[*如何に(いか-に)…物事の状態、様子、作用などを疑問に思い、ためらったり問いかけたりする意を表す。/どうなっているのかわからない対象物に対して話し相手に聞いてみたり予想したりする意を表す。]
鬼になれば、
無限の刻(とき)を生きられる。
私の与(あ)える血の量(りょう)に
耐(た)えられればの話だが。
みなさん【鬼滅の刃】毎日感じてますか?
心をド派手に燃やしてますか?🔥
さて、今回の記事は、鬼の始祖・鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)の直属(ちょくぞく)の部下に選ばれた、“十二鬼月(じゅうにきづき)・上弦の鬼(じょうげんのおに)たちの最後”に注目したいと思います!
題して、
【鬼滅の刃】上弦の鬼・最後。
十二鬼月に選ばれた
“上弦の鬼の最後”は如何に。
として【鬼滅の刃】“上弦の鬼の最後”についてご紹介します。
画面に[全集中!]でお付き合いください。
TVアニメ【鬼滅の刃】のみの閲覧の方は、“ネタバレ注意”です。
【鬼滅の刃】上弦の鬼・最後<十二鬼月とは?>
- 十二鬼月は、上弦(じょうげん)と下弦(かげん)とに分かれている。
- 順番としては、[上弦の壱(いち)・弐(に)・参(さん)・肆(し)・伍(ご)・陸(ろく)]、[下弦の壱・弐・参・肆・伍・陸]。
- 1番強いのは[上弦の壱]、
- 1番弱いのは[下弦の陸]。
十二鬼月(上弦) | 名前(ふりがな) |
上弦の壱 | 黒死牟(こくしぼう) |
上弦の弐 | 童磨(どうま) |
上弦の参 | 猗窩座(あかざ) |
上弦の肆 | 半天狗(はんてんぐ) |
上弦の伍 | 玉壺(ぎょっこ) |
上弦の陸 | 堕姫(だき) 妓夫太郎(ぎゅうたろう) |
<新>上弦の肆 | 鳴女(なきめ) |
<新>上弦の陸 | 獪岳(かいがく) |
十二鬼月(下弦) | 名前(ふりがな) |
下弦の壱 | 魘夢(えんむ) |
下弦の弐 | 轆轤(ろくろ) |
下弦の参 | 病葉(わくらば) |
下弦の肆 | 零余子(むかご) |
下弦の伍 | 累(るい) |
下弦の陸 | 釜鵺(かまぬえ) |
元・下弦の陸 | 響凱(きょうがい) |
他の鬼の名前一覧はこちらの記事をどうぞ。
【鬼滅の刃】上弦の鬼・最後<討伐された順番>
鬼殺隊士(きさつたいし)に、最初に討伐(とうばつ)された上弦の鬼は、上弦の陸の堕姫と妓夫太郎の兄妹(きょうだい)です。
<討伐された順番>
- 上弦の陸・堕姫(だき)/妓夫太郎(ぎゅうたろう)
- 上弦の伍・玉壺(ぎょっこ)
- 上弦の肆・半天狗(はんてんぐ)
- <新>上弦の陸・獪岳(かいがく)
- 上弦の参・猗窩座(あかざ)
- 上弦の弐・童磨(どうま)
- 上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)
- <新>上弦の肆・鳴女(なきめ)
上弦の鬼たちは、どのようにして最後を迎(むか)えたのか、<消滅するまでの経緯(けいい/いきさつ)>を“討伐された順番”で見ていきます。
【鬼滅の刃】上弦の鬼・最後<消滅するまでの経緯>
討伐(とうばつ)された順
⑴上弦の陸・堕姫(だき)/妓夫太郎(ぎゅうたろう)
経緯
吉原(遊郭)を根城(ねじょう)にしていた鬼の兄妹(きょうだい)。
普段は妹の堕姫が花魁(おいらん)として行動しているが、戦闘(せんとう)などの有事(ゆうじ)の際は、堕姫の体内に潜(ひそ)んでいる兄・妓夫太郎が出てくる。
俺たちは2人で1つだからなあ。
上弦の陸・堕姫と妓夫太郎の倒し方、それは、<同時に頸(くび)を斬(き)る>こと。
「譜面(ふめん)」が完成した。
堕姫と妓夫太郎、2つの頸(くび)を同時に落とすため、[音柱]と隊士も二手(ふたて)に分かれて戦った。
- 堕姫:我妻善逸・嘴平伊之助
- 妓夫太郎:宇髄天元・竈門炭治郎
堕姫と妓夫太郎の頸(くび)を同時に落とすことに成功
炭治郎は、堕姫と妓夫太郎の兄妹(きょうだい)の生死を確かめるため、禰豆子に背負(せお)われ移動し、堕姫と妓夫太郎の匂(にお)いを辿(たど)った。
匂いを辿ると、死に際(ぎわ)に頸(くび)だけで、醜(みにく)い兄妹(きょうだい)喧嘩(げんか)を繰(く)り広げていた―――。
なんで助けてくれなかったの!?
俺は柱を相手にしてたんだぞ!
だから何よ!!なんでトドメを
刺(さ)しとかなかったのよ!
行こうとしてた!!
耳飾(みみかざ)りをつけたガキが生きていたから先に始末(しまつ)しようと思ったんだ!そもそもお前は何もしてなかったんだから柱にトドメくらい刺しておけよ!
じゃあそういうふうに
操作(そうさ)すればよかったじゃないアタシを!それなのに何もしなかった!油断(ゆだん)した!
うるせえんだよ!
仮にも上弦だって名乗るんならなぁ!手負(てお)いの下っぱ二匹くらい一人で倒(たお)せ馬鹿(ばか)!!
・・・アンタみたいに醜(みにく)い奴がアタシの兄妹なわけないわ!!
11巻・第95話[最期]
堕姫と妓夫太郎の兄妹喧嘩は、さらに激しさを増す
アンタなんかとはきっと
血も繋(つな)がってないわよ!
だって全然似(に)てないもの!!
この役立たず!!
強いことしかいい所が無いのに何も無いのに負けたらもう何の価値もないわ!出来損(できそこ)ないの醜(みにく)い奴よ!!
ふざけんじゃねぇぞ!!
お前一人だったらとっくに死んでる!どれだけ俺に助けられた!
出来損ないはお前だろうが。弱くて何の取り柄(え)も無い、お前みたいな奴を今まで庇(かば)ってきたことが心底(しんそこ)悔(く)やまれるぜ。
お前さえいなけりゃ、
俺の人生はもっと違ってた!
