鬼に家族を殺され、鬼にされた妹・禰豆子を人間に戻す為、鬼殺隊に入った竈門炭治郎。
無限列車にて、初登場した上弦の参・猗窩座とは、その後、無限城での戦いで再度戦闘を繰り広げます。
今回は、猗窩座と炭治郎の関係性に焦点を当てて、その関係性の変化などをご紹介していきたいと思います。
猗窩座と竈門炭治郎
猗窩座の初登場シーン
無限列車に現れた下弦の壱・魘夢を協力して討伐した炎柱・煉獄杏寿郎と炭治郎がお互いの安否を確認し、炭治郎のケガを労っていると突如、轟音が…。
倒れている炭治郎に寄り添う杏寿郎の前に、まさかの上弦の参・猗窩座が登場、そして間髪入れず炭治郎へと襲い掛かりました。
”手負いの者からなぜ狙う”と卑怯なまねをする猗窩座を窘(たしな)めるように問う杏寿郎に、猗窩座は”話の邪魔になるから”と平然と答えました。
杏寿郎を鬼に誘うも、”既に君のことが嫌いだ”と言われた猗窩座は、自分も弱者が嫌いだと話始めます。
杏寿郎はさらに、鬼にはならないときっぱり断り、人間であることの尊さを説きました。
そして、杏寿郎は鬼殺隊の後輩である炭治郎を弱者だと侮辱した猗窩座を窘め、さらにきっぱりと鬼にはならないと断言しました。
鬼殺隊の先輩であり、柱として、人として立派な姿で正々堂々と立ち向かう杏寿郎とは対照的に卑怯で醜い心丸出しの猗窩座との炭治郎の出会いのシーンでした。
炭治郎からの苦言
いつだって鬼殺隊はお前らに有利な夜の闇の中で戦ってるんだ!!
生身の人間がだ!!傷だって簡単には塞がらない!!
失った手足が戻ることもない!!
逃げるな馬鹿野郎!!馬鹿野郎!!卑怯者!!
お前なんかより 煉獄さんの方がずっと凄いんだ!!
煉獄さんは負けてない!!誰も死なせなかった!!戦い抜いた!!守り抜いた!!
お前の負けだ!!煉獄さんの勝ちだ!!
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻 第65話
杏寿郎との激しい戦いの最中、夜明けが近いことに気づいた猗窩座は自分の腕を切り落とし日陰に逃げ込みます。
すると、後ろから炭治郎が日輪刀を投げ付け、猗窩座に命中。
致命傷を負った杏寿郎の健闘を叫び、鬼との戦いの不条理さや杏寿郎が身を挺して皆を守り切ったことなど、炭治郎はやるせない思いと共に苦言を言い放ちました。
杏寿郎の大健闘も虚しく、あと一歩の所で猗窩座に逃げられ、炭治郎自身も戦える状態ではない中での悔しい思い…とても切ないですね。
因縁の再会
無限城において、水柱・富岡義勇と共に進む炭治郎達のそばで激しい破壊音がし、突如天井から猗窩座が現れました。
猗窩座によって、敬愛する杏寿郎を失い、激しい怒りと憎しみに襲われる炭治郎。
そして、猗窩座も炭治郎に対し、名指しで威嚇します。
猗窩座の恨みたっぷりの言動には、実は深い訳がありました。
猗窩座、炭治郎のことで鬼舞辻無惨に罵倒される
無限列車での報告をする猗窩座に対し、無惨は柱一人倒したのが何だと、自分の望みは鬼殺隊の殲滅で、杏寿郎以外の3人の鬼狩りを逃したことに対し、失望したと言い放ちました。
そして、さらに無惨に言われた一言で、猗窩座の苛立ちは頂点に達します。
まさか柱でもない剣士から一撃を受けるとは “上弦の参”も堕ちたものだな
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻 第67話
貴様の顔…!!覚えたぞ小僧 次会った時はお前の脳髄をぶちまけてやる!!!
