『鬼滅の刃』に限らず、戦いが続いていく作品というものは、あまり強くないキャラクターから順に登場し、本当に強い人は後の方に出てくるのがセオリーですよね。
なのに、まだ序盤である『無限列車編』には、ラスボスの鬼舞辻無惨に極めて近い鬼、上弦の参が、序列を無視して登場します。
やっとのことで『下弦の壱』を倒し、大団円かと思っていたところに突然。
高校野球でパーフェクトゲーム達成目前の相手に、「代打・大谷翔平」を持ってくるぐらいの反則です。
そこで今回は、『上弦の参・猗窩座』という超強者を序盤に持って来た理由について「設定」と「考察」の両方を紹介したいと思います。
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猗窩座が序盤の無限列車編に出て来た理由
猗窩座が無限列車のところに現れたのは、もちろん「鬼舞辻無惨の命令があったから」です。
ではなぜその命令を受けたのが猗窩座だったのでしょうか?
たまたま戦地の近くにいたのが猗窩座だった
原作の設定では、「無惨が探している『青い彼岸花』を、たまたまあの無限列車での戦いの日の夜、近くに猗窩座が探しに行っていた」ということになっています。
また、無限列車で倒された鬼は『下弦の壱』でしたので、それより弱い鬼を鬼狩りたちのところへ向かわせても意味がありません。
となると、必然的に上弦の誰かを行かせることになりますね。
猗窩座はその条件も満たしていたので、無惨から「お前が行け」となったのだと思います。
しかし、これだけでは「理由」としては面白くありません。
設定としてはそうでも、やはりここは「なぜ猗窩座を煉獄杏寿郎の相手に選んだのか」を考察してみたいと思います。
煉獄杏寿郎と戦わせるのに最適なキャラだった
猗窩座は煉獄杏寿郎と戦わせるのに最適なキャラクターだった!
これに尽きるのではないでしょうか。
煉獄さんのような真っ直ぐな人には、猗窩座のような(善し悪しは別にして)一本筋の通った鬼と戦わせるのが、物語としては最適だったのです。
もしあの無限列車編の夜、あそこに現れたのが『上弦の伍・玉壺』だったら(?)なんだかちょっと残念な気が・・・
では、ここからは「設定」と「考察」につきまして、それぞれ詳しく解説していきたいと思います。
【設定】近くで「青い彼岸花」を探していた
猗窩座だけではなく、鬼たちは鬼舞辻無惨から「青い彼岸花」の捜索を命じられていました。
そしてあの夜、無限列車の脱線した場所の近くで、この花を探していたのが猗窩座だったのです。
鬼舞辻無惨はなぜ「青い彼岸花」を探している?
「太陽を克服するための治療薬」として必要だからです。
生まれつき体が弱く、「二十歳になる前に死ぬ」と言われていた無惨は、医者から治療を受けていたにもかかわらず自分の症状が悪化していくことに腹を立て、そのときの医者を殺害しています。
しかし、実は自分の症状が改善していたことを、医者の殺害後に知ったのでした。
普通の人間とは違う体質になっていた
治療のおかげで、無惨は強靱な体を手に入れていました。
しかし、それと引き換えに、普通の人間とは違う体質になってしまっていたのです。
それは「人の血肉を欲すること」と「日の光に当たれないこと」でした。
特に「日の光に当たれないこと」は、昼間の行動が制限されてしまうので、とても屈辱的だったようです。
「人の血肉を欲すること」については、人を食えば解決するので、私にとっては大した問題ではなかった。
「青い彼岸花」は、なぜ千年もの間、見つかっていないのか?