お前さえいなけりゃなあ!!
何で俺がお前の尻拭(しりぬぐ)いばっかりしなきゃならねえんだ!!
お前なんか生まれてこなけりゃ良かっ・・・
兄妹喧嘩を止める炭治郎
互(たが)いを兄妹と認めず、罵(ののし)り合っている様子を見て、炭治郎は妓夫太郎の口を塞(ふさ)いだ。
嘘(うそ)だよ。本当はそんなこと
思ってないよ。全部、嘘だよ。
仲良くしよう、この世でたった二人の兄妹なんだから。
炭治郎の言葉に堕姫は「うるさいんだよォ!!」「糞(くそ)ガキが!向こう行けぇ!どっか行けぇ!」と、ぞんざいに言い放(はな)った―――。
悔(くや)しいよぅ、悔しいよぅ。
なんとかしてよォ、お兄ちゃあん!!死にたくないよォ!お兄っ・・・
堕姫が「お兄ちゃん」と叫び泣きながら、この世から消滅(しょうめつ)した―――。
梅!!
妓夫太郎は消えゆく堕姫の姿を見て、忘れていた人間だったころの妹の名前と過去を思い出した。
11巻・第96話[何度生まれ変わっても(前編)]
地獄での堕姫と妓夫太郎
気づくと妓夫太郎は暗闇(くらやみ)の中に立っていた。
何だあ、ここは…地獄か?
そこに、生前の姿の妹・堕姫ではなく、幼い頃の梅が現れた―――。
この場所を出たいとせがむ、妹の梅に対して、妓夫太郎は何も言わずに梅の元を立ち去ろうとする。
「そっちが出口?」と梅が妓夫太郎について行こうとすると、「ついて来んじゃねえ!!」と妓夫太郎は冷たく梅に言い放った。
「さっきのこと怒ったの?謝るから許してよ」
「お兄ちゃんのこと醜いなんて思ってないよォ!!悔しかったの!負けて悔しかったの!アタシのせいで負けたって認めたくなかったの」
「ごめんなさい!うまく立ち回れなくって。アタシがもっとちゃんと役に立ってたら負けなかったのに、いつも足引っ張ってごめんなさい」
「ねぇ、お兄ちゃん」
11巻・第97話[何度生まれ変わっても(後編)]
「お前とはもう兄妹でも何でもない。俺はこっちに行くから、お前は反対の方、明るい方へ行け」
11巻・第97話[何度生まれ変わっても(後編)]
梅は、妓夫太郎の背中に飛び乗った―――。
「離れない!!絶対離れないから!ずっと一緒にいるんだから!!」
「何回生まれ変わっても アタシはお兄ちゃんの妹になる絶対に!!」
「アタシを嫌わないで!!叱らないで!!一人にしないで!!」
「置いてったら許さないわよ」
「わぁぁあん!ずっと一緒にいるんだもん!ひどいひどい!約束したの、覚えてないの!?」
「忘れちゃったのォ!!」
11巻・第97話[何度生まれ変わっても(後編)]
妓夫太郎は梅との約束を思い出した。
「俺たちは二人なら最強だ。寒いのも腹ペコなのも全然へっちゃら。約束する。ずっと一緒だ。絶対離れない。ほらもう何も怖くないだろ?」
11巻・第97話[何度生まれ変わっても(後編)]
妓夫太郎は、泣きじゃくる妹・梅を背負(せお)ったまま、2人は業火(ごうか)の中に消えていった―――。
[*業火(ごうか)…⑴悪業が身を滅ぼすことを火にたとえていう語。⑵地獄の罪人を苦しめる猛火(もうか)。激しい炎や大火(たいか)のたとえにもいう。]
⑵上弦の伍・玉壺(ぎょっこ)
経緯
[霞柱]時透無一郎が上弦の肆・半天狗の分裂(ぶんれつ)した可楽(からく)に吹き飛ばされた先で、上弦の伍・玉壺(ぎょっこ)と遭遇(そうぐう)し、刀鍛冶(かたなかじ)を守りながらの戦いに―――。
ヒョッヒョッ。
初めまして、私は玉壺と申すもの。
殺す前に少々よろしいか?
是非(ぜひ)とも私の作品を見ていただきたい!
刀鍛冶達の死体を「芸術作品」としておぞましく飾(かざ)り立てた事で無一郎の逆鱗(げきりん)に触(ふ)れる。
おい。
いい加減にしろよ、クソ野郎が
血鬼術「千本針(せんぼんばり)魚殺(ぎょさつ)」で無一郎に毒を浴(あ)びせ、さらに「水獄鉢(すいごくばち)」に閉じ込め溺死(できし)寸前にまで追い詰(つ)めるなど、当初は優勢(ゆうせい)であった。
しかし、自身を無視して刀を研(と)ぎ続ける鋼鐵塚蛍(はがねづかほたる)に同じ”芸術家”としてのプライドから対抗心(たいこうしん)を燃やし、殺害せず妨害(ぼうがい)に執心(しゅうしん)する。
その結果、無一郎が懸命に自分を助けようする小鉄に触発(しょくはつ)されて復活することを許(ゆる)してしまう。
さらに、無一郎が過去の記憶を取り戻し、痣(あざ)を発現させたことで形勢(けいせい)は逆転。
痣の効果で絶好調となった無一郎に、「君には尊敬できる所が一つもない」「見た目も喋り方もとにかく気色が悪い」と貶(けな)されまくり、玉壺もそれに対しては動揺(どうよう)することなく、無一郎を「便所虫(べんじょむし)」「ちんちくりん」などと貶(けな)し返したが―――。
突如(とつじょ)として始まる悪口合戦
なんかその壺(つぼ)、
形(かたち)歪(ゆが)んでない?
左右対称に見えないよ。
下っ手(へった)くそだなあ。
13巻・第120話[悪口合戦]
自慢(じまん)の壺を「下っ手くそだなあ」と侮辱(ぶじょく)された玉壺は・・・・・・、
それは貴様(きさま)の目玉が
腐(くさ)っているからだろうがアアアア!!!
私の壺のオオオオ!!
どこが歪(ゆが)んでいるんだアアア!!!
