霞柱・時透無一郎と刀鍛冶の少年・小鉄~刀鍛冶の里での戦いの後

時透無一郎(ときとう むいちろう)

刀鍛冶の里での戦いにおいて、失った記憶を思い出し、本来の自分を取り戻した無一郎。

里で出会った刀鍛冶の少年・小鉄が自分のことを顧みず、無一郎を救おうと懸命になる姿を目の当たりにしたことで、無一郎は過去の出来事を思い出し、記憶を取り戻しました。

今回は、小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束に描かれた、刀鍛冶の戦いの後の二人の様子について、ご紹介していきたいと思います。

霞柱・時透無一郎と刀鍛冶の少年・小鉄

刀鍛冶の里で、皆で勝ち取った勝利

©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第15巻 第127話

上弦の伍・玉壺を協力して討伐した無一郎と小鉄、上弦の肆・半天狗を協力して討伐した蜜璃らと共に、生きて勝利できたことを喜び合いました。

記憶を取り戻した無一郎に、仲間や友達という、それ以前の無一郎には無かった存在ができました。

©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第21巻 第179話

無一郎が命を落としてしまう無限城での黒死牟との戦いで、死の間際に双子の兄・有一郎に、この時のことを、楽しかったとまた笑顔になれたと伝える無一郎の様子があります。

わずか14歳にして、命を落としてしまう過酷な運命の無一郎の人生はとても辛いことが多かったですが、”幸せだと思う瞬間が数え切れない程あった”と有一郎に伝えました。

小鉄の使命

©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第12巻 第104話

炭治郎の修練用の戦闘訓練によって、完全に壊れた縁壱零式。

訓練の途中、小鉄は、壊す一歩手前で躊躇する炭治郎に、絶対直すから壊れてもいいと言い、縁壱零式を直すことを誓いました

小鉄は、それまで自分の才能に見切りをつけ投げやりになっていました。

しかし、炭治郎が”自分にできなくても必ず他の誰かが引き継いでくれる 次に繋ぐための努力をしなきゃならない”と説得され、改心したのでした。

この時から、戦闘用絡繰り人形・縁壱零式を自分の力で直すこと、これが小鉄の目標となり、使命となったことで、小鉄自身も努力を重ねる覚悟ができたようですね。

無一郎、小鉄を訪ねる

刀鍛冶の里での戦いの後、最初の刀鍛冶・鉄井戸さんのお墓参りに里を訪れ、さらに小鉄の元を訪れる無一郎の姿がありました。

上弦二体の襲撃で、里は鬼に知られ、移転を進めていました。

「ここは……」

無一郎が周囲を見まわす。そこは、小鉄と初めて出会った林だった。

天高く伸びた木々の下、少年は戦闘用絡繰人形・縁壱零式の前にぽつんと座っていた。

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

沢山の道具が散らばり重いため息をつく小鉄は、無一郎に気が付くと、仰天しますが、すぐさま無一郎の身体を心配します。

丸二日寝たから大丈夫と受け流す無一郎は、小鉄が何故里に残っているのか聞き出しました。

「縁壱零式の修理が終わってないので、行けないんです」

「僕が壊しちゃったから?」

すると、小鉄が慌てて頭を振った。

「いえ、そんな。確かに、最初に腕をもがれた時には、この恥知らずの昆布頭、切腹しろとか思いましたけど」

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

小鉄は、縁壱零式の六本ある腕の一本は無一郎によってもがれたものの、残りの五本で炭治郎の戦闘訓練をし、自分が直すことを誓ったくだりを無一郎に説明しました。

無一郎に”昆布頭”と命名する小鉄は、記憶を取り戻す前の無一郎と同格な位の毒舌ぶりですが、この二人の共通点でもありますね。

無一郎、小鉄に二人で縁壱零式を直そうと提案する

「二人で縁壱零式を直そう」

「大丈夫?時透さん。まだ、熱があるんじゃない?そういうこと言う人じゃないよね?

