強い精神と肉体を持ち、明朗快活で強靭な精神を持つ、炎柱・煉獄杏寿郎(れんごくきょうじゅろう)。
鬼滅の刃のキャラクターの中でも人気のキャラクターでもある、彼の精神面の強さや優しさは、母親の影響が大きいと言われています。
そんな杏寿郎の母である、煉獄瑠火について、登場シーンなどを追いながら、解析していきたいと思います。
煉獄杏寿郎の母・煉獄瑠火(るか)
瑠火*登場シーン①
瑠火の初登場シーンは、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車』の中でも、名シーンの一つです。
上弦の参・ 猗窩座 (あかざ)との死闘中、猗窩座 の右腕が杏寿郎の胸を貫通する致命傷を負ってしまいます。
”鬼になると言え!!お前は選ばれし強き者なのだ!!!”と 猗窩座 に凄まれる中、劇場版では、風鈴の鳴る音から、こちらの回想シーンが始まります。
瑠火:杏寿郎
杏寿郎:はい母上
瑠火:よく考えるのです 母が今から聞くことを
なぜ自分が人よりも強く生まれたのかわかりますか
杏寿郎:…うっ…わかりません!
瑠火:弱き人を助けるためです。
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻
幼い日の杏寿郎の、変わらない明朗快活で礼儀正しい少年時代の姿です。
育ちの良さも感じられますが、あどけなさの残る様子がとても愛らしいです。
そして、瑠火の凛として芯の強い佇まいは、杏寿郎の姿勢にも受け継がれているように感じますね。
生まれついて 人よりも多くの才に恵まれた者は その力を世のため人のために使わねばなりません
天から賜りし力で人を傷つけること 私腹を肥やすことは許されません
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻
ここでも、杏寿郎の正義感の強さは、瑠火の教えを守り抜いた結果であることがわかります。
本当の強さ、強さのあるべき姿を真剣に教え諭しています。
瑠火の杏寿郎への深い愛情を感じるとともに、杏寿郎の母への一途な心も感じられます。
自身の余命が少ないことを察した母・瑠火の意志の強さと深い愛情を感じる場面です。
幼く、まだまだ母の存在が必要な年齢のわが子に、覚悟の上で、あえて厳しく、強さのあるべき姿を教える瑠火も断腸の思いだと思います。
幼いながら杏寿郎も、身近にいる弟を守る覚悟を決めたことでしょう。
それを受けて、杏寿郎は、猗窩座に向け、さらに渾身の力を込めて刀を振り上げます。
母上 俺の方こそ 貴女のような人に産んでもらえて光栄だった
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻
悲しい運命の元、巡り合った杏寿郎と瑠火の美しすぎる親子愛、絆を感じます。
お互いに敬い合い、素敵すぎる親子関係で羨ましい限りです。
杏寿郎の、死を覚悟しながらの母への感謝の言葉もまた立派すぎます!
瑠火*登場シーン②
日が昇りはじめ、猗窩座は焦り始めますが、杏寿郎は、最後の力を振り絞り、自身の胸に貫通している猗窩座の腕を決して離さず、逃がすまいとします。
結局、猗窩座が自ら両腕を切り離し、日の当たらない場所へと逃げ出します。
炭治郎の投げた日輪刀が猗窩座の胸を貫通しますが、さらに逃げていく猗窩座に向け、炭治郎が悔し涙を流しながら杏寿郎の健闘を叫びます。
そして、死期を悟った杏寿郎が最後に話をしようと炭治郎に声をかけます。
杏寿郎は、炭治郎が気にしていた”ヒノカミ神楽”について、遺していく家族への遺言、禰豆子について、そして、遺される後輩に向けての助言を含めたメッセージを素晴らしい言葉の数々で伝えます。
ひとしきり話終えると、杏寿郎の目に、母・瑠火の姿が見えてきます。
お迎えがきたこと、そして、それが最愛の母だったこと。
母にあの日託されたことの為に、鍛錬に鍛錬を重ね、精神的にも肉体的にも鍛え上げてきた杏寿郎。
久しぶりの親子の再会がこんな悲しい場面なんて、とても残酷です。
そして、瑠火の登場の表情が固いことで自分がやってきたことは母の教えに沿えるものだったのか気になったのでしょう。
杏寿郎:母上 俺はちゃんとやれただろうか やるべきこと果たすべきことをやれましたか?
