『鬼滅の刃』に登場する珠世さんと愈史郎は、主人公の竈門炭治郎が鬼殺隊に入って間もない頃、浅草で出会った鬼です。
「鬼」とは言っても彼らは人間の味方で、言動も生活環境も人間とほとんど変わりありません。
しかし、それでもやはり二人は「鬼」であり、いつか寿命が尽きる人間と同じには語れない複雑な事情もありました。
今回は、彼らの過去から現在に至るまでの関係と、望まれる未来について解説いたします。
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珠世と愈史郎の関係、過去から現在まで
珠世の過去
愈史郎に愛され、炭治郎もその微笑みに頬を赤くし、そしてかつては鬼舞辻無惨にも気に入られていた美しい珠世さん。
まずは彼女の過去を見ていきたいと思います。
生まれた時代
珠世さんの生まれた時代は不明です。
しかし、原作のこの場面から、少なくとも400年は生きていることがわかります。
これは、始まりの呼吸の剣士・継国縁壱(つぎくによりいち)と出会った場面で、珠世さんはすでに鬼になっていました。
継国縁壱は戦国時代の人であるため、彼と出会っているということは、珠世さんは戦国時代か、あるいはそれよりも前の時代の生まれ、ということになりますね。
もう少し時代を絞りますと、鬼の始祖である鬼舞辻無惨が平安時代の生まれですので、無惨よりも後の平安時代~戦国時代、となります。
ほとんど絞れていないような気がする。
鬼になった経緯と無惨を恨んでいる理由
珠世さんは、幼い子供を持ちながら自身は病で長くは生きられない状態に陥り、「子供の成長を見届けたい」と願って鬼になっています。
しかし、「鬼になったら人間を食べることになる」とは聞かされておらず、成長を見届けたかった子供を自分自身が食べて殺してしまったのです。
通常、鬼になると人間時代の理性や記憶は失われますが、騙されて鬼になり、夫と子供を殺してしまった珠世さんは、無惨への恨みを持ち続けていました。
そしてその執念が、数百年の後、鬼殺隊とともに無惨を倒すことに繋がっていくのです。
愈史郎の過去
愈史郎も、病で余命いくばくもない状態から鬼になることを望んでいます。
しかし珠世さんが鬼になったときとの大きな違いは「鬼になるとはどういうことか」を、事前にちゃんと知らされていたことでした。
そして愈史郎はそのことを理解した上で、鬼になることを選んだのです。
おそらく愈史郎は、鬼になる前から珠世さんのことが好きだったのでしょうね。
「人間ではなくなり、つらく悲しいことがたくさんあったとしても、珠世様のそばでずっと生きていたい」と。
現在の二人の関係
これはひとことで言い表すのは非常に難しいです。
夫婦ではもちろんありませんし、恋人同士でもありません。
珠世さんは医者で、愈史郎はその手伝いをしていますが、師弟関係というのも少し違う気がします。
また、珠世さんは愈史郎を鬼にしているものの、無惨と他の鬼のような支配関係にもありません。
愈史郎が珠世さんに対してとても忠実なのは、決して「支配されているから」でも「洗脳されているから」でもなく、愈史郎自身が心から珠世さんを慕い、守りたいと思っているからです。
そして珠世さんも、そんな愈史郎を守りたいと思っていますが、その想いは愈史郎のそれとは少し違うようですね。
それでも、珠世さんが今この世でいちばん大事に思っているのは、間違いなく愈史郎のはずです。
炭治郎&禰豆子との出会い
炭治郎が浅草で最初に遭遇した「鬼」は鬼舞辻無惨
炭治郎は、最初の任務で「沼の鬼」を倒した後、カラスからの伝令により浅草へ向かっています。
そこで出遭ってしまったのが鬼舞辻無惨でした。
炭治郎はその場で無惨を斬ろうとしましたが、人間のふりをして潜んでいた無惨には人間の家族がいて、炭治郎はその手を止めてしまいます。
その隙に、無惨は周りの目が自分に向かないよう、たまたま近くを通りかかった人間に浅い傷を負わせて鬼にし、その混乱に乗じて炭治郎から逃げたのでした。
他とは違う「鬼狩り」だった炭治郎
「この人を放っては行けない・・・」
家族の仇、鬼舞辻無惨に逃げられてしまう状況でも、炭治郎は鬼にされてしまった男性と周りの人間を守ろうとしました。
