任務から蝶屋敷に戻る炭治郎の耳に女性の悲鳴が聞こえてくる、遊郭編の始まりのシーン。
隊士の神崎アオイを左肩に、右腕には高田なほを抱え、現代社会で言えば、ハラスメントの極みのような状態で音柱・宇髄天元が登場!
アオイは、傍にいた蟲柱・胡蝶しのぶの継子・栗花落カナヲの名を必死に呼び、助けを求めました。
今回は、このシーンの続きとして、小説「鬼滅の刃」しあわせの花・第4話・アオイとカナヲで描かれた、その後のアオイとカナヲの様子をご紹介していきたいと思います。
鬼滅隊士・神崎アオイと栗花落カナヲの関係
事の始まり
単独任務を終えた炭治郎が悲鳴の聞こえる蝶屋敷へ急ぐと、アオイとなほを抱えた天元が無理やり二人を屋敷の外へ連れ出そうとしていました。
カナヲに向け、手を伸ばし、名前を必死に呼び、助けを求めるアオイ。
「やめてください」と力無く泣くすみときよの横で、固まるカナヲの姿が…。
カナヲも必死に、一つ一つこの状況を単語にし、理解しようとします。
銅貨での選択を蹴り、炭治郎の”心のままに生きる”の言葉を思い返し、アオイの手となほの衣服を自分の意思でしっかりと掴みました。
他に代わりもいない状況になり、カナヲは、炭治郎の”心のままに生きる”ことを初めて実現した瞬間でもありました。
アオイの思い
私はカナヲが苦手だった といっても、別に嫌いというわけではない。
ただ苦手というだけだ。
特に何かをされたわけでも、明確な衝突があったわけでもない。
栗花落カナヲは、言うなれば人形のような少女だ。
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 小説 鬼滅の刃 しあわせの花 第4話 アオイとカナヲ
アオイのカナヲに対する複雑な思いが打ち明けられます。
自分では何も決められず、銅貨を投げて決めるカナヲに、気の短い自分はイライラし、うんざりすることもあること。
年齢では自分が1つ年上だが、鬼殺隊での階級は、継子であるカナヲには到底及ばないと感じていること。
鬼に対する恐怖心が拭えず、実践経験を持たない自分に対する劣等感から、カナヲを見るとざわつく自分にうんざりしていることも…。
炭治郎は機能回復訓練を終えて、蝶屋敷を出る際、カナヲに声をかける前に、アオイにも出発の挨拶をしていました。
自分たちの面倒を見てくれたことに感謝の意を表す炭治郎に対し、自分を腰抜けだと卑下し、お礼などいらないと言うアオイ。
そんなアオイの気持ちをすぐに察し、持ち前の優しい心で寄り添う炭治郎。
こんな役立たずを自分の一部だと、この行き場のない想いを戦いの場に連れていってくれるとー。
なんの衒(てら)いも躊躇(ためら)いもなく。
お日さまのような笑顔で、その人は言ってくれた。
だから、頑張ろうと思った。自分に出来る精一杯のことをやろうと……。
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 小説 鬼滅の刃 しあわせの花 第4話 アオイとカナヲ
カナヲに自分の意思で生きるきっかけを作った炭治郎は、アオイに対しても自分を信じる希望を与えていました。
それなのに、天元に任務への同行を命じられた自分はなほを庇うこともできず、『カナヲ!カナヲ!!』と繰り返すことしかできなかった。
アオイは、騒動が終わってからも、そんな自分の手を、カナヲが銅貨も投げず、天元に何を言われても離さずにいてくれたことのお礼を言えずにいました。
二人での買い出し
ある日、上官である蟲柱・胡蝶しのぶに、カナヲとアオイの二人で薬種やさらしなどの買い出しに行くよう言いつけられます。
お礼を言い出せずにいたアオイは、絶好のチャンスが訪れたにも関わらず、財布を忘れ、それどころではなくなってしまいました。
自分の不甲斐なさに情けなくなっていると、カナヲが手を引っ張ってどこかへ向かおうとします。
その道中、大食い競争の力士を救ったり、夫婦喧嘩の仲裁に入ったりなど色々な出来事が起こるのですが、そちらは小説にて、ゆっくり楽しんでいただきたいので割愛致します。
財布を忘れたアオイを助けようとカナヲが向かっていたのは、恋柱・甘露寺蜜璃行きつけの茶屋でした。
『アオイが困ってたから』と、蜜璃にお金を借りようとカナヲが考えてくれていたことを知ったアオイは我慢していた涙を流し始めました。
「…………ありがと」
かすれた声でつぶやくと、胸の奥がふっと楽になった。
「今日一日、色々助けてくれて……音柱様に連れて行かれそうになった時、手を握ってくれて……離さないでいてくれて」
ありがとう、と言うとカナヲは困ったような顔で、少し照れたように下を向いてしまった。
ようやく伝えることができた。
©吾峠呼世晴・矢島綾/集英社 小説 鬼滅の刃 しあわせの花 アオイとカナヲ
すると、カナヲから、自分一人だったら、力士や夫婦喧嘩の時もどうしたらいいかわからなかったと告白されます。
アオイは、カナヲにいつから銅貨を投げずに決断できるようになったのか尋ねると、炭治郎が”心のままに生きろ”と言ってくれたと頬を赤く染まらせるカナヲ。
それを聞いたアオイは自分と同じようにカナヲも、炭治郎の言葉で変わったことを知り、あたたかな気持ちとかすかな寂しさを感じるのでした。
お互いに心の内をやっと少し明かすことができ、本当の意味での仲間になれたようなそんなシーンですね。
しのぶの真意
財布を忘れたくだりにはその後の顛末があるのですが、ここは小説にてお楽しみいただくとして、帰宅後にしのぶに今日の出来事を報告するアオイ。
お手柄でしたねとしのぶに褒められたアオイは、カナヲがいてくれたからと話すと、しのぶはカナヲも同じようなことを言っていたと言いました。
そして、しのぶから「言いたいことはちゃんと言えましたか?」と言われ、驚くアオイ。
しのぶは、アオイの表情から、言えたことを感じ取るのでした。
しのぶは、最初から、アオイのカナヲに対する複雑な思いを察して、二人で買い出しに行かせたようです。
まとめ
今回は、遊郭編の始まりのシーンの続きとして、その後のアオイとカナヲの様子をご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。
まとめると、
- カナヲは、天元に連れ出されそうになったアオイの手を自分の意思で掴み、助けた。
- アオイはカナヲに対して複雑な思いを持っていた
- アオイは、騒動が終わっても、カナヲが手を離さずにいてくれたことのお礼を言えずにいた
- カナヲに自分の意思で生きるきっかけを作った炭治郎は、アオイに対しても自分を信じる希望を与えていた
- アオイは蜜璃の行きつけの茶屋でようやくカナヲに素直な胸の内を明かすことができた
- しのぶは最初からアオイのカナヲに対する思いを察し、二人で買い出しに行かせた
お互いに様々なことを抱えており、本当は同じ方向を見ているのになかなか気持ちが寄り添わずにいたアオイとカナヲ。
カナヲの本来の姿を炭治郎の言葉が引き出し、それを目の当たりにしたアオイがカナヲの優しさを知り、自分も変わろうと前を向く様子がとても清いエピソードでした。
優しさの連鎖は、人の心を明るく晴れやかにすることを再認識させられます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
引き続き、鬼滅の刃をお楽しみください。
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