富岡義勇の羽織といえば、右半分が単色の葡萄色の無地、左半分は緑とオレンジの亀甲柄の片身替わり(かたみがわり)です。
この同じ柄の羽織を着ていた人物が、義勇の育手の師範の鱗滝左近次の元で、共に水の呼吸を指南してもらっていた弟子で同期の錆兎(さびと)です。
今回の記事では義勇と錆兎の関係性やエピソード。義勇の過去や抱えている心の深い傷などに触れていきます。
また、そこから物語の主人公である竈門炭治郎をきっかけに立ち直っていく姿までご紹介していきたいと思います。
富岡義勇と錆兎との関係性とそのエピソード
錆兎への悔い
義勇は、錆兎について、コミック15巻の第130話で、初めて語ります。
上弦の肆(し)・半天狗の討伐の後に柱稽古が始まりましたが、他の柱や隊員たち全体の士気が上がる中、義勇は独り、後ろを向いてしまいます。
その事を案じたお館様が炭治郎を義勇の元へ向かわせます。
しつこく義勇に話しかける炭治郎に、根負けした義勇が語り始めます。
俺は最終選別を突破していない
あの年に俺は 俺と同じく鬼に身内を殺された少年…
錆兎という 宍(しし)色の髪の少年と共に選別を受けた
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第15巻
その最終選別では、錆兎がほとんど一人で鬼を倒したこと。
そして、錆兎は皆を助けながら亡くなり、錆兎以外の全員が選別に受かったこと。
義勇は、最初に襲ってきた鬼でケガを負い、気が付いた時には選別は終わっていて、七日間生き延びたということだけで選別に受かりましたが、鬼を一体も倒さずして選別を通った自分には、柱の資格がないと悲観していることを伝えます。
義勇の苦悩
きっと義勇さんは自分が死ねば良かったと思っているんだなあ
痛いほどわかる
自分よりも生きていて欲しかった大事な人が 自分より早く死んでしまったり
それこそ自分を守って死んだりしたら抉(えぐ)られるようにつらい
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第15巻
上弦の参・猗窩座との戦いで、尊敬する先輩である煉獄杏寿郎を目の前で亡くした炭治郎は、義勇の心境を案じます。
師範の鱗滝左近次の元、最終選別への参加の条件だった岩斬りの際に、実際に錆兎と接した(本当はその時点で錆兎は亡くなっていますが)炭治郎は、選別の時に、既に仲間を助けていた錆兎を、自分を守るので精一杯だった自分と比較して、凄いなあと感嘆します。
どんなに惨めでも恥ずかしくても 生きていかなきゃならない
本人は認めていないけど 柱になるまで義勇さんがどれだけ自分を叱咤して叩き上げてきたのか
どれだけ苦しい思いをしてきたことか
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第15巻
炭治郎も、猗窩座との戦いの際に、自分たちを守る為に命を張って守り通してくれた煉獄杏寿郎に対して同じ思いを抱いた時に、伊之助にハッとすることを言われて目が覚めた経験がありました。
炭治郎も、一つだけ、義勇に聞きたいことがありました。
錆兎との記憶
義勇は、炭治郎の一言で、今まで忘れていた、というよりも忘れようとしていた、封印してきた、錆兎とのやりとりを思い出します。
姉蔦子が義勇を庇い、鬼に襲われ亡くなったことで、自分を責め続け、悲観し、その事に飲み込まれそうになっている義勇に対しての錆兎の心を鬼にして厳しい言葉で叱咤しているシーンです。
頬を張り飛ばされた衝撃と痛みが鮮やかに蘇る
何故忘れていた?錆兎とのあのやりとり 大事なことだろう
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第15巻
未熟でごめん…
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第15巻
記憶の中でひとしきり考えて、姉の蔦子、錆兎の思いを思い返し、やるべきことを再認識した義勇は、柱稽古へと向かうことを決意しました。
まとめ
炭治郎の岩斬りの鍛錬の際に、突如現れた錆兎が、義勇の親友だったことに驚いた方もいるかもしれません。
今回は、義勇と錆兎の悲しくも強い繋がりから、クールな印象の強い義勇の人間らしい一面や、弱い部分を封印せざるを得なかったところなどを含めてご紹介しました。
義勇にとっての錆兎、炭治郎にとっての杏寿郎、考えてみると、錆兎と杏寿郎は正義感が強く、強い信念を持つ優しい心の持ち主だった所など、共通点が多々あるような気がします。
義勇と錆兎のような友情や炭治郎と杏寿郎の師弟愛、現代の社会の中でもある、男性の縦社会の構図のようなお話ですが、老若男女問わず、同じ志を持つ仲間の大切さ、それが目の前に姿形が見えなくとも、心の中でずっと生き続けていく事で、心の支えとなり、前を向いて生きていけるということ改めて感じます。
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