鬼殺隊士でありながら、鬼狩りの任務には就かず、蝶屋敷で隊員の世話をしている神崎アオイ。
戦いに行けないことに負い目を感じ、自分のことを「腰抜け」と言っていますが、それでもアオイは毎日『隊服』を着用しています。
そこにはどんな思いがあるのか、そして蝶屋敷ではどんな存在なのかを、考察していきたいと思います。
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神崎アオイの隊服は「選別突破者」の証(あかし)
『隊服』は、最終選別を突破した者にのみ支給される特別なものです。
鱗滝「鬼殺隊の隊服も特別な繊維でできている。通気性は良いが濡れにくく燃えにくい。雑魚鬼の爪や牙ではこの隊服を裂くことすらできない」
コミック第2巻
自らの命を賭けて戦う鬼殺隊士には、それ相応の品質のものが支給されるということですね。
アオイが蝶屋敷で着ているのは本当に『隊服』?
鬼殺隊の後方支援部隊である『隠』のみなさんが着ている服(背中に「隠」の文字)も、鬼殺隊本部からの支給であることは間違いないでしょう。
ただし、これは『隊服』ではないと思われます、似てはいますが。
鱗滝さんの言う隊服の特徴を考えると、直接的に鬼と戦うわけではない彼らに、ここまで凝った素材のものを提供しているとは考えにくいからです。
そこで、まずはアオイが普段から着ているのが『鬼殺隊士にだけ支給される隊服』なのかどうか、登場シーンを順に追って確認してみます。
アオイの最初の登場シーン
アオイの性格と蝶屋敷での立場を端的に現した、印象的なシーンです。
でもこのシーンを初めて見たときに「あ、この女の子が着ているのは隊服だ」とすぐに気づいた人は果たしてどれぐらいいるのでしょう?
「この子は誰だろう?可愛いけどちょっと怖そう」、そんなイメージを持つ程度で、服装にまでは目が向かなかった人が多いのではないでしょうか。
「単なる世話係ではない」と思わせた機能回復訓練
アオイ「最後は全身訓練です。端的に言えば鬼ごっこですね。私(わたくし)アオイと、あちらのカナヲがお相手です」
コミック第6巻
病み上がりとはいえ、鬼殺隊士たちの訓練ですから、一般の女の子では相手になりません。
ここで「この子はそんじょそこらのお嬢さんではないのだな」ということがわかります。
そして白衣を着ていないときのこの姿を見て「おや?この子が着ているのはもしかして隊服では?」と気づく人も出てきたと思います。
アオイ自身が明かした選別突破の事実
このセリフから、「アオイは最終選別の合格者=鬼殺隊士」であることが判明しました。
隊士たちの訓練の相手をするには、やはりそれぐらいの実力者でないと務まりませんよね。
ただ、このシーンでは同時に「アオイは実際には任務に赴いていない」ということも判明しています。
果たして、鬼狩りの任務に就いていない鬼殺隊士でも『隊服』を着ているものなのでしょうか?
アオイが着ているのは『隊服』、それを教えてくれたのは「きよちゃん」
アオイとなほちゃんを抱え、無理やり遊郭に連れて行こうとする音柱・宇髄天元に対し、きよちゃんが必死に訴えているシーン。
きよちゃんは「隊服を着ていないなほちゃんは鬼殺隊員じゃない」と言っています。
つまりこのセリフは「隊服を着ているアオイさんは鬼殺隊員だけど」という意味も含んでいるのです。
ここでようやく、アオイが着ているのは『隊服』であることが100%明らかになりました。
『隊服』を着用し続けているのは、背中の『滅』への思い?
自分のことを「腰抜け」と言いながらも『隊服』を着用し続けているアオイ。
それは、実際に任務に赴くことはなくとも、鬼への『滅』の気持ちは持ち続けているからではないでしょうか。
気持ちだけは最前線で戦う者たちと同じ、そんな思いが込められているような気がします。
実は機能回復訓練で白衣を着ていない状態のアオイの背中には、はっきり『滅』の文字が入っていますので、この時点で『隊服』だと判明しているのですよね。でもそれを見逃してしまった人でも、きよちゃんのセリフのところで気づけたと思います。
なぜアオイは鬼を倒しに行かないのか?
選別で恐ろしい思いをした?
