『鬼滅の刃』において、最年少最短で柱となった天才剣士・時透無一郎。
物語の序盤では霞んだ記憶を抱え、無表情で理不尽な振る舞いの多かった無一郎ですが、記憶の霞が晴れると共に本来の自分を取り戻しました。
今回は、鬼滅の刃における時透無一郎の役割、作者のワニ先生が時透無一郎を登場させた理由について、考察していきたいと思います。
▼▼▼動画でもご覧いただけます▼▼▼
鬼滅の刃における時透無一郎の役割
ワニ先生が時透無一郎を登場させた理由①
鬼滅の刃における時透無一郎の役割として、1番に上がってくるのは、始まりの呼吸の剣士の子孫であることではないかと考えられます。
その出生により、無一郎はわずか2カ月余りで柱まで上り詰める剣技の才能を持ち、最年少の14歳にして、他の柱と対等に戦うことができました。
ワニ先生が時透無一郎を登場させた理由②
若干14歳の無一郎の女の子と見紛うような可愛らしい美少年なビジュアルも登場の役割の一つであると考えられます。
始まりの呼吸の剣士の子孫という境遇は、本来ならこの物語の主旨である鬼を滅殺することから考えると、主役級の存在です。
しかし、無一郎は主役ではなく、物語の序盤には失っていた記憶を取り戻し、これからというところで、無限城の戦いで自分の命を張って仲間を守り、亡くなってしまいます。
美人薄命を地で行く存在、その役割が無一郎にはあったのではないかと考えられます。
びじん-はくめい【美人薄命】
美しい人は、とかく病弱であったり、数奇な運命にもてあそばれたりして、短命な者が多いということ。▽「薄命」は不幸せの意。主に短命なことをいう。
美人薄命(びじんはくめい)の意味・使い方 – 四字熟語一覧 – goo辞書
ワニ先生が時透無一郎を登場させた理由③
壮絶な過去を持ち、そのあまりの壮絶さ故に記憶喪失となっている設定と本来の無一郎とのギャップ。
かつて、父親に言われた”人のためにすることは巡り巡って自分のためになる”と言う言葉を炭治郎に言われたことで、無一郎は霞が晴れるように記憶を取り戻しました。
双子の兄・有一郎が鬼に襲われ、鬼との戦い方もわからない当時の無一郎は無我夢中で対峙し、鬼が死にかけるレベルまで追い詰めました。
朝日により、鬼は塵となりましたが、最愛の兄の死を間近で見届けなければならないとは、11歳の無一郎にとっては記憶を失ってしまうほど、耐えがたい現実でした。
記憶を取り戻した無一郎は、柱稽古で炭治郎に天真爛漫な笑顔で語りかけるシーンもあります。
本来は明るく年相応の14歳らしい少年ですが、一方で天才的な剣技の才能を引き継ぎ、そしてその笑顔には見合わないほどの凄惨な過去を抱えている、このギャップが無一郎の役割でもあると考えられます。
ワニ先生が時透無一郎を登場させた理由④
無一郎が主人公の竈門炭治郎より年下で身体も小さいにもかかわらず、柱であること。
この設定により、無一郎の天才剣士ぶりが強調されると共に、全くの素人であり、炭売りの少年からの叩き上げで剣士を目指し、鍛錬を続けてきた炭治郎の成長も誇張されます。
無一郎は死後の世界で再会した兄・有一郎に”自分には笑い合える仲間ができ、楽しかった”と幸せな瞬間が数えきれないほどあったことを報告しています。
初めは炭治郎の上役として出会っていた無一郎がいつからか同志となり、共に笑い合える仲間となっていったこともワニ先生が伝えたかったことの一つなのではないかと思います。
もし、無一郎が黒死牟との戦いで勝ち、生き残っていたとしたら、きっと、伊之助や善逸と共に、ワチャワチャしながら、炭治郎と禰豆子の家で生活を共にしていたのではないでしょうか。
ワニ先生が時透無一郎を登場させた理由⑤