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻 第67話
猗窩座は、激しい怒りと共に、再会の際には脳髄をぶちまけてやると叫び、最後に炭治郎が猗窩座に一撃を与えた日輪刀をバラバラに破壊しました。
無惨から皮肉と嫌味たっぷりのお叱りを受けたことで、猗窩座の中で、炭治郎に対する激しい恨みが沸き起こるきっかけとなっていたのですね。
猗窩座、杏寿郎は正しかったと認める
戦いを進める中で、炭治郎がヒノカミ神楽から辿り着いた日の呼吸を繰り出し、猗窩座の攻撃をかわすばかりか一撃を与えるまで成長していました。
そのことに間近で気が付いた猗窩座は、杏寿郎の発言を繰り返し、強者となった炭治郎に敬意を表すると発言、さらに戦いへと挑発します。
無限列車の際には弱者だと蔑んでいた炭治郎の成長を正当に評価し、戦いを挑む姿は、鬼としての醜い心とはまた別の、武術に携わる者としての矛盾した正義のようなものを感じます。
猗窩座の狂気
炭治郎の練り上げられた技を受ける猗窩座はその功績を褒めてやると言いながら、炭治郎の尊敬する杏寿郎を侮辱し始めました。
そして、弱者や強者についての考え方が全く相反する二人。
猗窩座:俺が嫌いなのは弱者のみ
俺が唾を吐きかけるのは弱者に対してだけ
そう 弱者には虫唾が走る 反吐が出る 淘汰されるのは自然の摂理に他ならない
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第17巻 第148話
炭治郎:強い者は弱い者を助け守る そして弱い者は強くなり また 自分より弱い者を助け守る
これが自然の摂理だ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第17巻 第148話
この後、猗窩座は炭治郎に対する嫌悪感を考えあぐねる内に、初めは弱者だから不快と感じていたが、実は別の理由があったことに気が付きました。
猗窩座が人間であった時の過去に炭治郎と通じる人物の存在があったことが、後に明らかになります。
猗窩座、炭治郎に頸を斬られる
義勇と共に猗窩座と戦う炭治郎は、戦いが進むにつれ、透き通る世界を会得します。
そして、ヒノカミ神楽・斜陽転身を繰り出すと、猗窩座の頸を斬りました。
炭治郎は闘気を消すことによって、猗窩座の破壊殺・羅針の感知を逃れ、見事斬ることに成功したのも束の間、猗窩座はまだ戦えると斬られた頸を繋げようとします。
そこへ義勇が折れた自分の日輪刀を猗窩座の頭部に突き刺すように投げつけ、猗窩座の頸はようやく地面へと落ち、崩れ去りました。
猗窩座の頸が斬れるほどまで成長した炭治郎ですが、その力も鬼に出会わなければ必要ではなかったことを思うと寂しく切ない思いがします。
猗窩座の過去~炭治郎に似た人物
斬られた頸を再生しようと足掻く猗窩座に、もうやめにしましょうと手を引く少女の姿が見え始めます。
そこから、人間だった頃の記憶を思い出す猗窩座。
自暴自棄のような荒くれものだった猗窩座に素流という武術の道場をやっている師範の慶蔵が声を掛けました。
その屈託のない笑顔や言動が炭治郎と被り、猗窩座にとって炭治郎が不快だった理由が過去を思い起させるからだと気が付きました。
無惨に罵倒されたことだけではなく、師範の慶蔵に炭治郎が似ていることが不快だったのですが、なぜ不快になるのかはもう少し先に判ります。
猗窩座の弱い者が嫌いな理由
持っていた日輪刀がすっぽりと抜けてしまった炭治郎に顔面を素手で殴られた猗窩座は、師範の”生まれ変われ 少年”という言葉を思い出し、弱者が嫌いな理由を語り出しました。
弱い奴が嫌いだ 弱い奴は 正々堂々とやり合わず 井戸に毒を入れる
醜い 弱い奴は 辛抱が足りない すぐ自暴自棄になる
”守る拳”で人を殺した 師範の大切な素流を血塗れにし 親父の遺言も守れない
そうだ 俺が殺したかったのは
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第18巻 第156話