「選別でも運良く生き残っただけ。その後は恐ろしくて戦いに行けなくなった腰抜けなので」
これは選別のときに恐ろしい思いをしたということなのでしょう。
おそらく同期の誰かに助けられて選別では生き延びたものの、「この先、自分が鬼を狩るのは無理だ」と。
選別には強い覚悟で挑んでいたと思いますが、実戦は想像以上に過酷だったということですね。
アオイさんと僕は、同じ年に最終選別を受けていたらしい
そもそも鬼殺隊士の役目とは?
鬼殺隊本部からの指令を受け、任務地に赴いて鬼を狩る。
シンプルですが、これが鬼殺隊士の役目です。
そして「休息を取る、必要に応じて怪我の治療やリハビリを行う」ことも大事です。
義勇「己の怪我の程度もわからないような奴は、戦いに関わるな」
コミック第5巻
那田蜘蛛山で、水柱・冨岡義勇が伊之助に言ったこのセリフも、突き詰めれば同じ意味でしょう。
鬼殺隊が鬼を狩るのは「人間を守るため」ですので、怪我や病気でそれができないような状態の隊士を任務に就かせるわけにはいかないのです。
それと同様で、アオイのように「恐くて戦いに行けない」=「心が鬼と戦える状態でない」という場合も、やはり無理に戦いには行かせられないのでしょう。
鬼を狩らない鬼殺隊士はどうなる?
これは特に決まりはないようです。
例えば「一定期間、鬼を狩った実績がない者からは鬼殺隊員の資格を剥奪する」などといった隊律は一切ありません。
ただ、実績の有無でどう変わるかは、この隊士が教えてくれています。
この隊士は、この直後に『下弦の伍・累』によって一瞬で切り刻まれた、かの有名な「サイコロステーキ先輩」(公称は「累に刻まれた剣士」)です。
実績を積まなければ階級が上がらないので、支給されるお金も少ないまま、ということですね。
言い方を変えれば、鬼を狩らずに階級が上がらなくても、鬼殺隊員である限りは、いくらかの保証はされ続ける、ということになるでしょうか。
そもそも最終選別に参加すること自体が命がけなので、そこを突破して鬼殺隊に入隊した者に対してはある程度の保証を約束し、あとは本人の意志に任せているのかも知れませんね。
なぜアオイは蝶屋敷にいるのか?
胡蝶姉妹が引き取ってくれた
アオイが蝶屋敷に来た時期や経緯は明かされていませんが、アオイは家族を鬼に殺されていて身寄りがなかったようです。
胡蝶カナエが亡くなった直後、蝶屋敷のメンバーがお墓の前で泣いているシーン、しのぶのすぐ右にいるのがアオイと思われます。
栗花落カナヲも、親に捨てられて売られていく途中で胡蝶姉妹に引き取られていますし、胡蝶姉妹はそういった境遇の女の子の面倒を積極的に見ることにしていたのでしょう。
尚、アオイがこのシーンで着用しているのは『隊服』に見えますが、もしそうであれば、カナエが亡くなったときにはすでに鬼殺隊士だったということになりますね。
胡蝶カナエが亡くなったとき、アオイがすでに鬼殺隊士だったとすると、アオイと同期の時透無一郎が柱になった時期(刀を持って2か月で『柱』になった)が気になりますね。でもここではそれは考えないでおきましょう。
蝶屋敷の他のメンバーを見るとアオイの重要性がわかる
蝶屋敷の主人『蟲柱・胡蝶しのぶ』
隊士たちの状態を診たり、薬を調合したり、他のメンバーではできないことはしのぶが行っています。
しかし、鬼殺隊の『柱』なので、療養に来ている隊士たちの世話ばかりをしているわけにはいきません。
胡蝶しのぶの継子(つぐこ)『栗花落カナヲ』
「継子」とは、鬼殺隊の『柱』に腕を認められた剣士で、柱から直接稽古を付けてもらえる、いわばエリート。
しかし、幼い頃に虐待されたトラウマで感情に乏しく、自分では何も判断ができないため、他人の世話をするのは無理です。
中原すみ・寺内きよ・高田なほ
左から、すみちゃん、きよちゃん、なほちゃん、です。
この3人は看護師さんなので隊士たちのお世話は上手ですが、まだ少し幼く、誰かに仕切ってもらわなくてはなりません。
この子たちだけでは、隊士たちにキツく言い聞かせることは難しいからです。
尚、この3人についてはこちらの記事で詳しく紹介されています。
3人の見分け方など、是非参考にしてみてください。
蝶屋敷で実務を取り仕切っているのがアオイ
蝶屋敷での家事全般と、怪我を負った隊員たちの世話が主な仕事です。
炭治郎のように聞き分けの良い隊士ばかりなら良いのですが、なかなかそうもいきません。
そんなときはアオイの出番です。
言うことを聞かない隊士にはビシッ!と言う
きよちゃんたちに優しく諭されるだけではダメな善逸を「説明は何度もしましたでしょう。いいかげんにしないと縛りますからね!」と一喝。
これは遊郭編の後、伊之助と言い合っているところです。
すでに夫婦げんかのような???