と激怒(げきど)した。
ブチ切れた玉壺は無一郎に対し、「一万滑空粘魚(いちまんかっくうねんぎょ)」を繰(く)り出すが、それすらも軽くいなされてしまった。
お前には
私の「真(しん)の姿」を見せてやる。
私の「真の姿」、本気を出した時、
生きていられた者はいない。
かくなる上はと「真の姿」になって猛攻(もうこう)を仕掛(しか)けるも、[霞(かすみ)の呼吸・漆(しち)の型・朧(おぼろ)で己の最高速度を上回る速さで頸(くび)を斬(き)られた。
頸を斬られた玉壺は・・・
それでもなお、敗北を認められず、「人間の分際(ぶんざい)でよくもこの玉壺様の頸をよくもォ!!」 「貴様ら百人の命より私の方が価値がある!選ばれし!!優れた!!生物なのだ」 「弱く!!生まれたらただ老(お)いるだけの!!つまらぬ下らぬ命を私が私がこの手!! 神の手により高尚(こうしょう)な作品にしてやったというのに」「この下等(かとう)な蛆虫(うじむし)共・・・」 と、もはや負け惜(お)しみですらない罵詈雑言(ばりぞうごん)を吐(は)き散(ち)らした。
[*罵詈雑言(ばりぞうごん)…聞く側が不快に思うほどの口汚い言葉をまくしたてるという意味のこと。]
もういいからさ、
早く地獄に行ってくれないかな。
と、さらに頸を横半分に斬られ黙(だま)らされ、そのまま絶命(ぜつめい)した。
⑶上弦の肆・半天狗(はんてんぐ)
経緯
刀鍛冶の里にて戦闘。
居合(いあ)わせた[恋柱]甘露寺蜜璃、及(およ)び、竈門兄妹と不死川隊士が応戦(おうせん)。
「悪いやつらは喜怒哀楽が倒してくれる…」
半天狗は、頸(くび)を斬られると分裂して若い頃の自分を模(も)した分身を生み出す厄介(やっかい)な血鬼術を持っていた。
血鬼術[分裂能力]喜・怒・哀・楽
そのカラクリは本体の半天狗が強いストレスにさらされ、窮地(きゅうち)に陥(おち)いれば陥いる程(ほど)に、それぞれの感情に対応した凶悪無比(きょうあくむひ)な分身体が次々と生み出されるというもの。
舌(した)に喜怒哀楽の文字が刻(きざ)まれた4人の分身は、鬼というよりも血鬼術が生み出した産物(さんぶつ)。
- 空を自在に飛び音波(おんぱ)攻撃を放(はな)つ空喜(うろぎ)
- 錫杖(しゃくじょう)から電撃(でんげき)を繰(く)り出す積怒(せきど)
- 三叉(みつまた)槍(やり)の使い手の哀絶(あいぜつ)
- 八つ手の葉の団扇(うちわ)で突風(とっぷう)を起こす可楽(からく)
他にも、必要とあらば喜怒哀楽の鬼を複合させた憎珀天(ぞうはくてん)、相手を欺(あざむ)く為の“恨(こん)の鬼(仮)”まで即座に生み出している。
半天狗の本体は、鼠(ねずみ)程度の大きさしかなく、舌には「怯(きょう)」の文字が刻(きざ)まれている。
小さい上に、すばしこく逃げ回りとどめを刺すまでに隊士を手こずらせた。
半天狗の厄介な逃げっぷり
血鬼術によって生み出した鬼で自分の身を守る半天狗。
積怒(せきど)が他の3人を吸収・合体し、最強の分身となった憎珀天(ぞうはくてん)は、痣(あざ)を発現した[恋柱]甘露寺蜜璃が押さえ、炭治郎たちは、舌に「怯」の文字が刻(きざ)まれた本体を追いかける。
見つけた。心臓の中。
今度こそお終(しま)いだ、卑怯者(ひきょうもの)。
そして、心臓に隠れていた半天狗の本体めがけ、刀を振り下ろした。
なんじゃこれは…、
走馬灯(そうまとう)か?
走馬灯が駆(か)け抜(ぬ)けた半天狗は、ようやく消滅し始めた。
本体の頸を斬ったことで、血鬼術で生み出した憎珀天(ぞうはくてん)も消滅、塵(ちり)となって消えた。
炭治郎君たち、
本体の頸(くび)を斬(き)ったんだわ!
みんなで勝ったのよ!
みんなの力で!すごいことよ!
半天狗、討伐完了。
⑷<新>上弦の陸・獪岳(かいがく)
経緯
育手(そだて)の元[鳴柱(なりばしら)]桑島慈悟郎(くわじまじごろう)の下(もと)で学んでいた、我妻善逸の元・兄弟子(あにでし)。
鬼になったお前を、
俺はもう兄弟子とは思わない。
鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)の本拠(ほんきょ)である無限城にて、善逸と対峙(たいじ)した獪岳。
俺がカスなら
アンタはクズだ!
壱ノ型(いちのかた)しか
使えない俺と、
壱ノ型だけ
使えないアンタ!
後継(こうけい)に
恵まれなかった
爺(じい)ちゃんが
気の毒でならねぇよ!
テメェと俺を
一緒にすんじゃねぇ!!!
死んで当然なんだよオオ!!
爺(じじい)もテメェもォオ!!
俺を正しく評価し
認める者は“善”!!
低く評価し
認めない者が“悪”だ!!