瑠火:立派にできましたよ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻
母の教えを守り、ずっと気を張って生きてきた杏寿郎の心の報われた瞬間でもありました。
最期の姿は20歳の青年の年相応な屈託のない笑顔でした。
この優しい笑顔が、悲しく、心にいつまでも残りますね。
瑠火*登場シーン③
杏寿郎の遺言を伝えようと煉獄家を訪ねた炭治郎に、お酒を片手に悪態をつく杏寿郎の父・槇寿郎(しんじゅろう)。
しまいにはつかみ合いになり、炭治郎も初対面なのに頭突きを食らわす始末でした。
炭治郎が帰った後、弟の千寿郎が槇寿郎に、杏寿郎の遺言である”体を大切にして欲しい”という言葉を伝えると、やっと素直な感情をあらわにし泣き崩れます。
その後、槇寿郎から炭治郎に送られた謝罪手紙の中で、瑠火に触れる部分があります。
自分がお酒に溺れるきっかけになった出来事の一つに最愛の妻の病死があったこと。
杏寿郎は素晴らしい息子で、自分が指南することを放棄した後も、たった3冊の指南書を頼りに、独学で鍛錬を続け、柱にまでなったことを讃えます。
物事に真摯に取り組む姿勢や聡明で清廉潔白なところは母の瑠火に通じるものだと断言しています。
炭治郎に悪態をついていた槇寿郎は本当にひどい状態でした。
最愛の妻・瑠火の死をきっかけにお酒に溺れることになってしまいましたが、杏寿郎の遺言を素直に受け止め、更生していきます。
姿形は見えなくとも、家族の絆や人の思いは、思う人の心の中でいつまでも生き続けていくのでしょう。
瑠火*登場シーン④
杏寿郎が鬼殺隊の甲(きのえ)で、継子の甘露寺蜜璃(かんろじみつり・当時癸〔みずのと〕)と稽古をしている最中に当時炎柱だった槇寿郎に鎹鴉(かすがいがらす)から柱合会議への招集の知らせが入ります。
杏寿郎は、その伝言を槇寿郎に伝えにいくも、”行きたければお前が行け 俺にはどうでもいい”と言われます。
その上、槇寿郎は、お酒の瓶を投げつけ、”どうせお前も大した人間にはなれないのだ!炎の呼吸も柱も全て無駄なことだ!!下らない!!”とまで言い放ちます。
杏寿郎はその後、父に代わり柱合会議に出席します。
この回想から思うのは、杏寿郎は、いつもくじけそうになるようなことがあった時に、生前の瑠火が言っていたことを思い出して、自分を奮い立たせて乗り越えようとしてきたのではないでしょうか。
母が尊敬する父・槇寿郎のような立派な炎柱になる。
これは杏寿郎の目標であり、母の教えであり、願いでもあることです。
それを叶えようと必死に頑張る杏寿郎の、自分を保つための術でもあったのではと思います。
瑠火*登場シーン⑤
いいですか杏寿郎 煉獄家は代々続く鬼狩りの一族
炎柱の雅号は我らの誇りでもあります 貴方も父上のような立派な柱を目指しなさい
心に炎を宿すのです 悪鬼を燃やし尽くし 人を優しく照らしだす
心に太陽のような炎を宿した炎柱になるのです
©平野稜二・吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 外伝
杏寿郎は、父・槇寿郎の代わりに出席した柱合会議にて、実力を示しておいでとお館様に言われ、帝都に出没している十二鬼月の討伐に継子の甘露寺蜜璃と共に向かいます。
そこで、父・槇寿郎と杏寿郎を間違えた下弦の弐・佩狼(はいろう)との闘いの最中に母の言葉を思い出し奮起します。
この瑠火の言葉の中に、杏寿郎が炭治郎達後輩に遺した”心を燃やせ”の原点となっているかのような発言が含まれていますね。
”心に太陽のような炎を宿した炎柱”、それはまさに杏寿郎そのものです。
生きていて欲しかった、その一言に尽きますが、杏寿郎は母との約束、母の教えをしっかりと守り抜きました。
瑠火*登場シーン⑥
弟の千寿郎:
兄上 母上が亡くなられてから父上もずっと床に伏したままです
父上も母上のように天国へ行かれるのでしょうか?