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

小鉄が自分の無能さで、人形の絡繰が直せず、さらに里が完全に移り終えるまでの二日間で直せなければ捨てていけと、里の長・鉄地河原鉄珍に言われたと告げました。

鬼に後をつけられない為、鬼との戦いに必要な日輪刀の作成場所である刀鍛冶の里を守る為、持てる物が限られているのも当然でした。

意気消沈する小鉄の言葉をさえぎり、無一郎は一緒に直そうと提案しました

以前の無一郎なら、手を貸そうなどと思いもしなかったですが、小鉄にとって、祖先の作った縁壱零式は亡き親の形見でもあり、家族同然の存在だと理解した上での発言でした。

無一郎、小鉄に礼を言う

二人で、縁壱零式の修繕に向け、作業をする中での休憩の合間。

自分には刀鍛冶の才能も、絡繰の才能もないと悲観する小鉄に対し、自分が10歳の時には刀も握ったことがないと話す無一郎。

自分の家族の話、そして、双子の兄・有一郎の話を伝えると、小鉄は有一郎も鬼殺隊にいて、まさか兄弟で柱なのかと尋ねました。

無一郎が有一郎は鬼に殺されて亡くなったこと、自分が鬼狩りになったのはその後のことだと告げると、小鉄は自分の失言に顔を青ざめ謝罪します。

©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第14巻 第118話

そこには何一つ、”自分”が存在しなかった。

滅死の心だ。剣士でもない鍛冶師の子供が、自分の命を犠牲にして自分以外の全てを守ろうとした。

「君の他人を思う心と炭治郎の言葉が、僕に大切なものを思い出させてくれたんだ」

「時透さん……」

「ありがとう」

ずっとお礼が言いたかった。

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

小鉄が自分の鳩尾を刺されているにも関わらず、無一郎を助けようと懸命になる姿に、無一郎は家族との思い出や自分の過去を思い出しました。

小鉄の自分より人を想う心に対し、自分が大切なものを思い出すことができたことのお礼を言うために、里を訪れ、小鉄を訪ねたことがわかりました。

無一郎は、自分を思ってくれていた最初の刀鍛冶・鉄井戸さんと小鉄にお礼を言うために、里を訪れていたことは、人を想う優しい心も取り戻したことがわかりますね。

無一郎と小鉄、友達になる

「甘露寺さんにとっては、ちょっぴりなんだよ」

山と積み上げられたおにぎりにたじろぐ小鉄に、無一郎が小声でささやく。

そんな二人の姿に、

「ウフフ。無一郎君と小鉄君ってば、すっかりお友達になったのねぇ

可愛いわぁ、と蜜璃が頬を染める。

「いえ、柱の時透さんと俺なんかとじゃー」

うん。友達だよ

わたわたする小鉄を尻目に、無一郎がさらりと言う。

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

大量のおにぎりの差し入れを持った恋柱・甘露寺蜜璃が無一郎の刀鍛冶の鉄穴森と共に登場。

大量のおにぎりを”ちょっぴり”と話す蜜璃に困惑する小鉄に無一郎が茶目っ気たっぷりに囁きました。

そして、そこから、以前の自分は間違っていたと話す無一郎。

©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第12巻 第102話

とんでもなく傲慢で、恥ずべき言動だった。

あの時は、小鉄がなぜ泣いたのか、炭治郎がなぜ、自分の手を払いのけたのかさえわからなかった。

配慮が欠けていると炭治郎に言われたが、まったくもってその通りだ。

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

無一郎は当時の自分を振り返り、鬼を狩るだけの絡繰人形だったと反省しました。

そして、小鉄と鉄穴森に向け、謝罪の言葉を続けました。

「今更だけど、君にー君たちに謝りたい」

ごめんと頭を下げると、小鉄の両肩が震えた。

うつむき、けんめいに何かをこらえている。

「僕は、君や鉄穴森さんの打った刀に救われたし、炭治郎は鋼鐵塚さんが研磨した刀に救われた。剣士も刀鍛冶も一緒に戦ってる。炭治郎が言った通りだった」

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

無一郎が切々と謝罪を続けると、小鉄もお面の顎先から涙を流し、鉄穴森さんも、鉄井戸さんが今の無一郎を見たらどれだけ喜ぶかとぐしゅぐしゅ泣き、蜜璃までもわーんと号泣しました。