善逸との戦いでは、雷の呼吸に加えて鬼化で得た相手の体を崩壊させる血鬼術を組み合わせた技で、善逸に致命傷(ちめいしょう)に近い傷を負(お)わせ、複数の型を持つ獪岳が優勢(ゆうせい)かに思われたが、善逸が新たに編(あ)み出した漆ノ型(しちのかた)により、頸(くび)を刎(は)ねられ、決着がついた。
これは、俺だけの型だよ。
俺が考えた、俺だけの型。
この技でいつかアンタと肩(かた)を並(なら)べて戦いたかった…。
17巻・第145話[幸せの箱]
善逸に敗北した事実を受け入れられず
耐(た)えられない、耐えられない!!そんな事実は受け入れられない!!あんな奴に俺が?俺が負けるのか?頭が変になりそうだ。
散々見下していたはずの善逸が、自分だけの新たな型を生み出だしていた。
そして、自分がその技を受けて敗北する。
その事実を受け入れられない混乱の中で、力尽(つ)きた善逸も死ぬ以上負けではないと、ほくそ笑(え)むが、そこに愈史郎(ゆしろう)と他の隊士が駆(か)けつけて善逸を救出する。
そして、死の間際(まぎわ)、愈史郎から冷ややかに諭(さと)された。
人に与えない者は、いずれ人から、
何も貰(もら)えなくなる。
欲しがるばかりの奴は、
結局何も持ってないのと同じ。
自分では何も生み出せないから。
あらゆるものを踏(ふ)みにじってまで保(たも)とうとしていた己の自尊心(じそんしん)が覆(くつがえ)しようのない形で折(お)れていく事実に、もはや声にならない断末魔(だんまつま)を上げながら消滅した。
⑸上弦の参・猗窩座(あかざ)
経緯
柱を含(ふく)む多くの鬼殺隊士が突入した無限城にて、轟音(ごうおん)と共に天井をぶち抜(ぬ)きながら、炭治郎と[水柱]冨岡義勇たちの前に現れた猗窩座。
久しいなァ、よく生きていたものだ。お前の様な弱者が。
最初こそ炭治郎を侮(あなど)り、初対面の時のように無言で殺しにかかるが、度重(たびかさ)なる上弦との激戦や死の縁(ふち)を彷徨(さまよ)うほど厳(きび)しい修行(しゅぎょう)稽古(けいこ)を乗り越(こ)えた炭治郎は、柱にも匹敵(ひってき)するほどの実力を持つ剣士へと成長していた。
炭治郎、お前のその実力は、柱に届くと言っても過言ではない。
炭治郎の予想外の反撃(はんげき)に面食らった表情を見せていたが、炭治郎を強者と認め、自分も血鬼術を発動して迎(むか)え撃(う)つ。
“この少年は弱くない、侮辱するな”。杏寿郎の言葉は正しかったと認めよう。さあ始めようか。
宴(うたげ)の時間だ。
[水柱]冨岡義勇を交(まじ)えての戦いとなるも2対1の不利(ふり)をものともせず、義勇を「破壊殺(はかいさつ)・脚式(きゃくしき)・流閃群光(りゅうせんぐんこう)」で彼方(かなた)へ蹴(け)り飛ばした。
俺が嫌いなのは弱者のみ。
俺が唾(つば)を吐きかけるのは弱者に対してだけ。
そう、弱者には虫唾(むしず)が走る、反吐(へど)が出る。
淘汰(とうた)されるのは自然の摂理(せつり)に他ならない。
[*淘汰(とうた)…⑴水で洗ってより分けること。転じて、不必要なもの、不適当なものを除き去ること。⑵環境に対応した生物が子孫を残し、他は滅びる現象。選択。⑶流水や風による運搬の過程で、堆積物(たいせきぶつ)が粒径(りゅうけい)・形状・比重などに応じて選別される現象。]
猗窩座は自身の考えを吐露(とろ)する。
生まれた時は誰もが弱い赤子だ。
誰かに助けてもらわなきゃ
生きられない。
強い者は弱い者を助け守る。
そして弱い者は強くなり、
また自分より弱いものを助け守る。
これが自然の摂理だ。
猗窩座自身の考えを真っ向(まっこう)から否定され、炭治郎の発言に誰かの幻影(げんえい)を見た。
「透き通る世界」を開眼した炭治郎
猗窩座との戦いの中で急成長し「透き通る世界」を開眼した炭治郎。
体中の細胞(さいぼう)が、産毛(うぶげ)に至(いた)るまで今すぐコイツを殺せと言っている。
コイツには何らかの変化が起きた。危険だ!!
明らかに今までと様子の異(こと)なる炭治郎に猗窩座は危険を察知(さっち)する。
猗窩座は炭治郎と義勇の2人をまとめて仕留(しと)めようと「術式展開(じゅつしきてんかい)・終式(しゅうしき)・青銀乱残光(あおぎんらんざんこう)」を放(はな)った。
義勇に多大なダメージを与えるが、「透き通る世界」を開眼させ、闘気(とうき)を感じさせない炭治郎にはほぼ回避(かいひ)された。
猗窩座!!
今からお前の頸(くび)を斬(き)る!!
遂(つい)には「ヒノカミ神楽(かぐら)・斜陽転身(しゃようてんしん)」によって真っ向から頸(くび)を落とされたのだった。
頸(くび)を落とされた猗窩座は別の生き物へ
“まだだ!!まだ戦える!!俺はまだ強くなる”
“終われない、こんな所で、俺は強くなる。誰よりも強くならなければ、強く、もっと強く…!!”
頸(くび)を落とされ、頭が消滅したにも関わらず強さへの執念(しゅうねん)から別の生き物に変貌(へんぼう)を遂(と)げつつ戦闘を続行。
再度「破壊殺・羅針(らしん)」を展開し、すでに体力の限界を超えた炭治郎の脇腹に蹴(け)りを見舞い失神させ、トドメを刺そうとする。
炭治郎を殺したければ、
まず俺を倒せ…!!
二度と目の前で仲間や家族を死なせまいと、自らも満身創痍(まんしんそうい)の身でありながら必死に炭治郎を庇(かば)う義勇を前にして、猗窩座は再び誰かの姿を見る。
???
“不屈の精神、どんな苦境に立たされても決して折れない”
“俺たちは侍(さむらい)じゃない。刀を持たない。しかし心に太刀(たち)を持っている。使うのは己の拳(こぶし)のみ”
猗窩座
“目障(めざわ)り…だ…”
義勇へと標的を変え、彼に向き直ったその時だった。
???
