我妻善逸の元兄弟子であり、自ら鬼に跪き、鬼になる選択をした上弦の陸・獪岳。
同じ雷の呼吸を指南された善逸は壱ノ型のみ、獪岳は壱ノ型以外の弐~陸ノ型を習得し、育ての元鳴柱・桑島慈悟郎には二人で雷の呼吸の継承者とされていました。
ひたむきに努力を重ねる一面を持っていた獪岳ですが、鬼殺隊士時代は柱ではなく、一隊員でした。
今回は獪岳はなぜ柱になれなかったのかについて、考察していきたいと思います。
獪岳はなぜ柱になれなかったのか
獪岳の人物像
獪岳はどのような人物なのかを紐解いていきながら、柱になれなかった理由について考えていきましょう。
強い者を尊敬し、弱き者には激しい嫌悪を持つ
獪岳の初登場シーンは、善逸が那田蜘蛛山で兄蜘蛛鬼との対峙の中での回想シーンです。
消えろよ わかるだろ?
朝から晩までビービー泣いて恥ずかしくないのかよ 愚図が
お前みたいな奴に割く時間がもったいない
先生はな凄い人なんだ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第4巻 第34話
顔の表情などが描写されず、辛辣に善逸を叱咤する言動だけが描かれています。
元柱であった育手の桑島に対しては最大の尊敬の念を口にする一方で、自分より格下の者には激しい嫌悪を持ち、善逸には格別の不快感を露わにしています。
自己評価が異常に高い
爺が苦しんで死んだなら清々するぜ
あれだけ俺が尽くしてやったのに俺を後継にせず
テメェみたいなカスと共同で後継だと抜かしやがったクソ爺だ
元柱だろうが耄碌(もうろく)した爺に用はないからな
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第17巻 第144話
獪岳が鬼になった責任を取る形で、育手である爺ちゃん(桑島慈悟郎)が介錯もつけずに腹を切って自害したことを善逸が告げると、獪岳は清々すると豪語します。
自分を自分より格下だと感じる善逸と同等に扱い、二人で共同で雷の呼吸の後継者とした桑島の、自分に対する評価を不服に感じ、”耄碌した”などと切り捨てました。
自分を(自分が評価するほどに)評価しない人間は悪だとし、正しく自分を評価する者につくなどと、自分が鬼になることを選択したことを正当化するような発言も…。
自分より格上の存在には鬼であっても安易に跪(ひざまず)く
圧倒的強者に跪くことは恥じゃない 生きてさえいれば何とかなる
死ぬまでは負けじゃない 地面に頭をこすりつけようが 家が無かろうが泥水をすすろうが
金を盗んだことを罵られようが 生きてさえいれば
いつか勝てる 勝ってみせる そう信じて進んできたんだ
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第17巻 第145話
弱者には激しい嫌悪を露わに凄む一方、強者に対してはへつらいすぐに服従する姿勢を見せる獪岳。
そこには、服従しへつらうことよりも、生きてさえいればいつか勝てるという強い思いがあったことがわかります。
生に対する強い執着心、そして、そうなるに等しい過酷な幼少期の環境も強い影響がありました。
自分が生き残る為には恩人や仲間をも売る
柱稽古で岩柱・悲鳴嶼行冥の元で修行を終えた炭治郎に行冥が子供を信用できなくなったきっかけを話すシーンにおいて、子供だった頃の獪岳が登場します。
行冥の言いつけを守らず、鬼に遭遇し、自分が助かる為に自分以外の子供らと行冥を喰わせる約束をした子供、それが獪岳でした。
そのことがきっかけとなり、行冥は必死に子供を守る為に戦ったのにも関わらず誤解を受け、処刑寸前の所をお館様に救われています。
※獪岳は身寄りのない境遇で、さらにこの日は獪岳がお寺のお金を盗んだことを他の子供たちに責められ、寺を追い出された後、鬼に遭遇するという状況でした。
何の為にお金を盗んだのか等詳細については明らかにされておりませんが、過酷な幼少期を過ごしてきたことはわかります。
そして、憶測ですが、お金を盗んだことを責められ寺を追い出されたことが、鬼に仲間を売る行動のきっかけになっているのではないかとも考えられますね!
上弦の壱・黒死牟と遭遇した際も、自分の鬼殺隊としての立場や、育手の桑島のことなど一切頭には無く、自分が生き延びる為の私利私欲のみで鬼になることを選択しています。
自分さえ良ければ周りがどうなろうと全く顧みない、周りのことなど考えることもない、それが獪岳の深層心理です。
その結果、周りがどのような悲惨な状況になったとしても、当然だ、知ったことじゃないと言い放つ自分の異常さにも全く気が付いていない様子です。
鬼になるまでは剣技にひたむきに努力していた
そんな獪岳ですが、寺を出た後、桑島に師事していた頃は剣技に対し、真面目に修行に励んでいました。
獪岳が壱ノ型のみできないことに陰口を叩く先輩隊士に対し、獪岳を尊敬していた善逸は殴りかかったことがあります。
共に育手の桑島の元で鍛錬を続ける獪岳の真面目でひたむきな姿を、善逸は尊敬し、兄弟子として共同生活をする中で、大切に想っていたからでした。
また、桑島が”獪岳を見習え”と善逸を叱咤する様子も描かれているので、師範も認めるほど、雷の呼吸の剣技を習得するために一生懸命に取り組んでいたのでしょう。
善悪の基準が自分中心
善逸:もう善悪の区別もつかなくなったんだな?