無一郎の心が本来の姿に戻ったことを喜ぶ、優しさの連鎖が何とも微笑ましく嬉しいシーンです。

無一郎と小鉄の約束

「俺、零式を必ず直します。そしたら、必ず戦闘訓練に来てください」

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

鉄珍の設けた期限の最終日の夕方、縁壱零式は一つの型を再現できるまでは修繕することができました。

そして、小鉄は無一郎に、縁壱零式を完全に直し、無一郎の弱点をつく動きを組むから訓練に来て下さいと願い出ます

※実は、鉄珍の出した修繕期限に関しては、小鉄を思ってのある意図があるのですが、それは小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべにて、ぜひお楽しみいただくとして、割愛させていただきます。

「必ずですよ?必ず、来てくださいね」

「うん」

無一郎がうなずく。

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

さらに念を押す小鉄に、無一郎も答えます。

そして、蜜璃がさらに炭治郎や禰豆子、玄弥や鉄穴森や鉄珍、そして伊之助や善逸やカナヲみんなに声をかけ美味しいものを食べようと提案しました。

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束 挿絵

いつ叶うかもわからない約束。

不確かでなんの保障もない。

苛烈を極める鬼との戦いの中では、儚い程にもろい約束。

けれど、それはひどくやさしい光となって、無一郎の心を明るく灯した。

「きっとだよ。時透さん」

少年はそう言って、無一郎と蜜璃の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振っていたー

©吾峠呼世晴/集英社 小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束

この時すでに、刀鍛冶の里で痣を発現していた無一郎は、鬼狩りとして明日をも知れぬ身の上でもあり、生き永らえたとしても、二十五歳で寿命が尽きる状況です。

それでも、記憶を取り戻してからの無一郎は、兄や家族、自分を思ってくれた人たちの思いを胸に、悔いのないよう前に進む覚悟が感じられました。

この後訪れる無一郎や蜜璃の過酷な運命を思うととても切ない思いがしますが、心の通い合う仲間とかけがえのない時間を過ごし、優しいあたたかな約束があったことは二人の心の支えにもなっていただろうと思います。

まとめ

今回は、小説版[鬼滅の刃] 風の道しるべの第4話・明日の約束に描かれた、刀鍛冶の戦いの後の二人の様子について、ご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。

まとめると

  • 刀鍛冶の里の戦いの後、無一郎は、最初の刀鍛冶の鉄井戸さんのお墓参りと小鉄に対するお礼と謝罪のために里を訪れた
  • 小鉄は炭治郎との修練用の戦闘訓練で、自分が直すから、縁壱零式を壊してもいいから斬ってくれと言い、修繕することを誓った
  • 無一郎は、縁壱零式を一緒に直そうと小鉄に声をかけ、修繕の手助けをした
  • 小鉄は、縁壱零式が完全に直ったら、必ず戦闘訓練に来てくださいと提案し、無一郎と約束をした

最悪な最初の出会いから、共に戦い、生きて勝利を喜び合う仲間、そして、歳の近い共に戦う友達へと関係が変化していった無一郎と小鉄。

二人は、大切な家族を失っていることや毒舌なところなど、共通点もありました。

最後に二人がした約束のその後の詳細はわかりませんが、お互いに心を通い合わせ信じあえる仲間を持てたことはお互いがお互いにとってのかけがえのない存在となったことに変わりはありません。

生きている中で、そのような関係がいくつ持てるか、現代社会においても本当に信じあえる関係を築くことは難しいものですね。

小説版[鬼滅の刃]では、原作コミックには描かれていないエピソードが紹介されており、さらにお楽しみいただける内容となっておりますので、ぜひ手に取ってみてください。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

引き続き鬼滅の刃をお楽しみください。

この記事を書いた人

知れば知るほど魅力ある「鬼滅の刃」が大好きな1児の母です。
 
煉獄杏寿郎推しですが、他のキャラクタ―も魅力いっぱいなので、色々な角度からご紹介していけたら嬉しいです。

時透無一郎(ときとう むいちろう)
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