始まりの呼吸の剣士・継国縁壱の兄であり、上弦の壱・黒死牟(継国巌勝)と子孫である無一郎と対峙させること。
かつて自分が捨てた家族とはいえ、自分の血を受け継いでいる子孫である無一郎に出会った黒死牟は一撃で無一郎の左手首を斬り落とします。
”自分の細胞の末裔とは感慨深い”などと懐かしさを口にする言葉とは裏腹に、無限城の柱に無一郎を刀で串刺しにし、無一郎にも鬼となる道を勧める黒死牟の異常さと残酷さ。
一方、黒死牟との死闘に苦戦しながらも、負傷した自分の命に限りを感じ、死の瞬間まで命を懸けて仲間の力になろうと模索する無一郎。
全く相反する二人ですが、無一郎は渾身の一撃により赫刀を発現、玄弥の血鬼術や風柱・不死川実弥の援護もあり、岩柱・悲鳴嶼行冥が黒死牟の頸を斬り落としました。
死の直前、自分の私利私欲のみで頸を再生し醜い姿を晒した黒死牟と、仲間の為に命を懸けて戦い抜いた無一郎、同じ血が流れる二人の死に様は全く違うものとなりました。
鬼である黒死牟の異常さ、残酷さ、許しがたい罪深さを強調するための因縁の関係が必要だったと考えられます。
ワニ先生が時透無一郎を登場させた理由⑥
継国縁壱・巌勝(黒死牟)の双子の兄弟と同じ無一郎も双子での設定。
縁壱・巌勝の時代は双子は跡目争いの原因として不吉とされており、兄である巌勝と縁壱は大きな差をつけ育てられました。
巌勝も、縁壱の剣技の腕を目の当たりにするまでは、縁壱を庇う優しい一面もあり、その証拠に縁壱は死ぬまで、巌勝が作って渡した笛を大切に持っていました。
無一郎と有一郎は、毒舌な有一郎ですが、実は弟を自分が守らなければという強い意志故の厳しい言葉で、本来は弟思いの優しい兄でした。
有一郎は無一郎への心配から無一郎にきつく当たることはありましたが、そこには弟を守るという強い思いが一貫して存在しています。
縁壱はその後、始まりの呼吸の剣士となり、無一郎は自分ではない誰かの為に無限の力を出せる剣士となりました。
一方、巌勝は縁壱に対し、剣技の才に気づいてからは憧れの反面強烈な嫉妬心が付いて回り、現実や正義を見失い、終には鬼になってしまいます。
同じ双子での設定により、巌勝の身勝手さ、自己中心的思考の醜さがより強調され、そういうものを渇望し誤ると、やがて人間ではなく鬼となるという教訓へと繋がっていると考えられます。
まとめ
今回は、鬼滅の刃における時透無一郎の役割、作者のワニ先生が時透無一郎を登場させた理由について、考察してきましたがいかがでしたでしょうか。
まとめると
ワニ先生が時透無一郎を登場させた理由は
- 始まりの呼吸の剣士の子孫であること
- 女の子と見紛うような可愛らしい美少年なビジュアル
- 壮絶な過去を持ち、その壮絶さ故に記憶喪失となっている設定と本来の無一郎とのギャップ
- 主人公の竈門炭治郎より年下で身体も小さいにもかかわらず、柱であること
- 始まりの呼吸の剣士・継国縁壱の兄である上弦の壱・黒死牟(継国巌勝)と子孫の無一郎を対峙させること
- 継国縁壱・巌勝(黒死牟)の兄弟と同じく無一郎も双子であること
記憶を失いながらも、兄を目の前で殺された激しい怒りを体が覚えていた無一郎。
無一郎の最初の担当刀鍛冶の鉄井戸さんが心配するほどの鍛錬をし続け柱まで上り詰めた無一郎の心を思うと胸が痛みます。
その後、記憶を取り戻して、炭治郎達と心を通わせ、少しの時間ですが、仲間として楽しい時も過ごせました。
しかし、望めるなら、共に生き残って、自分の家族と過ごしたような普通の何気ない幸せをもっともっと感じて生きていて欲しかったと思ってしまいます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
引き続き鬼滅の刃をお楽しみください。
関連記事