“狛治(はくじ)さんもうやめて”
猗窩座を止める1人の女性が現れた―――。
過去を思い出した猗窩座
猗窩座を止めたのは、人間だったころの、妻となるはずだった女性、恋雪(こゆき)だった。
人間時の名前、恋雪のことを思い出した狛治は、徐々に人間だった頃の記憶が蘇(よみがえ)った。
親父(おやじ)、恋雪さん、師範(しはん)でもある恋雪の父・慶蔵(けいぞう)さん…。
“死んだところで3人と同じ場所には行けない”
“よくも思い出させたな”
“あんな過去を”
忘却(ぼうきゃく)していた記憶を思い出したところで、彼にとっては今更(いまさら)どうしようもない事だった。
半(なか)ば自暴自棄(じぼうじき)のままに、煉獄を屠(ほふ)った「滅式(めっしき)」を構(かま)えたその時、目を覚ました炭治郎にかつて慶蔵に殴られた時のように拳(こぶし)で殴(なぐ)られる。
“生まれ変われ、少年”
弱い奴が嫌いだ。
弱い奴は、正々堂々やり合わず、
井戸に毒を入れる。
醜(みにく)い。
弱い奴は、辛抱が足りない。
すぐ自暴自棄になる。
“守る拳”で人を殺した。
そうだ、俺が殺したかったのは、
俺が殺したかったのは、
猗窩座自身が嫌っていた“弱者”とは「辛抱が足りず、師範(しはん)の大切な素流を血塗れにし、父の遺言も守れない」自分自身だったことを思い出した。
自分で自分を・・・
猗窩座は、感謝の意を込めて炭治郎に微笑(ほほえ)んだ後、煉獄の命を奪った滅式を自分自身に打ち込んだ。
しかし、鬼としての身体は猗窩座の意思に反(はん)して再生していく。
その合間、猗窩座は死んだ父と慶蔵の姿を見た。
「親父……、もう平気か?苦しくねぇか」
「大丈夫だ、狛治。ありがとうなァ……」
狛治は膝(ひざ)をつき、父に向けて謝罪(しゃざい)するように頭を下げた。
「ごめん親父、ごめん、俺やり直せなかった、駄目だった……」
「関係ねぇよ。お前がどんなふうになろうが、息子は息子。弟子は弟子。死んでも見捨てない」
「…天国には、連れて行ってやれねぇが」
項垂(うなだ)れる狛治の頭に優しく手を置いて語りかける慶蔵。
2人の言葉を聞き、涙を滲(にじ)ませながら、狛治としての自分を取り戻しつつあった猗窩座の目の前に突如(とつじょ)無惨が現れる。
強くなりたいのではなかったのか?
お前はこれで終わりなのか?猗窩座。
その言葉を聞いた瞬間、再び猗窩座の姿になる狛治。
そうだ俺は強くなる。強くなりたい。俺はまだ強くなれる。約束を守らなければ。
再生を続ける身体を起こそうとした時だった。
「狛治さん、ありがとう。もう充分です」
恋雪は再び狛治の前に現れ、猗窩座を止めた。
恋雪の姿を見たのちも無惨の声が聞こえていたが、その声はもう猗窩座に届くことはなく、子どものように恋雪に抱き着いて泣きじゃくった。
「ごめん、ごめん、守れなくてごめん!大事な時傍(そば)にいなくてごめん!約束を、何一つ守れなかった…!!許してくれ、俺を許してくれ、頼む、許してくれ…!!」
「私たちのことを思い出してくれて良かった」
「元の狛治さんに戻ってくれて良かった…」
「おかえりなさい、あなた…」
恋雪は元の狛治へと戻った事に歓喜(かんき)の涙を溢(こぼ)し、狛治を抱き留(と)めた。
猗窩座の身体は再生を果たすことなく霧散(むさん)し、やがて狛治と恋雪の魂(たましい)は共に地獄の業火(ごうか)に呑(の)まれて消え去った。
「ただいま親父、戻ったよ」
「師範、恋雪さん」
「ただいま」
⑹上弦の弐・童磨(どうま)
経緯
童磨は、信者と思われる人間達を喰らっている最中、無限城に乗り込んできた鬼殺隊のうち、[蟲柱]胡蝶しのぶと対峙(たいじ)する。
あれぇ来たの?わぁ女の子だね!
童磨がかつて[蟲柱]胡蝶しのぶの最愛の姉・胡蝶カナエの命を奪(うば)った仇(かたき)である事が明らかになった。
この羽織(はおり)に見覚えはないか
激しい憎悪(ぞうお)を向けられるも、童磨はそんな復讐(ふくしゅう)にも意に介(かい)さず「粉凍り(こなごおり)」をはじめとした血鬼術の応酬(おうしゅう)で着実にダメージに加(くわ)えていく―――。
体格に恵まれないしのぶでは童磨の頸(くび)を落とす事は叶わず、並の鬼ならば即死に至(いた)る“藤の毒”を急所の頸に撃(う)ち込まれても上弦の再生能力で分解、完封(かんぷう)してみせた。
あれぇ?毒、分解できちゃったみたいだなあ。ごめんねえ。
これが人間のすばらしさ
姉の仇を討(う)とうと努力しながらも力及(およ)ばなかったしのぶを、
俺は感動したよ!!
こんなか弱い女の子が
ここまでやれるなんて!
姉さんより才も無いのに
よく鬼狩りをやってこれたよ!
今まで死ななかったことが奇跡だ!
無駄だというのにやり抜く愚かさ、
これが人間の素晴らしさ。
と、次々に賛辞(さんじ)の皮を被った侮辱(ぶじょく)で、泣きながら徹底的に愚弄(ぐろう)し、その場に駆け付けた栗花落カナヲの目の前で両腕で止めとばかりに抱きしめて、全身の骨を折り砕(くだ)き殺害した。
しのぶの死に衝撃を受けるカナヲを、童磨はしのぶの遺体を自身の体に吸収する様を見せ付けて挑発した。
吸収してる最中に
斬りかからないでおくれよ。
これを目の当たりにしたカナヲはかつて無い程に激昂(げきこう)し、凄(すさ)まじい怒りと憎悪(ぞうお)を胸に、自分を拾(ひろ)い育ててくれた姉同然である胡蝶姉妹の仇を討つべく童磨と対峙する。
猗窩座殿、もしかして死んじゃった?
1番の友人である猗窩座が敗(やぶ)れた事を感知した童磨はわざとらしく涙を流し悲しんで見せた。
もう噓ばっかり
吐(つ)かなくていいから。
「貴方(あなた)何も感じないんでしょ?」「この世に生まれてきた人たちが当たり前に感じている、喜び、悲しみや怒り」「体が震えるような感動を、貴方は理解できないんでしょ?」と図星を指され、「貴方何のために生まれてきたの?」と、童磨自身と同じく感情を失っていたカナヲに、自分自身の隠された本心を見抜かれることとなった。
カナヲのこの容赦の無い指摘には流石の童磨もいつもの軽薄な笑みが消え失せ、氷のように凍てついた表情となる。
「……今まで、随分(ずいぶん)な数の女の子とお喋(しゃべ)りしてきたけど、君みたいな意地の悪い子、初めてだよ。何でそんな酷(ひど)いこと言うのかな?」
この娘は目が特殊なんだねぇ
カナヲの強みが「視力」である事を見切られて、目潰しや「凍て曇(いてぐもり)」などの血鬼術を矢継(やつ)ぎ早(ばや)に繰り出された。
それらを何とか凌(しの)ぐカナヲだが、童磨は異常な速度でカナヲの手にしていた日輪刀をかすめ取った。
無手(むて)となったカナヲを童磨は回避(かいひ)困難(こんなん)な血鬼術「散り蓮華(ちりれんげ)」で弄(なぶ)り殺しにしようとしたが、寸前で嘴平伊之助が天井をぶち破(や)って乱入し、カナヲを救った。
天空より出(い)でし!
