『鬼滅の刃』に登場する鬼たちは、それぞれの強さや能力に差はあるものの、基本的なところは皆同じです。
その「基本的なところ」を主人公の竈門炭治郎に教えてくれたのが、最初に出遭った『お堂の鬼』でした。
そしてそれは読者・視聴者である私たちにとっても、最初に学んだ「鬼の基礎知識」でしたよね。
今回は、もはや当たり前に感じてしまっている「鬼の基礎知識」を、『お堂の鬼』のシーンから改めて見ていきたいと思います。
そして更に、明らかにされていない「お堂の鬼の過去」を、あの上弦の鬼から考察してみます。
▼▼▼動画でもご覧いただけます▼▼▼
『お堂の鬼』が炭治郎に教えてくれたのは「鬼の基礎知識」
炭治郎は、鬼にされてしまった妹の禰豆子を連れて、自分たちを見逃してくれた鬼殺隊の水柱・冨岡義勇の導きの下、鱗滝左近次(うろこだきさこんじ)という老人を訪ねようとしていました。
その道中で遭遇したのが、初めて見た人喰い鬼=『お堂の鬼』だったのです。
炭治郎は、その『お堂の鬼』との戦いの中で、以下の3つのことを学びました。
- 鬼の傷はすぐに治る
- 鬼は首がもげても死なない
- 鬼は日の光に当たると消滅する
では、これらについて具体的なシーンを見ていきましょう。
「鬼の基礎知識」を順に解説
お堂の明かりと血のにおいに気付き、「誰かが怪我をしたんだ」と思ってその場に駆けつけた炭治郎でしたが、そこにいたのは、人間を喰い殺していた鬼(お堂の鬼)でした。
鬼の傷はすぐに治る
炭治郎は襲いかかってきたお堂の鬼に対し、斧で反撃をしました。
しかし、首を切りつけられたにもかかわらず、その傷はほんの数秒で治ってしまいます。
炭治郎を助けたのは禰豆子
傷が治ったお堂の鬼は、またすぐに炭治郎に襲いかかります。
炭治郎はそのスピードと力に抗えず、首を折られそうになりましたが、そのとき、お堂の鬼の頭を蹴り飛ばして炭治郎を助けたのが、鬼になっていた妹の禰豆子でした。
「禰豆子が鬼を殺してしまった」と思った炭治郎
首がもげてしまえば、普通はそれで「死んだ」と思いますよね。
そしてこのときの炭治郎は、鬼の頭を蹴った禰豆子の行動と、その勢いで首がもげてしまうほどの禰豆子の力に驚いたのでした。
鬼は首がもげても死なない
お堂の鬼は、禰豆子に首をもがれても、体を動かして炭治郎を襲おうとしています。
しかし、今度は体の方を禰豆子に蹴られ、頭と同じように木に打ちつけられました。
首だけになっても喋る
「てめぇら、やっぱり片方、鬼なのかよ!妙な気配させやがって!なんで鬼と人間がつるんでるんだ!」
死んでいないどころか、元気に喋っている姿を見て、炭治郎はもうびっくりです。
しかし、お堂の鬼にしてみれば、人間と鬼がつるんでいることの方が、よほど「びっくり」だったことでしょう。
炭治郎 vs 頭
その後、胴体は禰豆子に襲いかかり、禰豆子は一方的にやられる状況になります。
頭と胴体を大きく蹴飛ばしたものの、それはあくまで「不意打ち」だったから通用したのであって、本気で襲いかかってこられたら、まだ鬼になったばかりの禰豆子がかなう相手ではありませんでした。
それを見た炭治郎は禰豆子を助けようとしますが、その邪魔をしたのが「頭」の方でした。
なぜかお堂の鬼は頭から腕を生やしていて、炭治郎が振り下ろそうとしていた斧を掴み、更に髪の毛を斧に巻き付けています。
飛びかかる前、炭治郎に近づくときに、手を使って地面を走るシーンは、テレビアニメのオリジナルです。
しかし禰豆子を助けに行きたい炭治郎は、その状態から頭突きを2度食らわして、更に斧ごと木に向かって投げつけ、頭を木に固定させることに成功しています。
胴体は崖から落ち、頭は気絶
お堂の鬼の頭を木に固定させた炭治郎は、禰豆子を襲っていた胴体に体当たりして禰豆子から引き離しました。
その勢いで崖から落ちた胴体は死んだようで、その瞬間に頭の方は気絶しています。
尚、炭治郎も一緒に落ちそうになりましたが、そこは禰豆子が助けてくれました。
鬼は日の光に当たると消滅する
とどめを刺せなかった炭治郎
頭が気絶している間にとどめを刺そうとした炭治郎でしたが、鬼とはいえ「殺す」という行為に躊躇してしまいます。
そこに現れた天狗の面をつけた男性(=鱗滝さん)に「そんなもの(短刀)ではとどめは刺せん」と言われ、頭部を破壊するために大きな石を持ってきますが、それでもやはり「殺す」という行動に移すことはできませんでした。
迷っているうちに夜が明けた
とどめを刺すことを迷っているうちに、気絶していた鬼が意識を取り戻します。
「てめぇ、ぶち殺す!食い尽くしてやる!こっち来い、コラ!こっちから行けねぇんだ、お前が来いよ!」と必死に腕を動かしながら言うセリフも、アニメオリジナルです。
しかし、固定されていた木に日の光が差し込み、お堂の鬼はそのまま燃えて消滅してしまったのでした。
このとき炭治郎は、冨岡義勇に言われたこのセリフの意味を理解したのです。
今は日が差していないから大丈夫なようだが、妹を太陽の下に連れ出すなよ。
『お堂の鬼』の過去を考察
このお堂の鬼の手足に入っている何本かの線、どこかで見た覚えはありませんか?
