が詰まります。
匡近の”生き抜いて欲しい”とのメッセージに涙する優しい一面も、グッと胸が詰まります。
黒死牟の攻撃に、今度は実弥が頸を斬られそうになりますが何とか阻止します。
さらに月の呼吸を出す黒死牟の前に、岩柱・悲鳴嶼行冥が現れます。
無一郎の最後:岩柱・悲鳴嶼行冥
実弥に自分の手当てをするように指示を出し、黒死牟に立ち向かいます。
行冥と黒死牟の攻防は激しく、黒死牟の刀を折るもすぐ再生してしまいます。
無惨との闘いに備えていた秘策を見せる行冥の両腕に痣が出現します。
鳴女の血鬼術で無一郎と離れてしまっていましたが、行冥は探し駆けつけてくれました。
そして、お館様・珠代亡き今、ものすごい責任感を背負って、技を次から次へと繰り出し、痣が出現します。
黒死牟に痣の出現での寿命の話をされても、全くひるまず”承知済み”とし、さらに例外で生き延びた者がいたことを見抜きます。
年長者の器の大きさや覚悟を感じます。
無一郎の最後:壮絶な戦い
その頃無一郎は、柱の拘束に使われてしまっている自らの刀を必死に柱と自分の肩から、自力で引き抜こうとします。
自分のケガが重いこと、数時間で失血してしまうことなどを判断し、せめて黒死牟だけでも倒さなければと立ち上がります。
残酷で過酷な状況に胸が痛むシーンです。
重篤なけがを負っているにもかかわらず、人を思いやり、行動する原動力は一心に鬼を倒す、鬼舞辻無惨を倒すことなのでしょう。
そして、玄弥も実弥を助けたい一心で黒死牟の落とした髪の毛を食べます。
するとどこからか無惨の指示する声が玄弥にも聞こえ始めます。
お腹の傷を自分で縫った実弥にも痣が出現し、行冥を援護し、黒死牟との激闘を始めました。
さらに無一郎が加わります。
内側に 間合いの内側に入れ 一瞬でもいいほんの一瞬でも上弦の壱の動きを止められたら
ほんの少しでも攻撃の手を緩めることができたなら
悲鳴嶼さん不死川さんのどちらかが奴の頸を斬ってくれる 必ず!!
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第20巻
無一郎は、片腕を失い自分に残された時間がほとんどないと自覚する中で、役に立てるうちに動けと自分に言い聞かせて必死に動きます。
それを感じた行冥と実弥がタイミングを計り、そして無一郎が間合いの内側へと入っていきます。
無一郎が黒死牟の腹部に日輪刀を突き刺します。
黒死牟は、無一郎にも行冥にも自分と同じ体が透き通るように見えていることに気が付きます。
そして、玄弥は遠くから黒死牟に銃口を向けます。
玄弥 撃っていいから 構わなくていいから
俺が上弦の壱の動きを止められたら 俺もろとも撃っていいからね
絶対に躊躇するなよ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第20巻
無一郎から悲しい指示を受けた玄弥もつらいですが、この状況で、無一郎の覚悟の攻撃を無駄にすることもできないという、本当に究極の選択を迫られています。
見るだけで辛いです。
玄弥が放った銃からでた玉は生き物のように方向を変えて黒死牟の体にめり込みます。
そして、玉から木が生え、あっという間に黒死牟の体を固定します。
この木は黒死牟の一部を食べた玄弥の血鬼術でした。
その隙に行冥はすかさず黒死牟の頸に迫ると黒死牟は昔のことを回想します。
それは自分の双子の弟・継国縁壱のことでした。
特別な存在の弟に対する激しい嫉妬心を感じますが、突然訪れた縁壱の寿命により、刀を合わせることなく永遠の別れがやってきます。
黒死牟は叫び声を上げ、そこから斬撃を繰り出します。
黒死牟の体からいくつもの刀が飛び出し、数の分だけ、攻撃を放ちました。
無一郎は胴体を切り離され、瀕死の状態に…。
だめだ 悲鳴嶼さんも不死川さんも死ぬまで戦う だけどこの二人まで死なせちゃいけない
まだ無惨が残ってるんだ みんなの為にもこの二人を守らなければ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第20巻
このような状況でまだ、無一郎がさらなる覚悟をする場面です。
胴体が切断されても尚、仲間のためにできることを考えている無一郎。
まだ十四歳で自分の死を感じながら戦う無一郎に本当に胸が痛いです。
無一郎が刺した刀を強く握ると刃が赤く染まり、灼けるような激痛が黒死牟を襲います。
そこに実弥、そして倒れていた玄弥の残りの銃弾に血鬼術を使い、行冥も頸を狙い続けます。
赤い刃による痛みから、その赤い刃から縁壱との会話を思い出します。
後継をどうするのかと問う巌勝(黒死牟)に、縁壱が答えた言葉が戦闘中の黒死牟の耳に囁きます。
いつか これから生まれてくる子供たちが 私たちを超えて さらなる高みへと 登りつめてゆくんだ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第20巻
己が負けることを何より許せない、認められない黒死牟。
行冥は実弥に無一郎と玄弥の命をかけた最後の攻撃を無駄にしないよう、攻撃の手を緩めず畳みかけるようにと叫びます。
それを受け、実弥も泣きながら技を繰り出します。
行冥、実弥の技が黒死牟の頸を落とします。
けれど、負けを認めず、頸を再生、体も先程までとは違う恐ろしい姿になる黒死牟。
向かってくる実弥の刀に映る自分の姿を見た黒死牟は驚愕します。
幼い日の縁壱が巌勝に問います。
兄上の夢はこの国で一番強い侍になることですか?