伊之助様のお通りじゃあアア!!
何か見覚えがあるぞぉ、君の顔
上半身裸で獣の被り物という今までに出会ったことのないタイプの剣士である伊之助に興味を抱(いだ)いた童磨はカナヲの日輪刀と同様に伊之助の被り物を奪(うば)う。
そして、露(あらわ)になった伊之助の素顔に見覚えがあると言って語りはじめた。
君のお母さん、琴葉(ことは)のことはね、喰うつもりなかったんだよ。
心が綺麗(きれい)な人が傍(そば)にいると心地いいだろう?
伊之助の母、琴葉を、寿命が尽きるまで手元に置くだけで母子を殺すつもりはなかった。
琴葉(ことは)は、頭が鈍(にぶ)い分、
感覚が鋭(する)かったみたいで
琴葉に人を喰ってる所を見られてた事で、不本意ながら始末せざるを得(え)なくなり、崖際(がけぎわ)に追い詰められた琴葉は最後の希望を託(たく)して伊之助を崖下に投げ落とした後に、童磨に殺害されたのだった。
童磨も「生きてはいないだろう」と思い伊之助を探そうとはしなかったが、伊之助は辛(から)くも生き延(の)びていた。
そしてそれ以降、伊之助と会う今までは琴葉の事は完全に忘れていた。
俺の母親と、仲間を殺した鬼が、
目の前にいるなんてなァア!!
テメェには地獄を見せてやる!!
実母と母の温もりを思い出させてくれたしのぶの仇として怒りを燃やす伊之助だが、童磨は時間が無くなってきたとして「血鬼術・結晶ノ御子(けっしょうのみこ)」に2人の相手を任(まか)せ、その場を去ろうと―――、
扉に手ををかけた
その場を後にしようと扉に手をかけた刹那(せつな)、片目が落ちて視界が割れ、童磨の体が突如(とつじょ)崩(くず)れ始めた。
顔が・・・溶(と)けてる?
童磨に取り込まれることこそがしのぶの真の狙(ねら)いであった。
元より勝てる相手ではないと踏(ふ)んでいたしのぶは、1年かけて藤の花の毒を服用し続ける事で自らの体を毒の塊(かたまり)となり、自ら身を捧(ささ)げる事で大量の毒を盛(も)る壮絶(そうぜつ)な罠を張っていた。
私の全体重、37キロ分。
致死量(ちしりょう)のおよそ、
700倍です。
つまり、しのぶは最初から童磨に喰い殺されるつもりでこの戦いに臨(のぞ)んでいたのだった。
カナヲもその作戦を予(あらかじ)め知らされており、彼女が1対1は勝ち目が無いような相手とまともにぶつかったり、あえて挑発(ちょうはつ)するような言動で気を引くなどしていたのは、毒が効くまでの時間稼(かせ)ぎの為であった。
童磨
“骨から溶けていく…、毒か?あの子の毒、だけど毒が回っていくような感覚もなかった。再生しろ、回復しろ…。”
童磨は毒により体が溶けたことに驚(おどろ)くが、それでも冷静に解毒(げどく)の時間を稼ぐ為の大技「霧氷(むひょう)・睡蓮菩薩(すいれんぼさつ)」を放(はな)った―――。
しかし、毒のせいで技の精度が落ちており、カナヲの奥の手、極限の動体視力を獲得(かくとく)する<花の呼吸・終ノ型(ついのかた)「彼岸朱眼(ひがんしゅがん)」>により彼女の接近を許してしまう。
溶けた頸(くび)に刀を食い込ませられる童磨
カナヲ
“行け!!行け!!斬れる!!こんなグズグズの腐(くさ)った頸(くび)斬れないはずない!!”
童磨の攻撃「睡蓮菩薩(すいれんぼさつ)」により体が凍りついたカナヲは動けなくなってしまう。
“あああ腕(うで)が固まって…!!”
伊之助
ぬおおおお!!獣(けだもの)の呼吸!
思いつきの投げ裂(さ)きィィィィィ!!
機転(きてん)を利かせた伊之助が自身の日輪刀(にちりんとう)を投げつける事で、カナヲの刃を無理矢理押し込み、ついに童磨の頸(くび)を落とした―――。
頸を斬られた直後は、童磨自身より弱いはずの伊之助やカナヲ、しのぶに敗れた事が信じられず、「こんな雑魚(ざこ)に負けるなんて俺が可哀想(かわいそう)すぎる」と嘆(なげ)き、無惨や猗窩座のように頸の切断を克服しようと試みるが、肉体の崩壊(ほうかい)は止まらなかった。
“うわ――、体が崩(くず)れ始めた。駄目(だめ)なんだ、俺は。死ぬんだ、俺。”
童磨は、自らの死が止められないと悟ると、元より自他の命に執着がない彼はあっさりと自身の死を受け入れた。
“・・・あ――、やっぱり駄目だ。何も感じない。死ぬことが怖くもないし、負けたことが悔(くや)しくもない。ずうっとこうだったなぁ、俺は。”
死に行く中においても恐怖や後悔などは微塵(みじん)も湧(わ)かないことを自覚した。
己の死をまざまざと実感しながらも「結局人間の感情というものは、俺にとって他所事(よそごと)の夢幻(ゆめまぼろし)だったなあ」と、改めて認識しながら虚(むな)しく朽(く)ちていった。
最後、死の間際に現れたしのぶ
あ、やっと死にました?良かった。
・・・やあ。
しのぶちゃんだったかな?
カナエちゃん?