杏寿郎の心の中:
ああ そんなこと言わないでくれ千寿郎
父上もいつかきっと立ち直ってくれる 俺も煉獄家の長男として強くなる 強くあらねばならない
泣くな杏寿郎 飲み込まれてしまうな その悲しみもいつか大切な力になる
約束したのだ 母上と 弱き人を助けると 柱になると
©平野稜二・吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 外伝
さらに佩狼との闘いの中で千寿郎とのやり取りを思い出します。
そして、瑠火との約束を再度認識し、さらに奮起し闘います。
ここのシーンでは、言葉での登場です。
杏寿郎が炭治郎たちに向けたメッセージを自分が実体験している様子が描かれています。
最愛の母を亡くした悲しみに飲み込まれそうになる自分を必死に奮い立たせて、剣術の鍛錬に向かい、母との約束を果たすべく前を向こうとする幼い日の杏寿郎に胸が痛みます。
己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと
心を燃やせ 歯を食いしばって前を向け
君が足を止めて蹲(うずくま)っても時間の流れは止まってはくれない
共に寄り添って悲しんではくれない
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻
だからこそ、このメッセージが、炭治郎たちだけでなく、観ているこちら側まで深く心に残るのでしょう。
清廉潔白な杏寿郎の苦悩や悲しみからの奮起から、あの明朗快活で強靭な精神力が鍛え上げられたとすると、切なくて胸が痛みます。
もっと生きて、幸せな瞬間をもっともっと感じて欲しかったと願わずにはいられない、そんな気持ちになります。
瑠火*登場シーン⑦
一緒に佩狼の討伐に向かった甘露寺蜜璃もまた、自分は鬼殺隊に向いていないのではないかと悩んでいました。
佩狼の血鬼術・鹵獲腔(ろかくこう)影狼(かげろう)から母子を守り戦う中での回想シーンです。
母の教えを継子である蜜璃にも伝え、励まします。
母に言われて心に響いた言い回しや蜜璃の心を汲み取りながら力強く励ます杏寿郎の、誠実で優しく気高い精神は本当に剣士の鑑、先輩の鑑です。
瑠火*登場シーン⑧
”燃やせ!燃やせ!心を燃やせ!!”と心で叫びながら、炎の呼吸・奥義 玖ノ型 煉獄を打ち出し、佩狼を討伐します。
見ていますか 母上 杏寿郎は約束を果たしました
©平野稜二・吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 外伝
佩狼を倒した後の一言です。
その後、杏寿郎は功績認められ、お館様に炎柱に命じられます。
ここまできてわかったことは、杏寿郎は口には決して出さず、心の中で母に語り掛けていたのではないでしょうか。
姿形はなくなっても、杏寿郎の心の中にはいつも母がいて、そばでそっと見守っていてくれると信じ、頑張ってこれたのではないかと思います。
母上 あの日点いた心の炎は 今でも絶えずこの胸に
煉獄家の長男として責務を果たしてみせます 必ず
©平野稜二・吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 外伝
無限列車編でも登場する名言”俺は俺の責務を全うする”も、瑠火の教えを受けた杏寿郎の生き様であり、生きる目的でもある大切な約束でした。
それを真摯に受け止め、守り続ける誠実さ、歪むことなくまっすぐに取り組むひたむきさ、本当に素晴らしい精神の持ち主ですね。
まとめ
杏寿郎の生き方に多大な影響を与えていた母・瑠火について、登場シーンから追ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
- 瑠火の凛とした佇まいや精神は、杏寿郎に受け継がれている。
- 杏寿郎の正義感の強さは、瑠火の教えを守り抜いた結果である。
- 物事に真摯に取り組む姿勢や聡明で清廉潔白なところは母の瑠火に通じるものがある。
- 母から亡くなる前に託されたことの為に、杏寿郎は鍛錬に鍛錬を重ね、精神的にも肉体的にも鍛え上げてきた。
- いつもくじけそうになるようなことがあった時に、生前の瑠火が言っていたことを思い出して、自分を奮い立たせて乗り越えようとしてきた。
- 自分の責務を全うすること、それが瑠火の教えを受けた杏寿郎の生き様であり、生きる目的でもある大切な約束だった。
強くて優しい母、それが煉獄瑠火だったように思います。
杏寿郎にも多大な影響を与えていますが、父・槇寿郎にとっても、その死がつらすぎて現実逃避のお酒に溺れるきっかけになったり、登場シーンは少ないですが、煉獄家にとって、とても重要な人物でした。
それでは、引き続き、鬼滅の刃を、映画、コミック、アニメなどを観て、お楽しみ下さい!!
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