獪岳:善悪の区別はついてるぜ!!
俺を正しく評価し認める者は”善”!!
低く評価し認めない者は”悪”!!
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第17巻 第145話
獪岳の放つ雷の呼吸の連撃を見た善逸に、獪岳が鬼になっただけでなく、大勢の人を喰ったことで力を増強していることを悟りました。
善悪の区別さえ失ったと言われた獪岳が答えた言葉が本当に自己中心的で、かつて兄弟子だったとは思えないほどに幼稚です。
自己中心的な承認欲求はここまで強いと異様ですし、善悪の判断とはかけ離れています。
人を信じない、そして認めない
善逸が雷の呼吸・漆ノ型・火雷神(ほのいかづちのかみ)を繰り出し、獪岳の頸を斬ると、獪岳は桑島が善逸に贔屓をし、自分には教えない技を善逸だけに教えたと激しく悔しがりました。
しかし、桑島はそのようなことはしておらず、この技は鍛錬を続けた善逸が獪岳と共に鬼を討伐する為に考えたオリジナルの型でした。
獪岳は育手の桑島を信じないばかりか、弟弟子である善逸の力も信じず、認めませんでした。
死の間際までも、勝ち負けに拘り、愈史郎に”一人で死ぬのは惨めだな”と窘められました。
柱とはどんな人物がふさわしいのか
当主が信を置く精鋭隊士たち
鬼殺隊で最も位の高い剣士、それが「柱」である。
十二鬼月を倒すか、鬼を五十体倒すことが倒すことが柱になるための条件。
柱が不在となった場合、階級が甲の隊士から選ばれるが、上記の条件を満たしていなければ認められず空席のままとなる。
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 公式ファンブック 鬼殺隊見聞録
公式ファンブックに、お館様が信頼できる強く鋭い力を持つ鬼殺隊隊士で最も位の高い剣士が柱となると記載があります。
また、十二鬼月を倒すか、鬼を五十体倒すことが倒すことが条件とも。
まず、獪岳はお館様の信頼を得るに足る人物という時点で、非常に厳しいですね。
鬼になるまでは、剣技にひたむきで真面目に取り組んでいたものの、自分が生き残る為には恩人や仲間をも売った経験が何度もあり、信用に足る人物からは真っ先に弾かれます。
煉獄杏寿郎:柱なら後輩の盾となるのは当然だ
柱ならば誰であっても同じことをする 若い芽は摘ませない
©吾峠呼世晴/集英社 鬼滅の刃 第8巻 第66話
無限列車編の最後に、上弦の参・猗窩座から、炭治郎達後輩や、列車の乗客たちを身をもって守り抜いた炎柱・煉獄杏寿郎。
自分の非力を責めることのないよう、後輩である炭治郎たちに対し、柱であれば誰でも後輩の盾となり、戦うことを説きました。
強い者を尊敬し、弱き者には激しい嫌悪を持つ獪岳であれば、人間よりも不死身の体を手にしている鬼に敬意を表し、自分より弱い者は切り捨てていたでしょうから、柱の領域には達しないでしょう。
また、人を信じず認めない性格からも、仲間や後輩などを信じることができず、認められないので共闘など以ての外、自己中心的な考えの元、誰からの尊敬や信頼も得ることができないと思われます。
そして、自分の命、生きて勝つことに執着する獪岳は、自分が生き延びる為ならば、後輩の盾になるどころか、後輩を盾にしてまでも自分が生き残ろうと画策することは想像に難しくありません。
さらに極めつけは、善悪の基準が自分中心で 「俺を正しく評価し認める者は”善”!!低く評価し認めない者は”悪”!! 」などと平気で答えるのですから、既に論外ですね。
以上の理由から、獪岳は非常に自己中心的で視野の狭い人物で、柱にはふさわしくない、さらには人の心よりもむしろ心に鬼が巣くっているような人物であった為、柱にはなれなかったと考えられます。
まとめ
今回は獪岳はなぜ柱になれなかったのかについて、考察してきましたがいかがでしたでしょうか。
まとめると
- 獪岳は自分が生き残る為には恩人や仲間をも売るという、お館様の信用に足る人物ではなかった
- 強い者を尊敬し、弱き者には激しい嫌悪を持つ獪岳は、人間よりも鬼に敬意を表し、自分より弱い者は守るどころか切り捨てることは想像に難くない
- 仲間や後輩などを信じることができず、認められないので共闘など以ての外、自己中心的な考えの元、誰からの尊敬や信頼も得ることができない
- 生きて勝つことに執着する獪岳は、自分が生き延びる為ならば、後輩の盾になるどころか、後輩を盾にしてまでも自分が生き残ろうと画策する
- 善悪の基準が自分中心で 「俺を正しく評価し認める者は”善”!!低く評価し認めない者は”悪”!! 」という時点で既に論外
獪岳の、家も無く泥水をすするほどの幼少期の過酷な環境はとても不憫に思います。
しかし、同じ環境であったとしても、自己中心的な人物になるか否かはその人の人となりが大きく影響するものと思います。
育手の桑島と出会い、剣技に真面目に取り組む姿も有ったにも関わらず、最終的には過酷すぎる環境に心まで蝕まれてしまったことは本当に残念で痛ましい思いがしますね。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
引き続き鬼滅の刃をお楽しみください。
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