この頃はカナヲも少し成長し、アオイと伊之助くんがびっくりするぐらいの声を出していますが、自分のためではなく炭治郎くんのため、という理由なのが微笑ましいですね。
柔軟な対応もしてくれる
蝶屋敷で療養中の伊之助が、食事の準備中につまみ食いをしに来ることに対し、アオイが考えた対処法です。
伊之助は、単純にお腹を空かせてつまみ食いをしているだけなので、お腹が満たされれば解決ですよね。
これは、隊士たちをよく見ているアオイだからこそ思いついた方法だと思います。
ズバズバ言うだけではなく、実はこういった柔軟性を持っていることが、しのぶがアオイを重用していたいちばんの理由なのかも知れません。
常に忙しい蝶屋敷、そこがアオイには最適な場所
アオイはテキパキとよく働く子で、おそらく蝶屋敷では、ほとんど休む間もなく仕事に明け暮れていたでしょう。
「鬼殺隊士なのに戦いに行けない」などと落ち込んでいる暇はなく、むしろ仕事が際限なくあることで、気が紛れていたと思います。
炭治郎のこのセリフでアオイも救われ、隊員たちの役に立てる蝶屋敷が自分の居場所なのだと感じられるようになったのではないでしょうか。
「しっかり者のアオイ」の心が揺れ動く、遊郭編の前後
アオイは常に冷静で、仮に少々動揺するようなことがあったとしても、それを表に出すようなことはほとんどなかったと思われます。
しかし、唯一アオイがとても不安そうな表情を見せ、感情を露わにしたのが『遊郭編』の前後でした。
いきなりアオイを連れて行こうとした音柱・宇髄天元
宇髄は、なほちゃんは解放したものの、「隊服を着ている鬼殺隊士」であるアオイのことはそのまま連れて行こうとします。
アオイがいちばん触れられたくなかった「こんなのでも一応隊員」。
しかし、そう言われても何も言い返せない自分を悔しくも思ったでしょう。
ただ、そんな状況になっても、やはりアオイは戦地に赴くことに前向きにはなれませんでした。
身代わりを買って出てくれた炭治郎
鬼殺隊士ではあっても、アオイが実際の任務には行けないことを知っていた炭治郎。
宇髄の暴挙を止めるには、この方法しかなかったのでしょうね。
そしてアオイの代わりに遊郭へ赴いた炭治郎・善逸・伊之助は、3人とも意識不明の重体となって蝶屋敷へ戻って来ます。
これは3人の中でいちばん最後に意識を取り戻した炭治郎を見て、アオイがホッとして大泣きしているシーンです。
アオイがどれだけ責任を感じていたかがわかりますね。
このときのアオイは、それまでの冷静な姿からは想像もできないぐらい感情的になっていました。
そしてこれこそが、アオイが自分も鬼殺隊士であることを常に意識している証ではないかと思います。
まとめ
家族を鬼に殺されているアオイは、その敵討ちのために鬼殺隊に入ろうと決心し、最終選別に挑んだのではないかと思われます。
しかし、選別は突破したものの、結局は戦いに行くことはなく、後方支援に徹しました。
そしてもともと真面目で頭も良いアオイは、蝶屋敷で胡蝶しのぶの手伝いをしているうちに、簡単な薬の調合であれば自分でもできるようになっています。
最終決戦で胡蝶しのぶはいなくなってしまいましたが、その後もアオイは自分の居場所を作ってくれた蝶屋敷を守っていますね。
「アオイがいてくれれば蝶屋敷は大丈夫」、きっとカナエもしのぶもそう思って安心しているのではないでしょうか。
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