俺も兄上のようになりたいです 俺はこの国で二番目に強い侍になります
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第20巻
自分の望みだった侍の姿とはかけ離れた醜態に愕然とする黒死牟。
すると、無一郎に刺された場所から黒死牟の体が崩れ始めます。
そこでやっと、それでもなお、自分の負けを認めない自分自身の醜さを理解し始めます。
頸を落とされ体を刻まれ潰され 負けを認めぬ醜さ 生き恥
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第20巻
自分自身に問う黒死牟は、塵となり消えそうな瞬間、自分はただ弟の縁壱になりたかったということに気が付きます。
無一郎の最後:エピローグ
黒死牟が塵と消えていく中、実弥は攻撃やめようとせず、向かって行きます。
行冥が止めに入ると実弥は意識を失いながらも動き続けていました。
玄弥は半身を失って、余命幾ばくもない状態ですが、無一郎と実弥の安否を気遣います。
行冥は実弥をそっと玄弥のそばに寝かせ、無一郎の元に。
けれど、力尽きた無一郎はすでに絶命していました。
仲間のために、必死に自分を奮い立たせて、死をも乗り越えるような勢いで頑張り続けた無一郎に胸が痛みます。
気力だけで頑張り続けている姿は本当に仲間への思いやりだけで動いています。
自分を犠牲に仲間や後輩を守る姿勢は、柱たるものの使命とはいえ誰にでもできることではない尊い心だと思います。
無一郎が目を開けると兄・有一郎が目の前に…。
有一郎:こっちに来るな 戻れ
無一郎:どうして? 僕は頑張ったのに…褒めてくれないの?
有一郎:どうして?こっちが聞きたい 逃げれば良かったんだ お前はまだ十四だぞ
無一郎:仲間を見捨てて逃げられないよ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第21巻
さらに、有一郎はお前が死ぬことなんてなかったと責め、生まれた意味もない、無駄死にだと言い放ちます。
有一郎も決して意地悪やけなすつもりで言っているのではなく、誰よりも心配で心配のあまりきつく当たってしまう、亡くなった時の十一歳のままの少年なのです。
そして、それから3年ほど生きた無一郎は兄さんの方がずっと可哀そうだと兄のことを思いやります。
そして、自分が生まれてきた意味、それを自分でちゃんとわかっていると、有一郎の前ではっきりと断言します。
そして、有一郎にも問います。
兄さんもそうでしょう?違うの?幸せじゃなかった?幸せな瞬間が一度もなかった?
僕は幸せだったよ 家族四人で暮らしていた時も
一人ぼっちになってからつらいことや苦しいことがたくさんあったけど
仲間ができて 僕は楽しかった また笑顔になれた
幸せだと思う瞬間が数え切れない程あったよ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第21巻
どんなことからも目をそらさず、仲間のために命をかけたことを後悔していないとも。
そして有一郎だけは無駄死にだと言わないで欲しいと懇願します。
最後の最後に最愛の兄・有一郎と、本当の意味で心から打ち解けることができて、本当に良かったです。
ずっとずっと報われなかった無一郎の思いが報われた瞬間でもあります。
つらい経験ばかりが重なり、記憶障害にもなりましたが、仲間のおかげで記憶や本来の自分を取り戻せました。
さらには、仲間の大切さ、幸せを感じる瞬間を数えきれないほど感じることができてから亡くなったのはせめてもの救いです。
けれど、まだまだ楽しいことをたくさん積み重ねていってほしかったと思ってしまいますね。
まとめ
霞柱・時透無一郎の最後の時までの軌跡をご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
十四歳と若すぎる年齢にも関わらず、仲間のためにとの一心で頑張り続ける姿が健気で、見ていてつらくなる場面もあります。
無一郎が最期に見た景色は、最愛の兄と心から打ち解け抱きしめ合うという、無一郎の長年の願いが叶った瞬間でもありました。
”僕は幸せになる為に生まれてきたんだ”その一言に尽きます。
現実世界でも、人それぞれ色んな局面に立たされる場面があるかと思いますが、無一郎のこの言葉を思い出して、前を向ける、そんな気持ちになれることもあるかもしれません。
色々なキャラクターの様々な魅力いっぱいの鬼滅の刃を、引き続きお楽しみください。
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