それは「鬼殺隊員として」というより、炭治郎個人の性格によるところが大きかったように思います。
そしてそれを見た珠世さんは、自身も鬼であるにもかかわらず鬼狩りの炭治郎の前に姿を現し、血鬼術を発動して炭治郎と男性を警察から守っています。
他とは違う「鬼」だった禰豆子
炭治郎が連れていた禰豆子は、鬼のことに精通している珠世さんでさえ見たことのないタイプの鬼でした。
2年も人の血肉を喰らうことなく過ごし、凶暴化もしていない。
珠世さんにとっては、無惨を倒すための大きな手がかりとなる出会いであったと思います。
そして炭治郎にとっても、禰豆子を人間に戻すための希望を見い出せた貴重な出会いでした。
現実味を帯びる長年の悲願成就
珠世さんが炭治郎にお願いしたのは「明らかに他の鬼とは違う禰豆子の血」、そして「無惨の血が濃い鬼=強い鬼の血」の採取でした。
珠世さんはこれまでもたくさんの鬼の血を調べていたのかも知れませんが、研究をさらに進めるためには、炭治郎にお願いしたこれらの血がどうしても必要だったのでしょう。
そして、珠世さんの思いが純粋なものであることを感じ取った炭治郎は、その申し出を受け、以後、禰豆子と鬼の血を珠世さんに送り続けています。
「血」の運搬係は「猫」
炭治郎は、作中で「元下弦の陸・響凱(きょうがい)」と、「上弦の陸・妓夫太郎(ぎゅうたろう)」の血を珠世さんに届けています。
他の鬼の血も送っている可能性はありますが、血を採取しているところがはっきりと描かれているのは先の2体のみでした。
そして、その血を実際に珠世さんのところに送り届けてくれていたのは「猫の茶々丸」です。
もちろん、禰豆子の血を届けてくれていたのも、この茶々丸です。
珠世さんは無惨の支配からは逃れているものの、他の鬼に見つかればその情報が無惨のところへ行ってしまうので、できるだけ身を隠していなければなりませんでした。
それに、自分が見つかってしまえば、愈史郎にも危害が及んでしまいますしね。
可愛いだけじゃない猫の茶々丸の活躍ぶりは、こちらの記事でご覧ください。
変化し続ける「禰豆子の血」
何百年も生きている珠世さんを、こんなにも驚かせた禰豆子。
そしてそれは、鬼舞辻無惨さえ未だ成し遂げられていない「太陽の克服」のための変化なのではないかと、珠世さんは予測していました。
珠世さんは、おそらく鬼のことは知り尽くしていたと言っても良いほど、いろんな鬼のことを見てきていたでしょう。
その珠世さんでさえ見たことがない変化で、これまでの禰豆子の状態から考えると、もう導き出される結論はひとつ(=太陽の克服)しかないと思ったのです。
珠世さんを驚かせた禰豆子の変化につきましては、こちらの記事をご覧ください。
鬼殺隊と手を組み臨んだ無惨との対決
鬼舞辻無惨との直接対決が迫っていることを感じていたお館様は、それに向けて綿密な計画を立てていました。
その中で、鬼殺隊員たちとは別に、重要な戦力として考えていたのが珠世さんと愈史郎の二人だったのです。
珠世なしでは始まらなかった最終決戦
「鬼殺隊がどんなに力をつけても、柱たちが束になってかかっても、それだけでは無惨には通用しない」、お館様はそう思っていました。
ではどうすれば良いのか、それは「無惨を薬で弱くする」こと。
この方法を最初に思いついたのがお館様なのか、珠世さんなのか、あるいは薬学に精通していた蟲柱・胡蝶しのぶなのか、それはわかりませんが、皆が知恵と力を出し合わねば実現できなかったことは確かです。
珠世さんは、鬼である自分に協力を求めてきたお館様に対し、最初は警戒していました。
しかし、己の身を犠牲にした先制攻撃を仕掛けるほどの覚悟だったお館様を信じ、自身も命を賭けて最後の戦いに挑んでいったのです。
愈史郎なしでは戦い続けられなかった鬼殺隊
愈史郎の最終決戦での使命は2つ、「鬼殺隊士の救護」と「無限城内を操る鬼・鳴女の支配」でした。
珠世の薬を使った鬼殺隊士の救護
愈史郎は、珠世さんの作った「血鬼止め」という薬を使い、血鬼術によって傷を負った剣士たちの救護をしていました。