戦いが進む中で、猗窩座は自分の過去を鮮明に思い出し始めます。
※ここでは、猗窩座の過去の詳細については割愛しますが、ぜひコミックでお楽しみ下さい。
そして、過去を思い出していくにつれ、自分の弱者への激しい嫌悪について、言及しました。
人間だった頃、自分自身が弱く無力で、大切な人たちを失い、さらには弱いからこそ、人を守るための武術で、人を嬲(なぶ)り殺しにしたこと。
弱者が嫌いなのは、自分自身が弱いから、自分のコンプレックスの賜物だったことに気が付きます。
猗窩座が炭治郎を不快に感じた理由は、自分が無力で弱い存在だった過去を思い出すこと、そして大切な家族を失い、無意味な殺戮を繰り返している自分自身を自覚する事を恐れていたからです。
猗窩座の最期
猗窩座からの攻撃を義勇を連れて圏外へと避ける炭治郎。
猗窩座は一瞬、笑顔を見せると、自分自身を攻撃します。
鼻の良い炭治郎は、猗窩座から感謝の匂いがしたと感じ、猗窩座が何故笑ったのか不思議に思っていました。
猗窩座は、思い出すことが辛い過去を炭治郎が思い出させてくれたことにより、自分自身を取り戻せたことに感謝したかのようですね。
もういい やめろ 再生するな
勝負はついた 俺は負けた あの瞬間 完敗した
正々堂々 見事な技だった
敵の動きを完璧に読み ギリギリで回転 敵が攻撃を出しきる前に斬り込む
終わりだ 潔く 地獄へ行きたい
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第18巻 第156話
死を覚悟する猗窩座に、実父、師範の慶蔵が次々と現れ、言葉をかけますが、合間、無惨が猗窩座をまた鬼へと誘導します。
そこへ、慶蔵の娘であり、猗窩座の婚約者でもあった恋雪が現れました。
恋雪は、猗窩座の人間だった頃の名で”狛治さんありがとう”と感謝を述べ、元の優しい狛治に戻ったことを喜び共に抱き合います。
すると、猗窩座の身体は再生を止め、崩れ消えました。
最期に、大切に想っていた父、師範、そして婚約者の恋雪と再会できた猗窩座。
そして、猗窩座が鬼から人間の心を取り戻せたのは、大切な家族や師範、そして恋雪の存在が大きく影響していました。
魔が差すという言葉があるように、心の隙に悪い考えや汚い心が忍び寄ってしまうことがありますが、そういう時こそ逃げずに立ち向かう事でいつの日か強い心を持ち、前に進んでいけるのではないでしょうか。
まとめ
今回は、猗窩座と炭治郎の関係性に焦点を当てて、その関係性の変化などをご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
まとめると
- 猗窩座と炭治郎の出会いのシーンは無限列車での魘夢討伐後で、登場後すぐに炭治郎に襲い掛かった
- 無惨からお叱りを受けたことで、炭治郎に対する激しい恨みが沸き起こるきっかけとなった
- 猗窩座は、炭治郎のヒノカミ神楽・斜陽転身で頸を斬られたが致命傷を与えたのは自分自身だった
- 猗窩座が炭治郎を不快に感じた理由は、自分が無力で弱い存在だった過去を思い出すこと、そして大切な家族を失い、無意味な殺戮を繰り返している自分自身を自覚する事を恐れていたから
- 猗窩座が弱者が嫌いなのは、自分自身が弱いから、自分のコンプレックスの賜物だった
- 最期に、猗窩座は炭治郎に対し、感謝の笑顔を見せていた
本来の猗窩座は、優しい心の持ち主で、貧しさ故に、病弱な父の為の薬を手に入れるために窃盗を繰り返していました。
父を失った後、再び人を信じ、心を開くことができた慶蔵親子を襲った悲劇…。
度重なる信頼できる大切な人々の死によって、猗窩座の心に鬼の心が芽生えてしまったことが悲しいですね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
引き続き鬼滅の刃をお楽しみください。
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