似た線が体に入っているのは、あの上弦の鬼
上弦の参・猗窩座です。
お堂の鬼は、コミックでは1巻、テレビアニメでは第2話にだけ登場していて、その後の出番はないため、手足に線が入っていたことを覚えている人はあまりいなかったのではないでしょうか。
いや、覚えているかいないか以前に、線があること自体、気付かれていなかった可能性が高いかも知れません。
しかし、猗窩座はその「線」がとても目立っていて、更にキャラクター自体のインパクトも強く、「猗窩座のあの体の線は何?」と思った人も多かったと思います。
体に入った線は「入れ墨」(江戸の罪人の証)
これは、猗窩座がまだ狛治(はくじ)という人間だった頃のシーンです。
つまり、狛治(猗窩座)と同じような線が入っているお堂の鬼も、過去は「罪人」だったのではないかと思われます。
罪の種類はおそらく「盗犯」
これも狛治のシーンで、彼が盗みを繰り返していたことがわかりますが、その理由は「私利私欲」でも「面白半分」でもなく、「病気の父親の薬を買うため」でした。
盗みは悪いことですが、少し同情してしまう境遇ではありますね。
主に、盗犯に施される罰。腕に幅三分(約9mm)ほど二筋に墨を入れる。入墨刑は、古くから行われたが、成文化されたのは8代将軍・吉宗の治世である享保5年(1720)2月17日で、耳や鼻をそぐ刑罰を科せられた者よりも罪の軽い者に行われた。(中略)入墨がどこに彫られているか、どのような形であるかで、どこで罪を犯したかがわかるようになっていた。
時代劇用語指南 > 江戸の刑罰 > 入墨(いれずみ)
尚、江戸の罪人は、狛治のように肘よりも下に線が入れられていたようですが、猗窩座の線は大阪(大坂)の罪人を示す「肘よりも上」にあることから(他にもいっぱいありますけど)、鬼になってからの線の位置は、罪を犯した場所とは無関係と思われます。
まとめ
『お堂の鬼』は、最初は結構恐ろしく不気味な感じで登場していて、お堂の鬼を演じている緑川光さんのイケボ具合が、その登場シーンにより迫力を与えてくれていました。
しかし、「やっぱり片方、鬼なのかよ!」のあたりから、コミカルさが加わっていきます。
これは原作でもそうなのですが、アニメ化するにあたり、そのコミカルさを発展させたアニメオリジナルのシーンが追加されていて(頭から生やした手で歩いたり、「お前が来いよ!」とジタバタしたり)、そこにはこのような意図があったことを、キャラクターデザインの松島氏と外崎監督が語っています。
松島氏:物語前半の鬼は、あまりシリアスになりすぎないようにしていました。例えばお堂の鬼も人を喰ってはいるのですが、表情をシリアスにしすぎないようにしたりとか。
外崎監督:前半ですからね、恐ろしいシーンでも、どこかで笑えるような作りになればいいなと。頭から腕が生えるという展開は、原作を読んだときにすごい発想だなと思いました。
煉獄零巻
物語の中での『お堂の鬼』は、数多いる雑魚鬼のひとりに過ぎなかったのかも知れませんが、まだ鬼に対する知識が皆無だった炭治郎にとっては「鬼入門」、いや「鬼殺隊入門」として、とても大事な役割を果たしてくれた鬼だったのだと思います。
そしてこのお堂で出会い、後に炭治郎の師匠となる鱗滝左近次につきましては、こちらの記事で詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
関連記事