死の間際、意識の中に現れたのは、童磨自身が殺したはずの、しのぶであった。
凄かったね。
あの毒の威力(いりょく)。
回り切るまで全く気づかなかった。
…まぁ、そうでしょうね。
あれは珠世(たまよ)さんが協力して
作ってくださったものですから。
珠世?へぇ…あの女が。
悔(くや)しかったですけどね。
できることなら自分の作った毒で、
お前を葬(ほうむ)りたかった。
だけど私は満足ですよ。
結果万歳です。
まだ、鬼の始祖も残っていますが、
きっともう大丈夫。
仲間の誰かが、
必ずやり遂(と)げてくれる。
私はそう確信している。
首だけの状態でしのぶと再会し、仇(かたき)を討(う)つことができたことへの達成感を口にするしのぶと最期の問答を行う。
カナヲ達への想いを語る彼女の表情を見た事で、生まれて初めて自身の感情が昂(たか)ぶっている事に驚愕(きょうがく)する童磨。
・・・わぁ、
何だろう、これ。何だろう。
初めて感じた感覚に「これが恋というやつかなぁ」と興奮(こうふん)しつつ、顔を赤らめながらこんな感情が存在するのだから天国も地獄もあるのかもしれないと思い直して、「俺と一緒に地獄へ行かない?」としのぶを口説(くど)く。
それは人並みの心も愛も知らずに育った”童(わらわ)”が生まれて初めて心の底から口にする幼稚(ようち)ではあるが、この上なく純粋(じゅんすい)な恋の告白だった。
それに対して、しのぶはにっこりと微笑んで、一言だけ告げた。
とっととくたばれ糞野郎
次の瞬間、残った肉体も伊之助に踏み潰され完全に消滅、童磨は独(ひと)り地獄に堕(お)ちた。
最期の最期で彼に心が芽生えたのは救いだったのか、または悔恨(かいこん)も持たないままの勝ち逃げだったのか、そしてこの結末が彼にとって真に幸福だったのか。
それは本人にさえ分からない。
[*悔恨(かいこん)…過去の言動に関して後悔したり、反省したりすることを意味する語。]
⑺上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)
経緯
童磨が倒された直後、鳴女(なきめ)によって空間移動させられた[霞柱]時透無一郎と邂逅(かいこう)する。
[*邂逅(かいこう)…思いがけず出あうこと。偶然の出会い。めぐりあい。]
ん…?お前は…、
何やら懐(なつ)かしい…、気配だ…。
上弦の壱…!!
無一郎が、“上弦の伍”玉壺(ぎょっこ)を1人で仕留(しと)めた際の、痣(あざ)を発現させた全力の状態で挑(いど)んだにも関わらず、瞬(またた)く間(ま)に左腕を切り落とした―――。
お前は…、私が…、継国家に残して来た…、子供の…末裔(まつえい)…。つまりは…。私の子孫(しそん)だ…。
無一郎を自分の子孫だと見抜きその力を認めた黒死牟は、無一郎を鬼にするべく、奪(うば)い取った無一郎自身の日輪刀(にちりんとう)を用(もち)いて城の柱に磔(はりつけ)にし、拘束(こうそく)した―――。
不死川玄弥の銃撃
同じく黒死牟のいる空間に転送され、不意を打とうと隠れていた不死川玄弥による銃撃の奇襲(きしゅう)も、高速移動で躱(かわ)しざまに左腕を切り落とし、返す刀で右腕を、そして一瞥(いちべつ)する間に胴を両断して戦闘不能に追い込んだ。
[*一瞥(いちべつ)…ちらっと見ること。ちょっとだけ見ること。]
貴様のような鬼擬(もど)き…生かしておく理由は無い…。
玄弥の首を切断しようとした刹那(せつな)、駆(か)け付けた玄弥の兄、[風柱]不死川実弥によりそれを阻止(そし)される。
風の柱か…。
その通りだぜ。
テメェの頸(くび)をォ、
捻(ね)じ斬(き)る風だァ。
実弥との戦いでも、かつて当時の風柱と手合わせした事を懐(なつ)かしみ、実弥の稀血(まれち)による酩酊(めいてい)すらも「久しぶりのほろ酔(よ)いで愉快(ゆかい)」と評しながら余裕を保ったまま戦い、後一歩まで追い詰めるが、今度は[岩柱]悲鳴嶼行冥が現れてそれを阻止。
次々と…降って湧(わ)く…。
我(われ)ら鬼殺隊は
百世不磨(ひゃくせふま)。
鬼をこの世から
屠(ほふ)り去るまで…。
悲鳴嶼に対して痣(あざ)の実態について話すも、彼からはすでに承知(しょうち)及(およ)び、覚悟の上と一笑(いっしょう)に付(ふ)され、悲鳴嶼と実弥との戦いに突入する。
柱2人を相手にしても圧倒する程の戦闘能力を見せつけるが、2人も黒死牟の攻撃を即座に読んで対抗し、一進一退の激戦を繰り広げ、悲鳴嶼が黒死牟の刀を折る事に成功した。
しかし…血鬼術により刀を再生されてしまう。
折られた所で…
すぐに再生するのだ…。
攻撃は無意味…。
哀(あわ)れな人間よ…。
再び優位に立った黒死牟は、過去の記憶と照らし合わせて戦いを楽しむ余裕を見せていたものの、深手を負いながらも気力で喰らいつく実弥、戦いの中で“透き通る世界”を開眼するほどの成長を見せた悲鳴嶼の前に次第にその差を詰められていく―――。
そして無力化したと思っていた無一郎と玄弥の決死の行動によって動きを止められたことでその均衡(きんこう)は崩壊(ほうかい)。
[*均衡(きんこう)…二つまたはそれ以上の物事の間で、力や重さなどの釣り合いがとれていること。バランス。]
予想外の窮地(きょくち)の中で想起(そうき)したのは、今から数百年前―――
人を捨てて鬼になってから六十年近く経ったある夜に果たした、痣(あざ)の後遺症(こういしょう)で死んだと思っていた双子の弟・縁壱(よりいち)との再会。
“お労(たわ)しや、兄上”
齢(よわい)八十以上にも関わらず全盛期と変わらぬ強さで追い詰められるも、弟・縁壱は自身を仕留(しと)める寸前に寿命で事切れてしまい、勝負は縁壱の勝ち逃げという形になってしまった。
自身が人間だった頃に持ち得た全てを捨ててでも、最後まで実力で勝つことができず、その屈辱(くつじょく)から二度と負ける事なく勝ち続けるという修羅の道を誓った過去の記憶―――。