青い彼岸花がなかなか見つからない理由は3つあります。
- 気候などの条件によっては1年に一度も咲かないこともある
- 咲いても昼間のほんの数分から数十分で閉じてしまう
- 閉じてしまうと彼岸花ではなく大きめのツクシのように見える
場所が特定できていない上に「滅多に咲かない」、そして「咲くのは昼間の短い間だけ」となると、無惨や他の鬼たちが見つけるのは、事実上、不可能です。
ところが、作中に登場するキャラクターの中に「青い彼岸花」を見たことがある人がいたのです。
「炭治郎の母、葵枝(きえ)は青い彼岸花の咲く場所を知っており、幼少期の炭治郎はそれを見ていた」、更に「累と戦っていたときに見た走馬灯で一瞬思い出している」
そして、炭治郎が一瞬思い出している場面がこちら。
下の真ん中あたり、彼岸花らしき花がありますね。
ただし、アニメでの走馬灯の場面はコマが小さすぎて、はっきりとはわかりませんでした。
尚、本編で「青い彼岸花」について人間の間で語られているのは「伊之助の子孫が枯らしてしまった」というこのくだりのみです。
【考察】猗窩座は煉獄杏寿郎の相手として最適だった
お待たせしました、ここからが楽しい考察の時間です。
煉獄さんは猗窩座に負けてしまったので「最適な相手だった」という表現の仕方はいささか不謹慎ではありますが、煉獄さんの格好良さをいちばん引き出してくれる鬼、それが猗窩座だったとも言えるのではないでしょうか。
猗窩座が出てくるまでの鬼の登場順
『鬼滅の刃』においても、最初の方に登場するのは、血鬼術が使えない弱い鬼です。
そこから沼の鬼、矢琶羽と朱沙丸、響凱といった「異能を持つ鬼」(=血鬼術が使える鬼)が出てきて、ついに十二鬼月の『下弦の伍』が登場。
『下弦の陸』は飛ばされてしまいましたが、まあ、ひとつぐらいは(?)飛ばしても不自然ではありません。
ところがその次の相手は『下弦の壱』、ここでかなり数字が飛んでいます。
しかしこれに関しても「鬼舞辻無惨が他の下弦の鬼たちを粛清してしまったから」という経緯がインパクトたっぷりに描かれていますので、ここでの「数字飛び」は「生きている鬼の中では序列どおり」でした。
そして問題はここからです。
その次が『上弦の陸』ではなく『上弦の参』、『伍』も『肆』もすっ飛ばして『参』です。
「上弦の上位」だったのは、終盤にもう一度登場させるため
後輩たちの心に残る大きな存在、それが炎柱・煉獄杏寿郎
煉獄さんは物語の中で、『柱』というものが実際にどれぐらい強いのかを、後輩や私たちファンに教えてくれた人です。
煉獄さんよりも前に、水柱・冨岡義勇と蟲柱・胡蝶しのぶが那田蜘蛛山で鬼を倒すシーンはありましたが、相手と力の差がありすぎて、その強さがどれほどのものか、正直言ってわかりづらかったのではないでしょうか。
それだけに、無限列車編での煉獄さんの戦いは、技術はもちろんのこと、精神力の強さも並外れていることがよくわかり、「柱って本当にすごいんだな」と感じさせてくれました。
柱たちが実際に後輩の盾になったり、成長を促したりしている場面は、こちらの記事で紹介していますので、是非ご覧ください。
煉獄さんの強さを最大限に引き出したのが『上弦の参・猗窩座』
そんな「強すぎる柱」の力を最大限に引き出せるのは、やはり上弦の鬼しかいないでしょう。
しかし、もしここで序列通りに上弦の中での下位から登場させ、その鬼が柱を倒してしまったら、その後に登場する更に強い鬼たちとの戦いは「どう辻褄を合わせるの?」ということになってしまいます。
そう考えると、序盤で柱を倒す鬼は上弦の中でも上位の者がふさわしく、更に終盤にもう一度登場してもらうという設定がしっくりときます。
また、序盤と終盤の2回も登場させるということは、ファンにとっても印象深く、次に登場するときはワクワク感が高まるようなキャラクターでなければいけません。
「こいつ、また出てきたのか・・・」と思われてしまうようなキャラではダメなのです。
猗窩座と煉獄さんは似た者同士
セリフも気持ちも真っ直ぐな二人