愈史郎本人は、本当は珠世さんのそばにいたかったに違いありません。
しかし「鬼殺隊士たちの救護」が珠世さんから仰せつかった自分の使命だったので、それに徹していたのです。
ところが、その途中で愈史郎に異変が起こります。
これは、珠世さんの頭部が無惨に握りつぶされた瞬間、つまり、珠世さんが殺された瞬間でした。
珠世さんによって鬼となった愈史郎には、珠世さんの気配を感じる力があったようです。
しかし、珠世さんの最期を知ってからも、愈史郎は懸命に無惨討伐に尽力しています。
「鬼殺隊の視覚を操る鳴女」の視覚の乗っ取り
無惨は、鳴女の「他人の視覚を操る血鬼術」を通し、城内の敵の様子を伺っていました。
力技では対抗できないこの鳴女の血鬼術に対し、お館様が対戦相手に選んだのが、鳴女と同じく「他人の視覚を操る血鬼術」を扱う愈史郎だったのです。
そして愈史郎はお館様の期待通りに鳴女の視覚を乗っ取り、無惨にウソの情報を流すことで時間稼ぎをしています。
その「ウソの情報」とは、俺と甘露寺が「琵琶鬼(鳴女)にすでに殺されていた」というものだ。『柱』が減ったと油断させておいて、実際は俺たちは無惨のところへ向かっていた、というわけだ。
そう、愈史郎のこの戦いにおける最大の功績、それは、無惨を地上に排出したことでした。
無惨は頸を斬っても死なないため、日の光に当てることでしか倒すことができず、とにかく建物の外に出さなくてはならなかったのです。
おそらくそれは鬼殺隊(=人間)には難しく、血鬼術という不思議な技(反則技ともいう)を扱える「鬼」にしかできないことでした。
珠世さんと胡蝶しのぶとで開発した薬で無惨を弱体化させ、愈史郎が無惨を外に出し、そして最後は鬼殺隊全員の力により、無惨を太陽の光で消滅させることに成功したのです。
無惨の消滅後も一悶着あったが、なんとか無事終わったことなので、ここでは何も言うまい。
最終決戦のその後
愛する人への想いを胸に
愈史郎のこの表情からすると、「全てが終わったら珠世様のもとへ行きたい」と思っていたのかも知れません。
しかし、珠世さんはそれを望んでいませんでした。
最終決戦の直前に、猫の茶々丸を鬼にしていることからもわかりますよね。
それは「たとえ自分が死んでも、愈史郎には生きていて欲しい、せめて茶々丸が慰めになってくれれば」という、珠世さんから愈史郎への、精一杯の愛情だったのです。
そして愈史郎は令和の世でも、茶々丸と共に生き続けています。
二人が交わした唯一の約束
公式ファンブック『鬼殺隊見聞録・弐』で、愈史郎に関する「大正コソコソ噂話」にはこう書かれています。
愈史郎は、珠世に想いを伝えることはありませんでした。
公式ファンブック『鬼殺隊見聞録・弐』
珠世が夫と子供を忘れることができないとわかっていたためです。
珠世とした約束はひとつ、生まれ変わったら夫婦になってほしいというもの。
珠世は微笑んで、頷いてくれたそうです。
もしかしたら数百年後に、地獄で罪を償い、生まれ変わった珠世を見つけて、
その頃には愈史郎の鬼の血も薄くなり、
二人寄り添い人間として歳を重ねたのかもしれません。
愈史郎の想いは、直接口では伝えていなくとも、珠世さんには十分伝わっていたでしょう。
しかし、それでもお互い敢えて口にしなかったことが、自分よりも相手を大事に想っていた証拠だと思います。
まとめ
「医者と患者」という関係から始まった珠世さんと愈史郎の二人。
珠世さんにとっての愈史郎は、最初は「数え切れないほど診てきた患者の一人」に過ぎなかったでしょう。
しかし、愈史郎を鬼にすることに成功した瞬間からその関係は大きく変わり、同時に珠世さん自身の未来も大きく変わり始めます。
愈史郎が珠世さんを想う気持ちと、珠世さんが愈史郎を想う気持ち、それは、残念ながら同じベクトルではありませんでした。
それだけに、遠い未来、もし本当に珠世さんが生まれ変わったなら、そのときは愈史郎と結ばれてほしい、そう願わずにはいられません。
愈史郎につきましては、こちらの記事でも詳しく紹介していますので、是非ご覧ください。
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