不敗への執念(しゅうねん)と憤怒(ふんど)で猛(たけ)り狂(くる)い、全身から刃と斬撃を突き出すというこれまでの剣士としての矜持(きょうじ)を捨てるかのような反撃で、玄弥・無一郎を両断するが、それをも躱(かわ)した悲鳴嶼達によって遂にその頸(くび)を刎(は)ね落とされた―――。
[*猛り狂い(たけりくるい)…興奮して、大声で叫んだり暴れたりする。]
[*矜持(きょうじ)…自身、自負、自尊といった「誇り」あるいは「プライド(pride)」の感情を意味する語。]
黒死牟も別の生き物に
それでも尚、凄まじい執念で頸(くび)を再生させて、さらに身体も大きな変化を見せた―――。
人間達の手によって追い詰められた黒死牟が、どこまでも越えに超えて成った理想。
誰よりも黒死牟自身が願い、遂に顕現(けんげん)させた誰にも勝る「真の最強」。
[*顕現(けんげん)…はっきりと姿を現すこと。はっきりとした形で現れること。]
全身に纏(まと)った刃から無数の月輪を全周囲に放ち、如何(いか)なる存在をも歯牙(しが)にかけずして、蹂躙(じゅうりん)する……その光景を、彼は信じて疑わなかった。
[*歯牙(しが)にかけない…相手にしない、全く問題にしない、意に介さない、などの意味の表現。]
[*蹂躙(じゅうりん)…権力など力がある者が強権を振るい弱い者の権利を踏みにじったり侵害したりすることを意味する表現。]
しかし、ふと目に入った実弥の日輪刀の刀身に写っていたのは──。
“何だ、この、醜(みにく)い姿は……。侍の姿か?これが……。”
異形の「侍」ではなく、醜い「化け物」の姿と成り果てた自分の姿。
止めを刺さんとなおも攻撃を仕掛ける悲鳴嶼と実弥によって再び頸(くび)を刎(は)ねられ、こんな事の為に何百年も生きてきたのかと自問をし、己は不死身の怪物ではなく日輪になりたかったとようやく知る。
“縁壱、私はただ…お前になりたかったのだ…。”
その後、黒死牟は血鬼術を使って体を再生しようとするも、柱達の猛攻に再生が追い付かず、さらなる進化に完全に至る前に消滅していった。
残った僅(わず)かな衣服の中には、かつて弟に渡し、その遺骸(いこつ)に残されていた音の鳴らない笛だけが転がっていた―――。
そして、黒死牟の魂(たましい)は無明の暗闇の中、独り燃え盛る地獄の炎にその身を焼かれながら虚(むな)しく宙を掻(か)き続け、己の強さの為に、人である事も、侍である事も捨てて自ら鬼となり、仲間も家族も子孫も切り捨ててきた男の最期には、誰も現れる事はなかった―――。
⑻<新>上弦の肆・鳴女(なきめ)
経緯
産屋敷(うぶやしき)の仕掛けた爆弾にその身を焼かれ、さらに珠世と悲鳴嶼行冥(ひめじまぎょうめい)の追撃(ついげき)で身動きが取れなくなった無惨に一斉攻撃をしようとした竈門炭治郎と柱達、及びすでに居所を把握していた我妻善逸・嘴平伊之助・栗花落カナヲ・不死川玄弥を初めとした鬼殺隊士全員を「無限城内」へと落とした。
以降は自身の血鬼術を駆使(くし)し、部屋の構造を組み替える事で鬼殺隊の隊士の行動を分断して被害を拡大させ、そして自身を攻撃する[恋柱]甘露寺蜜璃と[蛇柱]伊黒小芭内に接近されないようにしつつ、無惨が回復するまでの時間稼ぎを行っていた。
伊黒さん!上弦の肆だわ!
上弦の肆…!!
時透たちが倒したはず。
もう補充されているのか。
他の上弦が尽(ことごと)く敗死(はいし)し、無惨が覚醒(かくせい)後も、生き残った柱達を集結させないように、目の前の伊黒と甘露寺を相手にしながら城の構造変換を続けていたが、この隙(すき)に密かに彼女に接近していた愈史郎に脳を乗っ取られた事により視界を操作され、無限城の制御も奪(うば)われてしまう。
さらに伊黒や甘露寺が死んだという嘘のイメージも、自身を通じて無惨に送られてしまう。
縞(しま)の羽織の柱と、女の柱はすでに私の部下が殺したようだぞ?
「伊黒と甘露寺が死んだという誤情報」に気がついた無惨が、鳴女を介して愈史郎を取り込んで殺害し、鳴女を取り戻そうと行動を起こし、応戦するも、冨岡義勇と伊黒に邪魔され、失敗に終わった。
愈史郎の術も振り切れず、取り戻すのは無理だと判断した無惨は、鳴女に自壊(じかい)の呪いを発動させ、頭部を破裂し鳴女を消滅させた―――。
鳴女の死をもって、十二鬼月は全滅となった。
その後、制御不能に陥(おちい)った無限城は崩壊し、無惨と最終決戦は、日の出を待つ市街地へと場所を移した―――。
まとめ
今回は、【鬼滅の刃】上弦の鬼・最後。十二鬼月に選ばれた“上弦の鬼の最後”は如何に。として【鬼滅の刃】十二鬼月・“上弦の鬼の最後”についてご紹介しました。
<討伐された順番>
- 上弦の陸・堕姫(だき)/妓夫太郎(ぎゅうたろう)
- 上弦の伍・玉壺(ぎょっこ)
- 上弦の肆・半天狗(はんてんぐ)
- <新>上弦の陸・獪岳(かいがく)
- 上弦の参・猗窩座(あかざ)
- 上弦の弐・童磨(どうま)
- 上弦の壱・黒死牟(こくしぼう)
- <新>上弦の肆・鳴女(なきめ)
上弦の陸の堕姫ちゃんと鬼ぃちゃんの妓夫太郎が討伐(とうばつ)された後に、上弦の鬼たちが無限城に集められた場面で、無惨様が「上弦の月が欠けた…」とおっしゃったところが、「上弦の陸の死」を「月が欠けた」と「月」で比喩(ひゆ)した“たとえ”が、儚(はかな)くて、「夢見心地でございます」的な表現で、無惨様の唯一(ゆいいつ)好きなセリフです。
[*比喩(ひゆ)…ある物事を、類似(るいじ)または関係する他の物事を借りて表現すること。たとえ。]
違う違う違う違う…、
他にも私の名言はあるはずだが?
無惨様が、他の記事を紹介してくれた!?…怖(こわ)っ。
何が怖い、言ってみろ。
思考が読まれてる!?
今回はここまでです。
最後まで[全集中!]でお読みいただきありがとうございました!
それではまた、上弦の鬼の最後の「上弦の月が欠ける」その時まで。
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