これは煉獄さんに対する猗窩座の単刀直入すぎるスカウトのセリフです。
しかし、単刀直入さでは、煉獄さんも猗窩座に負けていません。
また、テレビアニメの無限列車編では、弁当売りの女の子「ふくちゃん」に言ったセリフに対し、要(かなめ・煉獄さんのカラス)からも突っ込まれていた場面がありましたね。
「やあ、こんばんは。気持ちのいい月夜ですね。俺は鬼を探している者。鬼を見ていませんか?」
「杏寿郎様!単刀直入が過ぎます!!」
カラスに突っ込まれる煉獄さんも、柱にツッコミを入れるカラスも、どちらも可愛いかったです。
そしてその「要」は翌朝、おそらくこれまででいちばん辛い任務を果たすために、無限列車の上から飛び立ったのでした。
柱の鎹鴉には、全部名前がついている
メインキャラと柱たちの鎹鴉(かすがいがらす)には、「要」と同じようにちゃんと名前がついています。
また、ほとんどのカラスは担当している隊員の性別と同じ(煉獄さんのカラスはオス、甘露寺蜜璃のカラスはメス、といった具合)なのですが、一羽だけ性別の違う隊員と組んでいるカラスがいますので、こちらの記事で探してみてください。
真正面からぶつかる戦いだった「煉獄杏寿郎」vs「猗窩座」
猗窩座は、人間時代に習った「素流(そりゅう・素手のみで戦う武術)」の姿勢を鬼になってからも貫いています。
煉獄さんとの戦いの中でも、刃を拳で受けている、といいますか、叩いている場面が何度かありました。
もちろん、猗窩座は腕を切断されてもすぐに再生するので、斬られることを恐れる必要がないからではあるのですが、実は猗窩座は人間時代から、刀に対して素手で戦う術も身に付けていたのです。
その技のひとつが「鈴割り」で、これは「相手の刀を側面から拳でたたき折る」というものでした。
これが「鈴割り」という技なのだと思います。
刃に向かって素手の拳を出していくのは「鬼だから」ではなく、昔からの戦い方のひとつだったわけですね。
猗窩座は、体を分裂させたり、体から変なものを出して攻撃したりする、などという卑怯な戦法は持ち合わせていないのです。
だからこそ、煉獄さんのような、気持ちも戦い方も真っ直ぐな人間と戦うにふさわしい相手として登場したのではないでしょうか。
煉獄さんを好き過ぎて「殺したくない」と思っていた猗窩座
猗窩座は無惨から鬼狩りの剣士たちを始末してくるように命じられていたはずです。
そして猗窩座も、最初はそのつもりだったでしょう。
ところが実際に煉獄さんを見て「こいつは強いヤツだ」とすぐに感じ取り、いきなり鬼にスカウトしてきます。
しかしここでも単刀直入な煉獄さんに「(鬼には)ならない」と秒殺で断られ、そこから二人の戦いが始まっていきました。
戦いが進むほど猗窩座は煉獄さんに惚れ込んでいき、誘い文句も最初の「鬼にならないか?」から「鬼になろう」、「鬼になれ」、そして最後は「鬼になると言え!」とだんだん激しくなっていきます。
しかしこの最後のセリフ、字面だけを切り取ると命令のように見えますが、実際の猗窩座の様子からは、命令ではなく「切実な願い」だったような気がします。
猗窩座の煉獄さんへの想いが詰まった熱烈スカウトの様子は、こちらの記事をご覧ください。
まとめ
猗窩座が無限列車に現れた理由は【煉獄杏寿郎と戦わせるのに最適なキャラクターであった】と考察しました。
猗窩座は、煉獄さんが自分自身に対し「限界を超えろ」と鼓舞させるほどの強い相手でした。
無限列車編での煉獄さんは、たくさんの人を魅了し、感動させてくれました。
この戦いにおいて、煉獄杏寿郎という男の「真の強さ」を私たちファンに余すところなく伝えてくれたのが、他でもない猗窩座だったのではないでしょうか。
しかし、煉獄さんに執着しすぎて炭治郎たちを始末し損ねたことが、後々、自身の首を絞めることになったのは皮肉な結果でしたね。
その猗窩座の最後の戦いにつきましては、こちらの記事をご覧ください。
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